商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?

木山楽斗

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20(アルシーナ視点)

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 事件のそもそもの発端は、エムリア・ルフォーリ伯爵令嬢がファルテリナ・ロガルサから暴行の被害を受けたと告発したからである。
 その張本人である彼女からの撤回は、何よりも効果的だった。あの事件が見直されるきっかけになったのである。
 彼女の撤回に続いて、他に証言していた者達からの宣言も有効的だった。人々が事件のことについて考え直すようになっていたのだ。

「そして、それらの証言に出てくるある人物の現状も、今回の事件に関しては充分に考慮に値する材料だった……」

 現在のロガルサ公爵家は、財政難に陥っている。その財政難が、誰が実権を握ってから起こったのかは明白だ。
 その人物が実権を握れた理由、その人物が実権を握った時期、どちらからもそれが私の事件と関わりがあることはすぐにわかる。二つの出来事が偶然だと考える人の方が少ないだろう。
 そういう面もあって、世論はどんどんと傾き始めた。もしかしたら、ファルテリナ・ロガルサは無実なのではないかと。

「もちろん、証言の撤回に信憑性があるのかだとか、本当に因果関係はあるのかだとか、そういう意見もあった。もっとも、それは少数派だったようだけど……」

 当然のことながら、世論は完全に傾いた訳ではない。まだ様子見という段階の人達も、大勢いる。
 ただ、実際に事件が再調査させることになるくらいには、この事件に対する疑念は深くなっていた。
 再調査といっても、今回の事件は多くの人達の証言によって裏付けられていた事件だ。その人達が意見を覆したのだから、それ程調査することもない。
 証言していた者達から話を聞いて、それを精査する。それだけのことなのだ。

「もっとも、撤回するような人達なのだから、その証言に信憑性があるかどうかは怪しい所……でも、そうなると、ファルテリナ・ロガルサのことについても信憑性がないということになる。どちらにしても、今回の事件は成立しなくなっていく」

 人の証言というものしか証拠がない今回の事件は、かなり難しい事件なのかもしれない。
 しかし、一つだけ明確なのは、ファルテリナ・ロガルサがエムリア・ルフォーリ伯爵令嬢に暴行をしたという物的証拠がないということである。
 つまり、この事件でファルテリナ・ロガルサに非があるとするのは間違い。それが、最終的に出てきた結論である。

「さて、これをあなたはどう思うかしら? ……ファルミリア?」
「くっ……」

 その事実をもってして、私はロガルサ公爵家を訪れていた。
 目の前にいるのは、私の実の妹であるファルミリア・ロガルサである。
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