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episode2 おかしな三角関係
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「押入れの悪霊?いや、それは俺じゃないよ」
きょとんとした顔で、涼介が言う。つばさは、少し
考えてはっ、とした。きっと、祖母の護符だ。やはり、
あの護符はつばさを護って、塵尻になったのだ。
しゃがみ込んだまま、そう思い至ったつばさの前に、
同じように、しゃがんだ涼介が顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?つばさ。今夜は、俺が側についてて
やるから、安心して眠れよ。ってゆーか、あの
女の子たちパニック起こしてたから、部屋を
変えてもらえるかもしれないけど」
はは、と苦笑いをしながらそう言った涼介の顔を見て、
つばさも肩を竦めた。今ごろ、お化けだ怪現象だと、
大騒ぎする彼女たちと、幽霊騒ぎを公にしたくない
旅館との間で、先生達も困り果てているだろう。
そして、きっと彼女たちの言い分は、反故にされる筈だ。
幽霊が見えるという事実を信じるよりも、否定する
人間の方が圧倒的に多いのだから……。
「さて、そろそろ戻ろっかな。皆のところに行くって、
真理に言っちゃったし、もう、落ち着いただろうから」
立ち上がって非常階段のドアを開けたつばさの後に、
そうかなぁ?と首を傾げて涼介も続く。
案の定、部屋に戻ってみれば担任たちの姿はなく、
「風のせいだろう」という、無理な解釈を押し付けられた
クラスメイト達が、ぶつぶつ言いながら床について
いたところだった。
「もう寝よう。電気消すよー」
ただ一人、冷静沈着な真理がぱちりと灯りを消す。
真理とつばさは、頭を向かい合わせる形で
皆が嫌がる壁側の布団に入った。
「俺は寝てる女の子に絶対、手ぇ出したり
しないから大丈夫。安心して寝ていいぞ」
部屋に戻る途中、そう言った言葉通り、涼介は
つばさを見守るように、足元に胡坐をかいて
座っている。けれど、幽霊に見守ってもらうのも
複雑だし、だいいち、男の人に寝顔を見られている
と思うと、何だか落ち着かない。
眠れるかなぁ?そう思いながら、目を閉じた
つばさは、その2秒後に眠りに落ちていた……
どこからか、笑い声が聴こえる。
とても、とても、楽しそうな声だ。誰だろう?
広い草原の真ん中に立っていたつばさは、
辺りを見渡した。ざあ、と風が木々を揺らす。
その大きな木の下に、涼介がいた。
誰かと話している。遠巻きで顔は良く見えないが、
女の人だということは、わかる。
つばさと同じくらい、髪の短い女の人だ。
ああ、これは………きっと、夢だ。
涼介が生きていた頃の、夢。
幸せそうに笑うあの二人は、恋人なのだろう。
涼介の眼差しが、どこまでも優しい。
こんな大切な恋人を残したまま、涼介の人生は
突然、終わってしまったんだ。
何だか胸が苦しくなって、つばさは唇を噛んだ。
涼介は、だから彷徨っているのだろうか?
彼女を、幸せにできなかったことを悔やんで?
不意に、誰かが、つばさの頬に触れた。
温かくて、大きな手だ。
つばさは、目を開けて、その手の主を見上げた。
「りょう…すけ?」
「ごめん。起こしちゃったか」
「ううん。いま、何時?」
体を起こして窓の方を見る。空の色は少しずつ
白んでいるようだ。つばさは、目を擦った。
濡れている。頬には、涙が渇いた跡があった。
「もうすぐ、5時だな」
「ずっと、起きてたの?」
「ああ。幽霊に睡眠は必要ないからな」
はは、と白い歯を見せて涼介が笑う。
いつもそうだ。涼介は、いつも笑っている。
まるで、恋人にでも触れるかのように、涼介が
つばさの前髪を梳いた。その手は、さっき頬に
触れた温もりと同じだ。霊体なのに、なぜ温かく
感じるんだろう?つばさは、涼介の目を覗き込んだ。
きょとんとした顔で、涼介が言う。つばさは、少し
考えてはっ、とした。きっと、祖母の護符だ。やはり、
あの護符はつばさを護って、塵尻になったのだ。
しゃがみ込んだまま、そう思い至ったつばさの前に、
同じように、しゃがんだ涼介が顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?つばさ。今夜は、俺が側についてて
やるから、安心して眠れよ。ってゆーか、あの
女の子たちパニック起こしてたから、部屋を
変えてもらえるかもしれないけど」
はは、と苦笑いをしながらそう言った涼介の顔を見て、
つばさも肩を竦めた。今ごろ、お化けだ怪現象だと、
大騒ぎする彼女たちと、幽霊騒ぎを公にしたくない
旅館との間で、先生達も困り果てているだろう。
そして、きっと彼女たちの言い分は、反故にされる筈だ。
幽霊が見えるという事実を信じるよりも、否定する
人間の方が圧倒的に多いのだから……。
「さて、そろそろ戻ろっかな。皆のところに行くって、
真理に言っちゃったし、もう、落ち着いただろうから」
立ち上がって非常階段のドアを開けたつばさの後に、
そうかなぁ?と首を傾げて涼介も続く。
案の定、部屋に戻ってみれば担任たちの姿はなく、
「風のせいだろう」という、無理な解釈を押し付けられた
クラスメイト達が、ぶつぶつ言いながら床について
いたところだった。
「もう寝よう。電気消すよー」
ただ一人、冷静沈着な真理がぱちりと灯りを消す。
真理とつばさは、頭を向かい合わせる形で
皆が嫌がる壁側の布団に入った。
「俺は寝てる女の子に絶対、手ぇ出したり
しないから大丈夫。安心して寝ていいぞ」
部屋に戻る途中、そう言った言葉通り、涼介は
つばさを見守るように、足元に胡坐をかいて
座っている。けれど、幽霊に見守ってもらうのも
複雑だし、だいいち、男の人に寝顔を見られている
と思うと、何だか落ち着かない。
眠れるかなぁ?そう思いながら、目を閉じた
つばさは、その2秒後に眠りに落ちていた……
どこからか、笑い声が聴こえる。
とても、とても、楽しそうな声だ。誰だろう?
広い草原の真ん中に立っていたつばさは、
辺りを見渡した。ざあ、と風が木々を揺らす。
その大きな木の下に、涼介がいた。
誰かと話している。遠巻きで顔は良く見えないが、
女の人だということは、わかる。
つばさと同じくらい、髪の短い女の人だ。
ああ、これは………きっと、夢だ。
涼介が生きていた頃の、夢。
幸せそうに笑うあの二人は、恋人なのだろう。
涼介の眼差しが、どこまでも優しい。
こんな大切な恋人を残したまま、涼介の人生は
突然、終わってしまったんだ。
何だか胸が苦しくなって、つばさは唇を噛んだ。
涼介は、だから彷徨っているのだろうか?
彼女を、幸せにできなかったことを悔やんで?
不意に、誰かが、つばさの頬に触れた。
温かくて、大きな手だ。
つばさは、目を開けて、その手の主を見上げた。
「りょう…すけ?」
「ごめん。起こしちゃったか」
「ううん。いま、何時?」
体を起こして窓の方を見る。空の色は少しずつ
白んでいるようだ。つばさは、目を擦った。
濡れている。頬には、涙が渇いた跡があった。
「もうすぐ、5時だな」
「ずっと、起きてたの?」
「ああ。幽霊に睡眠は必要ないからな」
はは、と白い歯を見せて涼介が笑う。
いつもそうだ。涼介は、いつも笑っている。
まるで、恋人にでも触れるかのように、涼介が
つばさの前髪を梳いた。その手は、さっき頬に
触れた温もりと同じだ。霊体なのに、なぜ温かく
感じるんだろう?つばさは、涼介の目を覗き込んだ。
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