商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

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8(クラール視点)

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 アルシーナは、私の秘書としての仕事を開始した。
 彼女の働き振りに関しては、特に言うことはない。特筆して優れているという訳でもなければ、咎める程ひどいものでもないからだ。
 良くも悪くも、彼女の仕事振りは普通だった。それ故に、私に対する父上からの評価はそれ程良いものではなかった。
 父上からしてみれば、優れた人間を連れてきて欲しかったのだろう。普通にできるのだから、別に支障はないものの、人を見る目を審査するという観点から見れば、彼女の仕事振りは物足りないものだったのだ。

「まあ、それに関してはそちらの事情ですから」
「ええ、そうですね……」

 アルシーナは、その事実を知っても特に変化することはなかった。
 確かに、別にこれは彼女にはまったく関係ないことである。私と父上との勝手なものなのである。
 普通に仕事ができるのに貶められているのだから、もしかしたら彼女は怒っているくらいかもしれない。
 なんというか、彼女を物差しにして私を計るのは間違っているのではないだろうか。今回の件を経て、私はそのように思い始めていた。

「あの人もあなたも、少々無神経な所があるのよね」
「……そうでしょうか?」
「私から見れば、あの子は充分にやってくれているように見えるもの。それを貶めるようなあなた達二人の態度は、見ていて少し不快に思えるわ」

 そのことを母上に相談した所、そんな回答が返ってきた。
 アルシーナと母上は、良好な関係を築いている。
 母上は娘が欲しいと思っていたらしく、彼女の存在は可愛いものだったようだ。アルシーナの方も、良くしている母上のことをとても気遣った。そういう訳で、二人の間には強固な絆ができたようである。
 だからこそ、母上からしてみれば私と父上のやっていることはひどく気に入らないことなのだろう。

「まあ、あなたの場合は、あの人に認めてもらわなければ彼女を……と思っているのかもしれないけれど……」
「え? どういうことですか?」
「それを無意識でやっているというのが、我が息子ながらちょっとずるいと思ってしまうわね……」
「母上?」

 母上は、時々意味のわからないことを言ってくる。
 そういう時に質問してもいつもはぐらかされてしまうので、私としては困るばかりだ。
 とにかく、私は彼女のことを物差しのようにするのはやめようと思った。そういう観点で彼女を見るのは失礼なことだ。そう固く決意しながら、私はまた毎日を過ごすのだった。
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