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episode2 おかしな三角関係
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突然、嫌な視線を感じて、窓に目を向けた。
瞬間、見なければ良かったと、後悔する。
真っ暗な空間に、白い服を纏った女性が、
今にも『うらめしや』とでも言い出しそうな顔を
して、つばさを睨んでいた。
「……ひっ!!!」
長い髪を風に揺らしながら、その女性が手を伸ばす。
つばさは、恐ろしさのあまり、布団に尻餅をついた。
「どうしたの?つばさ。何見てるのよ」
青い顔をして、窓の外を凝視しているつばさに、
真理が訊く。もちろん、つばさ以外の人間には、
何も見えていない。まっ黒な窓ガラスに自分たちの
姿が写って見えるだけだ。
「あ……ううん、別に、何でもない」
上手い嘘も思いつかず、何とか笑って誤魔化そうと、
つばさがそう思った瞬間、シャーーッ、っと
音を立てて、ひとりでにカーテンが閉まった。
「うそっ、何で勝手に閉まったの!!?」
「誰かリモコンで閉めた?」
「バカね!!そんなもの、あるわけないでしょ!!」
皆が一斉に窓を見て、硬直する。
その中で一人、つばさだけは、ある人物の背中を
信じられない思いで見ていた。
------涼介だ。
ぴたりとカーテンを押さえたまま、くるりと
つばさを向いて、にかっ、と笑っている。そして、
(もう、大丈夫)と、口パクでつばさに伝えた。
それって、ポルターガイストですからっ!!!
つばさは、そう、涼介に叫びたい気持ちを堪えて、
事態を見守った。
「この部屋って、もしかしてヤバいんじゃない?」
「絶対、心霊現象だよ」
「私……先生呼んでくる!!」
「待って、私も行く!!」
優等生のより子を筆頭に、パニックを起こした
クラスメイト達が次々に部屋の出口に向かう。
彼女たちが怯えるのも、無理はない。
涼介の仕業とはいえ、紛れもなく心霊現象なのだ。
怖がらなくても、大丈夫。なんて言えない。
「あんたはどう思う?」
複雑な顔をして、部屋を出ていく皆を眺めている
つばさに、真理が問いかけた。
「うーん、何だろう。静電気……かな?」
そんなわけないだろう的な、お馬鹿な回答しか
思いつかない。一番仲のいい真理にさえ、
つばさは自分の霊感のことを話していないのだ。
真実を伝えることで、真理を怯えさせたり、
巻き込んでしまったりするのを避けたかった。
真理は全然納得していない様子で、腕を組んだ。
つばさは、真理に気付かれないように、
(ちょっと来て!)と、隣に立つ涼介に視線を送ると、
「私も皆の様子見てくるね」
といい置いて部屋を出ていった。
「どうすんのよ!!あんたのせいで、
大騒ぎになっちゃったじゃない!!」
誰もいない非常階段の踊り場で、つばさは
出来るだけ声を抑えながら、涼介に言った。
涼介はガリガリと頭を掻きながら、謝る。
「ごめん、悪かったよ。つい、他の人がいるの
忘れちゃってさ。次からは、気を付けるよ」
しょんぼりした顔で、下を向いてしまう。
「でも俺、つばさが怖い思いしないように、
守ってやりたかったんだ。だから、焦って
カーテン閉めちゃったんだよ。ごめんな、本当に」
どんどん涼介の声が小さくなっていく。
つばさは、そんな涼介の横顔を見て、ため息を
ついた。自分を守りたかったという涼介の気持ちは、
正直、嬉しい。つばさが怖い思いをしていたのは
本当だし、大ごとにはなってしまったけど、涼介の
背中を見た時、ホッとしたのだ。涼介の笑顔が、
つばさを恐怖から解放してくれたことは間違いない。
「私も。キツイ言い方して、ごめん。私のために
やってくれたんだもんね。押入れの中の悪霊を
追っ払ってくれたのも、涼介なんでしょう?」
つばさは、しゃがみ込んで下から涼介の顔を見上げた。
瞬間、見なければ良かったと、後悔する。
真っ暗な空間に、白い服を纏った女性が、
今にも『うらめしや』とでも言い出しそうな顔を
して、つばさを睨んでいた。
「……ひっ!!!」
長い髪を風に揺らしながら、その女性が手を伸ばす。
つばさは、恐ろしさのあまり、布団に尻餅をついた。
「どうしたの?つばさ。何見てるのよ」
青い顔をして、窓の外を凝視しているつばさに、
真理が訊く。もちろん、つばさ以外の人間には、
何も見えていない。まっ黒な窓ガラスに自分たちの
姿が写って見えるだけだ。
「あ……ううん、別に、何でもない」
上手い嘘も思いつかず、何とか笑って誤魔化そうと、
つばさがそう思った瞬間、シャーーッ、っと
音を立てて、ひとりでにカーテンが閉まった。
「うそっ、何で勝手に閉まったの!!?」
「誰かリモコンで閉めた?」
「バカね!!そんなもの、あるわけないでしょ!!」
皆が一斉に窓を見て、硬直する。
その中で一人、つばさだけは、ある人物の背中を
信じられない思いで見ていた。
------涼介だ。
ぴたりとカーテンを押さえたまま、くるりと
つばさを向いて、にかっ、と笑っている。そして、
(もう、大丈夫)と、口パクでつばさに伝えた。
それって、ポルターガイストですからっ!!!
つばさは、そう、涼介に叫びたい気持ちを堪えて、
事態を見守った。
「この部屋って、もしかしてヤバいんじゃない?」
「絶対、心霊現象だよ」
「私……先生呼んでくる!!」
「待って、私も行く!!」
優等生のより子を筆頭に、パニックを起こした
クラスメイト達が次々に部屋の出口に向かう。
彼女たちが怯えるのも、無理はない。
涼介の仕業とはいえ、紛れもなく心霊現象なのだ。
怖がらなくても、大丈夫。なんて言えない。
「あんたはどう思う?」
複雑な顔をして、部屋を出ていく皆を眺めている
つばさに、真理が問いかけた。
「うーん、何だろう。静電気……かな?」
そんなわけないだろう的な、お馬鹿な回答しか
思いつかない。一番仲のいい真理にさえ、
つばさは自分の霊感のことを話していないのだ。
真実を伝えることで、真理を怯えさせたり、
巻き込んでしまったりするのを避けたかった。
真理は全然納得していない様子で、腕を組んだ。
つばさは、真理に気付かれないように、
(ちょっと来て!)と、隣に立つ涼介に視線を送ると、
「私も皆の様子見てくるね」
といい置いて部屋を出ていった。
「どうすんのよ!!あんたのせいで、
大騒ぎになっちゃったじゃない!!」
誰もいない非常階段の踊り場で、つばさは
出来るだけ声を抑えながら、涼介に言った。
涼介はガリガリと頭を掻きながら、謝る。
「ごめん、悪かったよ。つい、他の人がいるの
忘れちゃってさ。次からは、気を付けるよ」
しょんぼりした顔で、下を向いてしまう。
「でも俺、つばさが怖い思いしないように、
守ってやりたかったんだ。だから、焦って
カーテン閉めちゃったんだよ。ごめんな、本当に」
どんどん涼介の声が小さくなっていく。
つばさは、そんな涼介の横顔を見て、ため息を
ついた。自分を守りたかったという涼介の気持ちは、
正直、嬉しい。つばさが怖い思いをしていたのは
本当だし、大ごとにはなってしまったけど、涼介の
背中を見た時、ホッとしたのだ。涼介の笑顔が、
つばさを恐怖から解放してくれたことは間違いない。
「私も。キツイ言い方して、ごめん。私のために
やってくれたんだもんね。押入れの中の悪霊を
追っ払ってくれたのも、涼介なんでしょう?」
つばさは、しゃがみ込んで下から涼介の顔を見上げた。
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