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 この露天風呂は直径10mはありそうな大きな石造りの湯舟の周囲を、大小さまざまな岩を配置して作られている。

 同じような大きさの露天風呂が2つあり、2つの間を竹垣で区切って片方を女湯、もう片方を男湯として使っている。

 こちらの女湯として使っている露天風呂は丸みを帯びた岩が配置されており、今男湯として使っている方はごつごつとした岩が配置されている。

 私が湯船につかっていると、だれか入ってくる気配がした。

 ここに入れるのは私とルイーザだけなので、ルイーザだ。
 私は大きな岩の陰に隠れて、ルイーザを驚かせてやろうと思いついた。

 脱衣所に私の着替えがあるので、全く驚かない可能性も高いのだけれど。

 ルイーザが湯船につかったところで、私は岩陰から飛び出し
 「ワッ!」
 と大きな声を出した。

 目が合って一瞬固まった私は、急いで湯船に肩まで浸かった。

 そこにいたのが、ルイーザではなくアレックス様だったからだ。

 見られた?
 もし見られたとしても、上だけだと信じたい。

 アレックス様はしばらくそのままでいたけれど、

 「すまない、間違えたようだ」

 と言って出ていこうとしている。

 「待ってください」

 私はとっさに引き留めた。

 だって、アレックス様と混浴できる機会など、この先一生ない。

 このお湯は乳白色に濁っているので、湯船につかっていれば体は見えない。
 恥ずかしさは、ほとんどなかった。

 それよりもアレックス様のお顔や肩のライン、胸板に上腕を見たいという欲求が勝った。

 「その、わざとじゃないんだ。ルイーザから君が湯船でのぼせたりしていないか、隣から様子をうかがってほしいと頼まれて。あいつは今ヴィンセントに呼ばれていて来られないから、それで。入口に掛かっている垂れ幕が、確かに青かったと思ったのだが。間違ったようだ。決してやましい気持ちはないから、安心してほしい」

 アレックス様は、いつになく慌てたように話されている。

 ルイーザ、グッジョブ。
 私の体調を気遣ってくれているルイーザが、またもや気を回してくれたのだ。

 「そうだったんですね。体調は大丈夫だと思うのですが、万が一のことがあるかもしれません。できれば、このまま一緒にいて頂きたいです。一緒にいて頂いた方が、もしもの時にすぐ助けて頂けますし」

 私は、この線で攻めることにした。
 アレックス様と混浴できる千載一遇のチャンスを、私が易々と逃すはずがない。

 「君がそう言うなら、そうしよう」

 アレックス様がしばらくしてからそう答えた時、私は湯船の中でガッツポーズをとった。
 お湯がパシャンと音を立てた。

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