商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

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9(クラール視点)

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「ふむ……」
「……どうかしたのですか? なんだか、先程から悩んでいるようですけど……」
「あ、いや……」

 ある日、私は少しだけ頭を悩ませていた。
 いや、アルシーナに見抜かれているということは、少しではないかもしれない。態度に出るくらいには、頭を悩ませているようだ。

「実は、父上から試験を出されているのですが……それをどうするかを悩んでいるのです」
「……それは、私のことですか?」
「え? あ、いや、そうではありません。別件です」

 私が頭を悩ませていたのは、父上から出された試験のことだった。
 といっても、それは人を見る目が合ったかどうかの試験ではない。その試験については、もう気にしないと決めていたため、忘れていたくらいである。
 当然のことではあるが、父上は私の一面だけ見て、その席を譲ると判断する訳ではない。様々な要素を考慮して、私に継がせてもいいかを判断するのだ。

「父上から、自分を納得させられる程の働きをして見せろと言われているのです。つまり、私の力によって、何か事業を成功させることを求められていると思うのです」
「なるほど……それくらいできなければ、跡は継がせられないということですか。まあ、当然といえば、当然なのかもしれませんね」
「ええ……当たり前のことですが、これは中々に難しいことです。だから、頭を悩ませていたという訳です」

 私の力で何かを成し遂げる。それは、中々に難しいことだ。
 今までは、あくまで父上の仕事を手伝うという形だった。そこには数々の経験を積んだ父上の助力が必ずあったのだ。それがなくなるということは、全てを自分で判断しなければならないということである。
 もちろん、これまでの経験である程度のことはわかるかもしれない。だが、そこに絶対に自信を持つことができる程、私はまだ自分自身を信用できていないのである。

「……差し出がましいかもしれませんが」
「うん?」
「私に、少し提案があります。聞いてもらえませんか?」
「え?」

 そんな私に対して、アルシーナは微笑みながらそう言ってきた。
 どうやら、彼女は何か私の悩みを解決できるようなことを知っているようだ。

「……ええ、是非とも聞きたいです。お願いできますか?」
「もちろんです」

 私の頭には、一瞬それを聞いていいのかという疑問が芽生えた。彼女にそれを聞くことは、自分の力で何かを成し遂げるということではないのではないかと思ったからだ。
 しかし、直後に私はそれが過ちであると気づいた。彼女は、私が見つけてきた人だ。その人の力を借りるということは、私の行動の結果である。父上も、そこに文句は言わないだろう。
 父上は、人を見る目が重要だと言っていた。きっと、それは今回のことのようなことも含んでいるのだろう。
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