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12・魂剥離の執着が重症すぎる

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「あ、あの……」

「どうした、白猫」

 無意識だから気づかなかった。

 寝てる間に、猫の姿になっていたらしい。

 そして昨日のこともあって、ほぼ反射的に言ってしまった。

「に、にゃーん」

「? 鳴くのが下手なのか」

 いや、そんなことはない。

「にゃーん!」

「苦手なら、さっきみたいに喋ればいいだろう」

「にゃんにゃんにゃーん!!」

「そうか、甘えていたのか」

「違にゃ!!」

「よしよし」

 首やら頬やら喉やらを撫でられる。

 ディルは前世が猫だったせいなのか、なかなか猫の気持ちをわかっていらっしゃる……。

 その心地よさに、私は思わずされるがままになってしまった。

「で、レナ」

 バレていた……。

 警備の騎士たちは騙せたのに、なかなか手ごわい。

「お前は何者なんだ?」

「そう……つまり私は、普通の喋れる猫のようね」

「普通の、喋れる、猫?」

「そうよ。人が喋るのだから、猫だってたまには喋ることもあるでしょう?」

「そうだな」

 信じられないことに、納得してくれた。

 なんだかちょっと、私の方が後ろめたくなる。

「あの、そういうことで本当にいいの?」

「いい。主のレナがそうだというのなら、従僕の俺はそれを受け入れる。お前の望みを叶えると誓っているからな」

 言葉の端々から感じる従僕としての圧倒的プロ意識、すごすぎるんだけど。

「というか、主と従僕って、そんな話は初耳……っ」

「いいだろう?」

 ディルはいつになく甘い口調で私を抱き寄せると、先ほどにも増してやさしくやさしく撫でてくれる。

 こ、これはおそらく……私に「従僕はいらない」と言わせない作戦だ。

 そうとはわかっていても、寝たばかりの私がまた眠くなってしまうくらい心地よくて、再び目がとろんと落ちてくる。

 だけどこんな手段を使ってくるということは……。

「ディル、相当の猫好きだったのね」

「違う。レナが特別なだけだ」

 外れた、自信あったのに。

「俺はお前をずっと見ていたいし、声を聞きたいし、そばにいたいし、触れていたい。離したくない。ちなみに猫は嫌いだ」

 私は唖然とする。

 猫は嫌いという言動と行動が一致していない。

 これはつまり、魂剥離の執着だとしか思えないけれど、間違いなく重症だ。

 ただこれでディルの魂が安定するのなら……。

 私にとって幸せな状況であることは間違いないけれど、彼にとっても重要な療養だと思ってじっとしている。

 でもちょっと羨ましい。

 私もこうやって猫を……カイを好きなだけだっこしたり撫でたり独占してみたかった。

「男か?」

「え」

「なんとなくわかる。レナは今、俺ではない誰かのことを考えているだろう?」

「そ、それは──」









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