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episode3 転入生 神崎 嵐
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「もちろん、信じますよ。まあ、こう言っては何ですが、こういう
案件はごく稀にあるんです。被害者側が霊能力者を連れてくる
こともあるし、大きな声では言えませんが、我々警察も名のある
霊能力者に捜査協力を頼むこともある。欧米ほど積極的では
ありませんがね。ああ、これは、ここだけの話ですよ」
門田刑事が人差し指を唇に近づけて、言った。
「それじゃ、彼女……倉科さんの扱いはどうなるんですか?」
つばさは、霊能力者と警察の意外な関係に驚きながらも、
一番気になることを訊いた。
「今回の件は、こちらで上手く処理しますよ。書類上のみ示談
という形にするかもしれないし、まあ、悪いようにはしません。
あとは、起こってしまった事件を学校側がどうするか、ですがね」
門田刑事が渋い顔をして、顎を撫でる。法律による処罰は
免れても、校内で騒ぎが広がっている以上、彼女が何もなかった
ように、学校生活を送るのは難しいかもしれない。噂は学校全体に
広がっているだろうし、何より、つばさを庇って怪我をしたのは、
多くの女子が密かに想いを寄せる生徒会長、黒沢斗哉だ。
彼女だけでなく、つばさへの風当たりも強くなるに違いない。
明日からの学校生活を想像して、思わずゲンナリしてしまった
つばさに、門田刑事は懐から名刺を取り出した。
「また、こちらからも連絡するかもしれませんが、何か困った
ことがあったら、ここに電話ください。あなたのような話を
否定的に捉える人間の方が、警察内も多いですからね。
くれぐれも、私以外の刑事に迂闊に話さないように」
さらさらと、名刺の裏に携帯番号をメモしてつばさに渡す。
わかりました、と頷きながら、つばさが名刺を受け取った瞬間、
頭の中に、ふと、ある光景が浮かんで、つばさは目を見開いた。
きっとまた、この刑事さんに会う時が来る。
そんな予感に捕らわれたつばさは、日に焼けた門田刑事の
顔を見上げ、目を細めた。
「怪我、それぐらいで済んでよかったね」
翌日の昼休み。屋上で真理とお弁当を食べていたつばさは、
箸を口に咥えたまま、うん、と覇気のない返事をした。
真理の話によると、昨日のHR時に「藤守と黒沢が階段から落ちた」
という簡単な話があっただけで、担任の口からは倉科の「く」の字も
出てこなかったらしい。けれど、学校側が詳細を伏せたところで、
人の口に戸が立てられるわけもなく……
「会長の元カノが、藤守を突き落した」という噂(事実だけれども)
は水面下で校内を駆け巡り、案の定、登校してみれば学校は
針のむしろだった。
当の倉科絵里奈は、病欠、ということで学校を休んでいる。
朝一で、校長室に呼び出されたつばさと斗哉は、同じく、校長室を
訪れていた倉科絵里奈の母親に、何度も何度も頭を下げられ、
困り果ててしまったのだ。母親の口ぶりでは娘の転校を考えている
ようだったが……それが本人の意向かどうかは、さだかではない。
「何だかな。もやもやするなぁ……」
つばさは、つばさの気分と同じように、どんより曇った空を見上げて
ため息をついた。
「倉科さんのこと?」
長い髪をさらりと掻き上げて、真理がつばさの顔を覗く。
つばさは、ようやく箸を口から抜き出して言った。
案件はごく稀にあるんです。被害者側が霊能力者を連れてくる
こともあるし、大きな声では言えませんが、我々警察も名のある
霊能力者に捜査協力を頼むこともある。欧米ほど積極的では
ありませんがね。ああ、これは、ここだけの話ですよ」
門田刑事が人差し指を唇に近づけて、言った。
「それじゃ、彼女……倉科さんの扱いはどうなるんですか?」
つばさは、霊能力者と警察の意外な関係に驚きながらも、
一番気になることを訊いた。
「今回の件は、こちらで上手く処理しますよ。書類上のみ示談
という形にするかもしれないし、まあ、悪いようにはしません。
あとは、起こってしまった事件を学校側がどうするか、ですがね」
門田刑事が渋い顔をして、顎を撫でる。法律による処罰は
免れても、校内で騒ぎが広がっている以上、彼女が何もなかった
ように、学校生活を送るのは難しいかもしれない。噂は学校全体に
広がっているだろうし、何より、つばさを庇って怪我をしたのは、
多くの女子が密かに想いを寄せる生徒会長、黒沢斗哉だ。
彼女だけでなく、つばさへの風当たりも強くなるに違いない。
明日からの学校生活を想像して、思わずゲンナリしてしまった
つばさに、門田刑事は懐から名刺を取り出した。
「また、こちらからも連絡するかもしれませんが、何か困った
ことがあったら、ここに電話ください。あなたのような話を
否定的に捉える人間の方が、警察内も多いですからね。
くれぐれも、私以外の刑事に迂闊に話さないように」
さらさらと、名刺の裏に携帯番号をメモしてつばさに渡す。
わかりました、と頷きながら、つばさが名刺を受け取った瞬間、
頭の中に、ふと、ある光景が浮かんで、つばさは目を見開いた。
きっとまた、この刑事さんに会う時が来る。
そんな予感に捕らわれたつばさは、日に焼けた門田刑事の
顔を見上げ、目を細めた。
「怪我、それぐらいで済んでよかったね」
翌日の昼休み。屋上で真理とお弁当を食べていたつばさは、
箸を口に咥えたまま、うん、と覇気のない返事をした。
真理の話によると、昨日のHR時に「藤守と黒沢が階段から落ちた」
という簡単な話があっただけで、担任の口からは倉科の「く」の字も
出てこなかったらしい。けれど、学校側が詳細を伏せたところで、
人の口に戸が立てられるわけもなく……
「会長の元カノが、藤守を突き落した」という噂(事実だけれども)
は水面下で校内を駆け巡り、案の定、登校してみれば学校は
針のむしろだった。
当の倉科絵里奈は、病欠、ということで学校を休んでいる。
朝一で、校長室に呼び出されたつばさと斗哉は、同じく、校長室を
訪れていた倉科絵里奈の母親に、何度も何度も頭を下げられ、
困り果ててしまったのだ。母親の口ぶりでは娘の転校を考えている
ようだったが……それが本人の意向かどうかは、さだかではない。
「何だかな。もやもやするなぁ……」
つばさは、つばさの気分と同じように、どんより曇った空を見上げて
ため息をついた。
「倉科さんのこと?」
長い髪をさらりと掻き上げて、真理がつばさの顔を覗く。
つばさは、ようやく箸を口から抜き出して言った。
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