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4章
35・妻の出した難問にどうにか正解したいのだが
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「苺?」
「あの、その……私の予想が外れてしまっただけです。で、でもセルディさま。緑はともかく、ピンク系統も好きなのですか? とても意外です」
「ああ。確かに今までは色に好みなど無かった気がする。不思議なことに君が来てから、俺の感覚は変化したようだ」
「そうでしたか。セルディさまが珊瑚色と緑色を好きなのでしたら、私の髪と目をこの色に作ってもらえたことは、本当に運が良かったです」
「不思議な一致もあるものだな」
「気が合うとはこういうことかもしれません!」
なぜか二人はそう解釈した。
「エレファナには好きな色はあるのか?」
「全部好きです!」
即答されると、セルディは少し物足りないような思いに囚われて黙った。
エレファナもそれに気づいたらしく、不思議そうに見つめ返してくる。
「もしかすると、私には嫌いな色もあったほうが良いのでしょうか?」
「そうではない。ただ……いや。君らしいな。俺の黒髪や銀の瞳のような色は冷ややか過ぎるから、特に好むようなものでもないだろう」
「? セルディさまは冷たくありません。触れると温かいですし、私はセルディさまのことを考えると胸のあたりがほかほかします。だからセルディさまの色は特別な色です。でも、セルディさまの好きな色は……」
エレファナは少し言葉を詰まらせると、なにやら思い切った様子で言った。
「あの、セルディさま! 今日の私、なにかおかしくありませんか!?」
思わぬ言葉に、セルディの眉根が寄る。
「……君がおかしい?」
「そうです!!」
(おかしい? 今日のエレファナが? いつもよりいきいきとしていたくらいで、全く気づかなかったが……)
セルディは難問に挑むような気持ちで、その人をじっと見つめた。
(おかしいかはわからないが……緊張気味に、俺の回答を待っているようだ)
エレファナに期待されるとどうにか応えたくなり、セルディもよくよく観察する。
「眠そうだな」
「は、はい。眠いです!」
「今日は疲れただろう。よく休んだほうがいい」
セルディは椅子から立ち上がると、エレファナを丁重に抱き上げて寝台に座らせた。
「……顔色も良いようだ」
「はい。ごはんをたらふく食べてます!」
「ああ。気に入った品があれば教えて欲しい。また用意するし、これから食べてみたいものがあれば言ってくれ」
「今まで食べたごはんは、全ておいしいです。だから違うメニューが出てくるたびに、好きな食べ物が増えて楽しいです!」
「そうか。俺も君と過ごすようになってから、食事を取る楽しみがわかるようになった気がする。他には……先ほどから万人から好まれる、ささやかな香りがするな」
「これはカミラさんが小瓶をいくつかプレゼントしてくださった、ヘアミストのひとつです。明日はどの香りをつけようかと迷っています!」
「そうか、だから知らない香りだったのだな。……しかし」
(俺の答えはどれも正解ではないようだ。あとは、そうだな……)
セルディはエレファナの希望通り、いつもと違うところを気づいてあげたい一心で見つめていると、普段から彼女がよく羽織っているカーディガンに目を留める。
「あの、その……私の予想が外れてしまっただけです。で、でもセルディさま。緑はともかく、ピンク系統も好きなのですか? とても意外です」
「ああ。確かに今までは色に好みなど無かった気がする。不思議なことに君が来てから、俺の感覚は変化したようだ」
「そうでしたか。セルディさまが珊瑚色と緑色を好きなのでしたら、私の髪と目をこの色に作ってもらえたことは、本当に運が良かったです」
「不思議な一致もあるものだな」
「気が合うとはこういうことかもしれません!」
なぜか二人はそう解釈した。
「エレファナには好きな色はあるのか?」
「全部好きです!」
即答されると、セルディは少し物足りないような思いに囚われて黙った。
エレファナもそれに気づいたらしく、不思議そうに見つめ返してくる。
「もしかすると、私には嫌いな色もあったほうが良いのでしょうか?」
「そうではない。ただ……いや。君らしいな。俺の黒髪や銀の瞳のような色は冷ややか過ぎるから、特に好むようなものでもないだろう」
「? セルディさまは冷たくありません。触れると温かいですし、私はセルディさまのことを考えると胸のあたりがほかほかします。だからセルディさまの色は特別な色です。でも、セルディさまの好きな色は……」
エレファナは少し言葉を詰まらせると、なにやら思い切った様子で言った。
「あの、セルディさま! 今日の私、なにかおかしくありませんか!?」
思わぬ言葉に、セルディの眉根が寄る。
「……君がおかしい?」
「そうです!!」
(おかしい? 今日のエレファナが? いつもよりいきいきとしていたくらいで、全く気づかなかったが……)
セルディは難問に挑むような気持ちで、その人をじっと見つめた。
(おかしいかはわからないが……緊張気味に、俺の回答を待っているようだ)
エレファナに期待されるとどうにか応えたくなり、セルディもよくよく観察する。
「眠そうだな」
「は、はい。眠いです!」
「今日は疲れただろう。よく休んだほうがいい」
セルディは椅子から立ち上がると、エレファナを丁重に抱き上げて寝台に座らせた。
「……顔色も良いようだ」
「はい。ごはんをたらふく食べてます!」
「ああ。気に入った品があれば教えて欲しい。また用意するし、これから食べてみたいものがあれば言ってくれ」
「今まで食べたごはんは、全ておいしいです。だから違うメニューが出てくるたびに、好きな食べ物が増えて楽しいです!」
「そうか。俺も君と過ごすようになってから、食事を取る楽しみがわかるようになった気がする。他には……先ほどから万人から好まれる、ささやかな香りがするな」
「これはカミラさんが小瓶をいくつかプレゼントしてくださった、ヘアミストのひとつです。明日はどの香りをつけようかと迷っています!」
「そうか、だから知らない香りだったのだな。……しかし」
(俺の答えはどれも正解ではないようだ。あとは、そうだな……)
セルディはエレファナの希望通り、いつもと違うところを気づいてあげたい一心で見つめていると、普段から彼女がよく羽織っているカーディガンに目を留める。
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