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「事の始まりが一体いつになるのか、それは正直私にもわかっていません。根本的な話となると、もしかしたら私が生まれる前になるかもしれません」
「ラナフィリア嬢が生まれる前、ですか?」
「ええ、私の父と産みの親、つまりは本当の母との関係が悪かったことが、始まりのような気がします」

 考えた結果、私は父と母の話から始めることにした。
 根本的な話となると、そこからになる気がしたのだ。もしも、父と母の関係が良好だったなら、少なくとも父だけは私の味方であったはずである。

「お二人は、どのような関係だったのか、差し支えなければ、教えていただけますか?」
「その部分に関しては、私もそこまでわかっている訳ではありません。母は、私が生まれてからすぐに亡くなりましたから。とはいえ、父と母は愛し合っていたという訳ではないと思います。父の様子から、それはわかりました。根拠は、私の勘に過ぎないので、定かなことではありません」
「あなたがそう思ったのなら、そうなのでしょう。私は、そこに関して疑おうとは思いません」

 父と母に関して、私は詳細がわかっている訳ではない。何か確執があったのかもしれないし、何もなかったという可能性もある。
 どちらにしても、良好な関係ではなかっただろう。父と接する機会が多い訳ではないが、彼から母の話を聞いたことはない。母の娘である私への態度も考えると、やはり冷えていたことは間違いないだろう。

「逆に、今の母……つまりはレフーナの母とは良好な関係にあるようです。お互いに愛し合っているというか、なんというか……」
「ふむ……」
「その愛は、二人の間に生まれた娘であるレフーナにも向けられました。いや、レフーナへの愛は、今の母への愛以上のものがあるといえるかもしれません」

 私もレフーナも、父の娘であるということは変わらない。だが、彼の愛はレフーナにしか向けられていないため、そこには母親の違いがあると考えるべきだろう。
 今の母を愛しているから、レフーナを愛しており、私の母を愛していなかったから私を愛さない。そう考えるのが、一番自然で簡単である。

「今の母も、レフーナのことは非常に溺愛しています。もちろん、私のことは快く思っていないようです。まあ、それは前妻の娘である以上仕方ないことだとは思いますが……」

 今の母の私への態度に関しては、理解できない訳ではない。
 前妻との間にできた子供に、自分の娘と同じように愛情を注ぐことができないという彼女の心情は、自然なものである。私にとってそれは辛いことではあるが、理解できる分、父よりもましなような気がしてしまう。
 無論、私の日頃の扱いを考えるとやはり許せる訳ではない。そこに関しては、父も今の母もレフーナも同じである。
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