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7章

60・体力がついてきたので、踊れるようにもなりました

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 弾んだ声からも、令嬢たちが心から感謝しているのが伝わる。

 エレファナも嬉しくなって、そのあとみんなで苺のタルトを食べると本当においしかった。

 そして令嬢たちから人気のスイーツ店の話や恋の相談などを聞いて盛りあがったあと、セルディにこっそり打ち明ける。

「セルディさま。実は先ほどおすましを忘れて、フロリアンさまと話し込んでしまいました。もしかすると私が不届き者ではないと知ってもらう作戦は、失敗してしまったのでしょうか」

「ああ。その心配なら全くなさそうだ」

「わかるのですか?」

「わかる。ほら、辺りをそっとうかがってごらん」

 言われてようやく、エレファナは自分とセルディに向けられる和やかな雰囲気は令嬢たちだけでなく、緊張していたはずの周囲も、いつの間にかそう変化していることに気づいた。






 *


 伸びやかな旋律が流れてくる。

 エレファナも知っている曲だ。

 セルディが目で問うので、もちろん頷く。

 ふたりは手を取り、人とぶつからないほどの間隔を取ってホールの中心に立つと、引かれ合うように自然と身を寄せた。

(そうです。散歩をして体力がついてきたので、セルディさまと色々な曲を踊るようにもなりました)

 滑らかな音色と共にステップを踏むたび、エレファナのドレスの裾が舞うように揺れる。

 意外と難しい重心の扱いや体の柔らかな身のこなしを、まるでふたりでひとつのように作り上げていきながら、セルディはふと笑みをこぼした。

「君がつい最近まで、二百年もの間痩せ細って立ち上がれなかったなんて……誰も思わないだろうな」

「はい、元気になりました。セルディさまと出会っていなかったら、私はきっと別の私でした」

「うん。俺も自分のことを、そう思っている」

「セルディさまもですか? 私はセルディさまと一緒にいて、今の私になっていった気がします。どんなことがあっても、セルディさまとなら大丈夫だって思えるのです」

 エレファナが優雅に舞い回り身を反らすと、セルディは無防備なその背をしっかりと受けとめる。

 ふたりに合わせたかのように演奏がやんだ。

 熱を帯びた静寂が満ちた次の瞬間、わあっと歓声と拍手が巻き起こる。

 見回せばあちらこちらから視線が向けられていて、ふたりはいつの間にか注目されていた。

「素晴らしい!」

「技術はもとより、信頼感が伝わってくるようでうっとりしてしまいます!」

「一幕のロマンス劇のような胸に迫る空気感……心が震えるほど感動的です!!」

 予想外の盛り上がりにエレファナもセルディも唖然としていると、鳴り止まない拍手と讃辞の合間を縫うように、一人の貴人らしき男性が優雅な拍手をしながら歩み出てくる。




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