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21(アルシーナ視点)
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私はクラールとともに、実の妹であるファルミリア・ロガルサと対峙していた。
彼女は、私の言葉に表情を歪めている。自らの立っている状況を理解して、かなり苦しんでいるようだ。
「ファルミリア、結局の所、あなたは見誤ったのよ。その男と一緒になるために私を陥れなければ……異国で平和で暮らしていた私を脅さなければ、もう少しいい結果が得られたのかもしれないのに」
「……お姉様は、一体何を言いに来たのですか?」
「あら?」
私の言葉に、ファルミリアは鋭い視線を浴びせてきた。
こんな状況でも、私に対する反発心は失われていないようである。
「私を貶めるために、ここまで来たのでしょうか? だとしたら、いい性格をしていますね?」
「あなたにそんなことは言われたくはないわね……」
ファルミリアは、自分のことを棚に上げていた。確か、彼女は私が冤罪で苦しんでいる時に煽りに来たはずである。
そんな彼女に、こんなことを言われると腹が立つ。だが、ここで激昂してはならない。私はあくまで、冷静でなければならないのだ。
「まあ、でも、私の目的はそんなことではないのよ。私がここに来たのは、契約のためなのよ」
「契約?」
「私に、公爵家に関する権利を譲って欲しいの」
「……なんですって?」
私の言葉に、ファルミリアは目を丸くした。まさか、こんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
「あなた達には、今後一切ロガルサ公爵家と関わらないという誓約書を書いてもらうけど、それでもあなた達の背負っている借金はなくなる。私達が、この公爵家の負債ごと買い取ってあげようといっているの。あなた達にとって、それ程悪い話ではないでしょう?」
「なっ……」
「もし、あなた達夫婦がこの条件を飲まなければ……まあ、その時はあなた達が勝手に破滅するだけね。公爵家の地位は失うけど……それでも負債がなくなるのだから、そちらの方がいいとは思わない?」
私の目的は、公爵家を手に入れることだった。
正直言って、その地位に返り咲きたいなどと私は思っていない。はっきり言って、個人的にそれ程欲しいという訳ではないのだ。
だが、世間からの目を考えた時に、それは手に入れておくべきものだと思った。不当に公爵家を追放された私が、それを取り戻す。その方が、美談になると思ったのだ。
噂というものが力を持つことを、私はよく知っている。この筋書きが、私の今後にきっと役に立ってくれるだろう。
「バルガイン? あなたはどう思っているのかしら?」
「……」
「そんな風に睨みつけられても困ってしまうわね。別に、私にとってこれはそれ程重要なことではないのよ? 手に入らないなら、それはそれでいいの」
「くそっ……」
バルガインに問いかけてみると、彼はその顔を歪めた。恐らく、私が優位になっていることが気に入らないのだろう。
だが、いくら気に入らなかったとしても状況は変わらない。彼は頷かなければ、その負債を背負うだけである。
「ファルミリア、どうするの? 選択肢は二つ。できれば、早く決めてもらえると嬉しいのだけれど」
「うっ……」
「はあ……夫婦揃いも揃って、往生際が悪いのね……クラール、行きましょう」
「……ああ、そうだね」
答えを出さない二人に、私は立ち上がってみせた。
すると、二人の表情が変わる。当然のことながら、二人が取るべき選択肢は決まっている。ロガルサ公爵家から手を引くしかないのだ。
「契約をさせてください……公爵家の全てを、お姉様に譲り渡します」
「……ええ、それなら、きちんと契約を交わしましょうか」
ファルミリアの絞り出したような言葉に、私は再び席に着いた。
これで、公爵家の地位を手に入れることができる。それ程嬉しいことでもないが、とりあえず目的は達成だ。
ただ、一つだけ思うことがあった。結局、この二人は私に対して謝罪の言葉の一つもない。きっと、この二人には私に対する罪悪感などなかったのだろう。
それを理解して、私は不思議なことに、怒りよりも悲しみを覚えるのだった。
彼女は、私の言葉に表情を歪めている。自らの立っている状況を理解して、かなり苦しんでいるようだ。
「ファルミリア、結局の所、あなたは見誤ったのよ。その男と一緒になるために私を陥れなければ……異国で平和で暮らしていた私を脅さなければ、もう少しいい結果が得られたのかもしれないのに」
「……お姉様は、一体何を言いに来たのですか?」
「あら?」
私の言葉に、ファルミリアは鋭い視線を浴びせてきた。
こんな状況でも、私に対する反発心は失われていないようである。
「私を貶めるために、ここまで来たのでしょうか? だとしたら、いい性格をしていますね?」
「あなたにそんなことは言われたくはないわね……」
ファルミリアは、自分のことを棚に上げていた。確か、彼女は私が冤罪で苦しんでいる時に煽りに来たはずである。
そんな彼女に、こんなことを言われると腹が立つ。だが、ここで激昂してはならない。私はあくまで、冷静でなければならないのだ。
「まあ、でも、私の目的はそんなことではないのよ。私がここに来たのは、契約のためなのよ」
「契約?」
「私に、公爵家に関する権利を譲って欲しいの」
「……なんですって?」
私の言葉に、ファルミリアは目を丸くした。まさか、こんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
「あなた達には、今後一切ロガルサ公爵家と関わらないという誓約書を書いてもらうけど、それでもあなた達の背負っている借金はなくなる。私達が、この公爵家の負債ごと買い取ってあげようといっているの。あなた達にとって、それ程悪い話ではないでしょう?」
「なっ……」
「もし、あなた達夫婦がこの条件を飲まなければ……まあ、その時はあなた達が勝手に破滅するだけね。公爵家の地位は失うけど……それでも負債がなくなるのだから、そちらの方がいいとは思わない?」
私の目的は、公爵家を手に入れることだった。
正直言って、その地位に返り咲きたいなどと私は思っていない。はっきり言って、個人的にそれ程欲しいという訳ではないのだ。
だが、世間からの目を考えた時に、それは手に入れておくべきものだと思った。不当に公爵家を追放された私が、それを取り戻す。その方が、美談になると思ったのだ。
噂というものが力を持つことを、私はよく知っている。この筋書きが、私の今後にきっと役に立ってくれるだろう。
「バルガイン? あなたはどう思っているのかしら?」
「……」
「そんな風に睨みつけられても困ってしまうわね。別に、私にとってこれはそれ程重要なことではないのよ? 手に入らないなら、それはそれでいいの」
「くそっ……」
バルガインに問いかけてみると、彼はその顔を歪めた。恐らく、私が優位になっていることが気に入らないのだろう。
だが、いくら気に入らなかったとしても状況は変わらない。彼は頷かなければ、その負債を背負うだけである。
「ファルミリア、どうするの? 選択肢は二つ。できれば、早く決めてもらえると嬉しいのだけれど」
「うっ……」
「はあ……夫婦揃いも揃って、往生際が悪いのね……クラール、行きましょう」
「……ああ、そうだね」
答えを出さない二人に、私は立ち上がってみせた。
すると、二人の表情が変わる。当然のことながら、二人が取るべき選択肢は決まっている。ロガルサ公爵家から手を引くしかないのだ。
「契約をさせてください……公爵家の全てを、お姉様に譲り渡します」
「……ええ、それなら、きちんと契約を交わしましょうか」
ファルミリアの絞り出したような言葉に、私は再び席に着いた。
これで、公爵家の地位を手に入れることができる。それ程嬉しいことでもないが、とりあえず目的は達成だ。
ただ、一つだけ思うことがあった。結局、この二人は私に対して謝罪の言葉の一つもない。きっと、この二人には私に対する罪悪感などなかったのだろう。
それを理解して、私は不思議なことに、怒りよりも悲しみを覚えるのだった。
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