商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

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10(クラール視点)

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 私は、アルシーナとともにとある島に来ていた。
 ここは、ケナ島。タルギス王国に属する島である。

「やっぱり、ここはいい所ですね……」
「そうですね……」

 ここにやって来たのは、アルシーナの提案だった。
 彼女が私の悩みを聞いて、この島に行くことを提案してきたのである。
 アルシーナが何の意図もなくこの島に連れてくるような人間ではないことは既に理解している。恐らく、彼女には何か意図があるのだろう。

「さて……おじ様、こんにちは」
「ああ、こんにちは……って、お嬢ちゃん!?」
「あら? そんなに驚かなくてもよいではありませんか? 私、確かにもう一度来ると言ったと記憶しているのですが」
「いや、そういうのは社交辞令というか、なんというか……この島にもう一回来る奴なんてのは、中々に珍しいものでな……」

 彼女が私を連れてきたのは、青果店だった。
 店頭には瑞々しい果物が数々並んでおり、たださえ自然豊かだと思った島の印象をさらに高めてくる。

「……そっちの兄ちゃんは、もしかしてお嬢ちゃんの彼氏か?」
「えっ!?」
「ええ、そんな所です」
「ええっ!?」
「ははっ、なるほど、それでもう一度ここに来たという訳か」

 果物を見ていると、店主とアルシーナがとんでもないことを言ってきた。
 その言葉に私は困惑してしまったが、二人は特に気にすることもなく会話を続けている。
 そんなアルシーナを見ていて、私は少し複雑な気持ちになった。なんというか、もう少しくらい恥ずかしがってくれてもいいのではないだろうか。

「さて、それじゃあ、兄ちゃん。この島の名物をご馳走しよう」
「名物?」
「ああ、こいつはこの島でしか取れない特別な果実だ。俺達はグラッカと呼んでいる。まあ、とりあえず食べてみることだな」

 そこで、店主が私の一つの果物を渡してきた。
 形はひょうたんのようで、色はリンゴのように真っ赤なその果物は、私の知らない果物である。
 店主から渡されたそれに、私は思い切ってかじりついてみた。こういう時には、度胸が肝心だ。とりあえず、食べてみてから色々と考えるとしよう。

「おおっ……これは、美味しいですね」
「そうだろう?」
「ええ」

 グラッカという果実は、非常に美味しかった。
 固い皮の中には、弾力性のある独特の感触をした中身が詰まっており、その感触と甘みが非常に合致している。
 これは、かなり美味といえるだろう。恐らく、多くの者がそう思うはずだ。

「……」
「あら? どうかしましたか?」
「いえ、あなたがどうして私をここに連れて来たのか、わかった気がします」

 果物を食べて、私はアルシーナがどうしてここに連れて来たかを理解した。
 この果物こそが、彼女が私をここに連れてきた理由だったのだ。
 こうして、私は自らの悩みを解決するための大きな足掛かりを手に入れたのだった。
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