商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

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12(アルシーナ視点)

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 私がウォングレイ夫人となって、一年が経過した。
 ウォングレイ家は、このタルギス王国で一躍有名になっている。丁度、代替わりがあった時からその名が上がり始めたことから、私の夫であるクラールは一時期かなり取り上げられることになった。
 そして、何故か私まで取り上げられることになってしまった。クラールが、記者の質問に答える際、全ては妻のおかげであると発言したことから、そのようになってしまったのである。

「私は、事実を言ったに過ぎないよ。実際の所、君の助力がなかったなら、ウォングレイ家の名前はここまで有名にならなかった」
「でも、それはあなたの手腕があったからよ。私なんて、ほんの少し助言をしただけに過ぎないわ」
「その助言こそが、私にとって何よりも大切だったということは、いつも言っているはずだよ。それがなければ、私は何も成し遂げられなかったといっても過言ではないだろうね」

 私達はこの件について、いつもこのような会話を交わしていた。
 それを記者の前でもやってしまったため、私達はいつしか王国内切ってのおしどり夫婦であるといわれるようになっていた。
 確かに、私達の仲は良好そのものである。だが、そういう風に取り上げられるのは、なんだか少しむず痒いものだ。

「まあ、問題はそこではないのだけれど……」

 しかし、この問題の重要な点は、私達がおしどり夫婦として取り上げられて恥ずかしいという点ではない。私という人間が取り上げられたことそのものに重要な意味があるのだ。
 アルシーナ・ウォングレイが一体何者なのか。世間は、そこに注目しているのである。

「王国内に、アルシーナを知る人物はいない。つまり、彼女は異国から来たのかもしれない……まあ、それは正解ね」

 私は、新聞に目を通しながら、そんなことを呟いた。
 当然のことながら、アルシーナという人間の足跡はこの国にほとんどない。違う国から来たのだから、それは当たり前のことである。
 問題は、ここからだ。私がどこの国から来たどういう人間なのか。それがここに記されているのだろうか。

「その立ち振る舞いから、アルシーナは高貴な人間なのではないかと予測できる。他国の貴族と考えられるのではないだろうか……鋭いわね……」

 新聞の文章を見て、私は驚愕していた。
 まさか、そこまで正確に当てられるとは驚きである。
 だが、考えてみれば、貴族の立ち振る舞いというものには特徴がある。そこから予測されるというのは、とても自然なことなのかもしれない。

「ばれるのも時間の問題のようね……」

 新聞を置いて、私は一枚の手紙を手に取った。
 その手紙の内容も、私を今悩ませているものである。
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