商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

文字の大きさ
14 / 23

14(アルシーナ視点)

しおりを挟む
 クラールと相談して、私達は二手に分かれることになった。
 それ程時間に余裕がある訳でもないので、手分けして動くことになったのである。
 私が訪れたのは、ルフォーリ伯爵の屋敷だ。ここにいるとある女性と話をしに来たのである。もちろん、その女生とはエムリア・ルフォーリ伯爵令嬢だ。

「それで、私に何の用なのでしょうか?」
「私がここに来たという時点で、どういう用かはわかっているはずです」
「さて、何のことでしょうか?」

 エムリアは、私の呼びかけにすぐに出てきた。少し脅した所、結構簡単に出て来てくれたのである。
 ただ、こちらの口から真相に迫ることが出るまでは、何も言うつもりがないというのが、彼女の主張のようだ。それなら、さっさと本題に入らせてもらうことにしよう。

「あなたの主張が、過ちであったと、それを証言して欲しいのです」
「……それは不可能です」
「あら? そうでしょうか?」
「どういうことですか?」
「あなたの現状を考えて、私はこう言っているのです。どちらの味方につくことが賢い選択なのか、それがわからない程、あなたは愚かなのでしょうか?」
「……」

 私の言葉に対して、エムリアは目を丸めていた。
 そこからは、恐怖といった感情が読み取れる。
 私がここに来たのは、もちろん一番手っ取り早い方法がその証言を彼女が覆すことだったからだ。
 だが、別に私の罪を覆す方法は他にいくらでもある。現状ならば、それはとても容易なことなのだ。

「あなたに協力すれば、どうなるのでしょうか?」
「さて、どうでしょうか? 少なくとも、私からあなたに何かをするということはありません」
「それだけですか?」
「あら? まだ何か?」
「お金を……いただきたいのです」
「……なるほど、そういうことでしたか」

 エムリアの発言によって、私は彼女がどうしてこんなことをしたのか理解した。
 それは、お金のためだったのだ。
 恐らく、彼女の金使いが荒いという訳ではないだろう。その苦労していそうな顔を見ればわかる。多分、父親か何かがろくでもない人間なのだろう。
 だから、私にもお金を求めてくる。それは理解できた。
 だが、それを私が受け入れるかといったら、それはまったく別の問題である。

「そういうことなら、あなたには泥船と一緒に沈んでもらうことにしましょうか」
「え?」
「ロガルサ公爵家は、財政難……一方、私はタルギス王国でも有数の商人。そのどちらに味方が多いかということは、わかりますね?」
「そ、それは……」

 命じられたとはいえ、私を貶める原因を作った彼女に金銭を払うはずはない。それが、どれだけ図々しいことであるかということを、彼女にはわかってもらわなければならない。
 ロガルサ公爵家は、現在資金難である。一方、私には潤沢な資金がある。今回の戦いで、そのどちらが有利かは明白といえるだろう。
 つまり、ここで彼女が断れば、彼女はロガルサ公爵家という泥船とともに沈んでいくことになるのだ。実質的に、私の願いは彼女にとって断れないものなのである。

「……わかりました。あなたに、協力させてもらいます」
「あら? それだけですか?」
「……申し訳ありませんでした」

 彼女は、涙を流しながら私に頭を下げてきた。
 その光景を見ても、私の心はそれ程晴れないのだった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる

歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを 一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など 無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。 では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した 軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。 満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。 「……続けてください、アネット嬢」。 婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

阿里
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~

スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。 しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。 「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」 泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。 数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。 「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」

処理中です...