11 / 76
11・目を覚ましたら
しおりを挟む
***
体があたたかい。
眠りから覚めた私は、肌触りのよい毛布の中に包まれていた。
ここ、どこだろう。
いつもの嫌な香の匂いもしないし、なんだかほっとするような……ん?
目の前には惚れぼれするような顔立ちの青年がいて、私に腕を回してぐっすり眠っていた。
その光景に、濃密な前日の記憶が一気に押し寄せてくる。
そうだ、昨日は大聖堂の窓から人を鳥のように飛ばしたり、コリンナとおじいさんから夕食をごちそうになったり、婚約指輪を売って手に入れたはずの生活資金を一瞬で失ったり……。
それでカイを……じゃなくて、ディルを衝動買いしたんだった。
魂剥離が心配だったから、これ以上弱らないように寝付くまで一緒にいたはずだけれど……。
私は信じられない思いで、意識を目の前の黒髪の青年へと向ける。
前世の私は動物と、できたら猫と、一番はカイとこんな風に眠ってみたかった。
それがまさか!
動物、それも猫、なによりカイ……と同じ魂を持った人が、この野望を叶えてくれるなんて……!
幸せ過ぎて悶えていると、ディルが目を覚ます。
「あれ? いつの間にもぐりこんだんだ、お前」
声の通りも昨夜より滑らかになっている。
肌はもう、青あざのようなひどい色ではない。
表情は少し気怠そうだけど、相変わらずの美貌だ。
「おはようディル。調子はどう?」
ディルの青い瞳が、心底不思議そうに私を見つめる。
あれ?
私、そんなに変なこと言ったかな。
それと気のせいか、ディルが少し巨大化しているような……。
「調子はよくなった。それで……お前は?」
「私はぐっすり眠れたよ。ディルが寝るまでついていようと思っていたのに、私の方が寝かしつけてもらったみたい。気づけばお腹も空いているし……なにか一緒に食べようよ」
「お前が作るのか?」
「そうだけど」
あからさまに怪訝な顔をされる。
確かに前世の私はカイに手作りごはんを食べさせたくて、料理に挑戦したこともあったけれど。
出来上がったものは料理と似て非なるものだったし、生まれ変わって覚えているほどインパクトがあったとか……?
「こっ、今回は大丈夫! 私の料理の腕はともかく、大体の作業は魔術で済ませられるから、もうあんなことには……」
「お前、魔術を使えるのか?」
「そうよ。聖女の祈りと魔術って取り扱いが全然違うけど、根源は同じく魔力でつくられているの。食事を作るのは魔術も役に立つし、加工しなくていい食品も持ってきているし、もちろんお腹を壊すようなものは用意しないと約束するから。一緒に食べてね」
「なにを食べるんだ?」
「あなたを買ったとき、コリンナのお父さんがとても喜んでくれて、色々くれたの。それを使ってスープやパンにしようと思うんだけど、ディルは好き嫌いあるの?」
「人間と同じものを食べるんだな」
「? 当たり前でしょ。私をなんだと……」
ディルは何気ない様子で私の頭を撫でた。
今までの感じより、ずいぶんカジュアルな接し方のような気もするけれど……。
「!」
よく見ると、ディルの海色の瞳に猫の顔が映っている。
体があたたかい。
眠りから覚めた私は、肌触りのよい毛布の中に包まれていた。
ここ、どこだろう。
いつもの嫌な香の匂いもしないし、なんだかほっとするような……ん?
目の前には惚れぼれするような顔立ちの青年がいて、私に腕を回してぐっすり眠っていた。
その光景に、濃密な前日の記憶が一気に押し寄せてくる。
そうだ、昨日は大聖堂の窓から人を鳥のように飛ばしたり、コリンナとおじいさんから夕食をごちそうになったり、婚約指輪を売って手に入れたはずの生活資金を一瞬で失ったり……。
それでカイを……じゃなくて、ディルを衝動買いしたんだった。
魂剥離が心配だったから、これ以上弱らないように寝付くまで一緒にいたはずだけれど……。
私は信じられない思いで、意識を目の前の黒髪の青年へと向ける。
前世の私は動物と、できたら猫と、一番はカイとこんな風に眠ってみたかった。
それがまさか!
動物、それも猫、なによりカイ……と同じ魂を持った人が、この野望を叶えてくれるなんて……!
幸せ過ぎて悶えていると、ディルが目を覚ます。
「あれ? いつの間にもぐりこんだんだ、お前」
声の通りも昨夜より滑らかになっている。
肌はもう、青あざのようなひどい色ではない。
表情は少し気怠そうだけど、相変わらずの美貌だ。
「おはようディル。調子はどう?」
ディルの青い瞳が、心底不思議そうに私を見つめる。
あれ?
私、そんなに変なこと言ったかな。
それと気のせいか、ディルが少し巨大化しているような……。
「調子はよくなった。それで……お前は?」
「私はぐっすり眠れたよ。ディルが寝るまでついていようと思っていたのに、私の方が寝かしつけてもらったみたい。気づけばお腹も空いているし……なにか一緒に食べようよ」
「お前が作るのか?」
「そうだけど」
あからさまに怪訝な顔をされる。
確かに前世の私はカイに手作りごはんを食べさせたくて、料理に挑戦したこともあったけれど。
出来上がったものは料理と似て非なるものだったし、生まれ変わって覚えているほどインパクトがあったとか……?
「こっ、今回は大丈夫! 私の料理の腕はともかく、大体の作業は魔術で済ませられるから、もうあんなことには……」
「お前、魔術を使えるのか?」
「そうよ。聖女の祈りと魔術って取り扱いが全然違うけど、根源は同じく魔力でつくられているの。食事を作るのは魔術も役に立つし、加工しなくていい食品も持ってきているし、もちろんお腹を壊すようなものは用意しないと約束するから。一緒に食べてね」
「なにを食べるんだ?」
「あなたを買ったとき、コリンナのお父さんがとても喜んでくれて、色々くれたの。それを使ってスープやパンにしようと思うんだけど、ディルは好き嫌いあるの?」
「人間と同じものを食べるんだな」
「? 当たり前でしょ。私をなんだと……」
ディルは何気ない様子で私の頭を撫でた。
今までの感じより、ずいぶんカジュアルな接し方のような気もするけれど……。
「!」
よく見ると、ディルの海色の瞳に猫の顔が映っている。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
193
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる