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7(アルシーナ視点)

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 クラールの両親との会合を終えて、私はとある部屋に来ていた。
 ここは、客室であるらしい。とりあえず、今日はここに泊まらせてもらえることになったのだ。

「はあっ……」

 独りになった途端、私はベッドに寝転んでいた。
 正直、今日はとても疲れた。色々なことがあり過ぎて、もうくたくたである。
 もちろん、今日あった出来事はいいことばかりだ。いい人に出会えて、いい仕事も見つかった。私の悩みが一気に解決したといっても過言ではない。だから、こんな風にため息をつくのは本来間違っているはずだ。

「でも……なんというか……」

 しかし、私の心の中にはとても大きな跡が残っていた。
 クラールにあの岬で言われた言葉の数々が、何故か頭から離れないのだ。

『同情……確かに、そうなのかもしれません。ですが、私は何よりあなたという人間が聡い人間だと思いました。あなたのように冷静に判断できる人が、私は欲しい』

 あの時の彼の表情、彼の口調、彼の態度、その全てが気になってしまう。
 困っている時に、あのような情熱的な言葉を言われた。その事実が、私の心を掴んで離さないようだ。

『不思議とわかるのです。あなたの言葉は嘘ではないと』

 というか、そもそも、彼はどうしてあそこまで私のことを信頼できるのだろう。まだ会ったばかりの人間を、ここまで信頼することなんて、早々できることではないはずである。
 しかも、私はあんな意味のわからない話をした。それでも信頼するなんて、彼は相当の物好きなのかもしれない。

「……まあ、私も彼のことを信じてのこのことついて来たわけだし、人のことは言えないのかしら?」

 そこで、私は自分のことを思い出した。
 よく考えてみれば、異国の商人を名乗る男性にのこのこついて行くというのは、結構危険なことだったかもしれない。
 結果的には、このように大丈夫だったが、彼が悪い人だったら大変なことになっていただろう。
 そういう意味では、私と彼は似た者同士なのかもしれない。

「まあ、考えても仕方ないか……」

 色々と考えたが、私は思考を放棄することにした。
 こういう問題にいつまでも頭を悩ませていても仕方ない。もう終わったことなのだから、気にするべきではないだろう。
 そんな風に思いながら、私は部屋で過ごすのだった。
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