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24・タリカと水属性の精霊
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タリカの小屋を目指して数刻、ガロ領とラザレ領を分ける山の麓に差し掛かったあたりで、茶色いレンガの建物が見えてきた。
そのそばに大型の犬を思わせる獣が倒れていて、イリーネは足を止める。
獣の身体は水のように透き通りながら不確定に揺らいでいて、すぐに水属性の精霊の一種だとわかった。
「レヴィア……」
思わず言葉を漏らし、引き寄せられるように斜面を駆けあがる。
(違う。あの子はユヴィと一緒に看取ったから。だけどよく似ている。きっと同じ種類の精霊だ)
近づくにつれて、足裏の感触から土の湿り具合が強まっていく。
(辺りに水が散らばって……。きっと、怪我をして体から霊力が流れ出ている)
イリーネは澄んだ体の獣のそばまで来ると、ぬかるむ大地に立ちつくした。
精霊は見知らぬイリーネが近づいても反応すらせず、地に横たわっている。
その透明な身は無数の傷にまみれ、今も全身から血のように透明な液体がじわりじわりと流れ出していた。
目を背けたくなるほどの酷い状況に、イリーネの顔が蒼白になっていく。
(この子は、もう……)
イリーネは不吉な予感を払うように、すぐ頭を振った。
(落ち着かなきゃ。まだ息はあるんだから。余計なことを考えるより、今できる最善の行動をするんだ)
イリーネは自分をそう励ますと、治癒に効果のありそうな木や草を探すため辺りを見回す。
薄暗い山へ続く入り口の前に木の看板があり、そばで緩やかな小川がせせらいでいた。
(そうだ。水属性だから、とりあえずこれ以上霊力が流れ出すのを防ぐためにも、水の中へ入れたほうがいい)
イリーネは犬のような精霊の隣にそっと屈むと、できるだけ怖がらせないように気をつけて声をかける。
「大丈夫? 私、あんたを助けに来たんだ。怪我を治すために、今から身体を持ち上げるね。まだ辛いと思うけど、川まで一緒にがんばるよ」
イリーネは会ったばかりの精霊から噛みつかれることも覚悟で、その身体の下に両腕を差し入れて抱き上げようとした。
しかしその透明な身体は水が入っているようにずしりと重く、サヒーマの猛毒で弱体化したばかりのイリーネでは到底動かせそうにない。
抱えた精霊から滲む体液で、イリーネはみるみるうちにずぶ濡れになった。
(もうこんなに傷口から霊力が流れ出て……急がなきゃ。ここままだと、この子の存在が維持できなくなる)
迫りくる現実を知りつつも肝心の力が入らず、精霊の身体はなかなか持ち上がらない。
余裕のない状況に、イリーネの焦りといらだちが募った。
(どうして! どうして肝心な時に、身体が使い物にならないんだろう!)
イリーネは腕の中の現実に胸が張り裂けてしまいそなほど怯えていたが、それでも諦めきれず、必死に力を込めて何度も繰り返し立ち上がろうとする。
(弱気になっている場合じゃない。この子は私が助けるしか……)
ふと視線を感じ、イリーネは険しい表情を緩めて抱いている獣を見下ろした。
浅く呼吸する精霊の、不思議に澄んだ瞳と目が合う。
『タリカ……』
精霊の言葉に、イリーネは驚いた。
「……そっか。あんた、タリカを知っているんだね。タリカはどこなの? 生き物の世話が得意な彼女なら、あんたのこと治せるかな」
タリカの小屋を目指して数刻、ガロ領とラザレ領を分ける山の麓に差し掛かったあたりで、茶色いレンガの建物が見えてきた。
そのそばに大型の犬を思わせる獣が倒れていて、イリーネは足を止める。
獣の身体は水のように透き通りながら不確定に揺らいでいて、すぐに水属性の精霊の一種だとわかった。
「レヴィア……」
思わず言葉を漏らし、引き寄せられるように斜面を駆けあがる。
(違う。あの子はユヴィと一緒に看取ったから。だけどよく似ている。きっと同じ種類の精霊だ)
近づくにつれて、足裏の感触から土の湿り具合が強まっていく。
(辺りに水が散らばって……。きっと、怪我をして体から霊力が流れ出ている)
イリーネは澄んだ体の獣のそばまで来ると、ぬかるむ大地に立ちつくした。
精霊は見知らぬイリーネが近づいても反応すらせず、地に横たわっている。
その透明な身は無数の傷にまみれ、今も全身から血のように透明な液体がじわりじわりと流れ出していた。
目を背けたくなるほどの酷い状況に、イリーネの顔が蒼白になっていく。
(この子は、もう……)
イリーネは不吉な予感を払うように、すぐ頭を振った。
(落ち着かなきゃ。まだ息はあるんだから。余計なことを考えるより、今できる最善の行動をするんだ)
イリーネは自分をそう励ますと、治癒に効果のありそうな木や草を探すため辺りを見回す。
薄暗い山へ続く入り口の前に木の看板があり、そばで緩やかな小川がせせらいでいた。
(そうだ。水属性だから、とりあえずこれ以上霊力が流れ出すのを防ぐためにも、水の中へ入れたほうがいい)
イリーネは犬のような精霊の隣にそっと屈むと、できるだけ怖がらせないように気をつけて声をかける。
「大丈夫? 私、あんたを助けに来たんだ。怪我を治すために、今から身体を持ち上げるね。まだ辛いと思うけど、川まで一緒にがんばるよ」
イリーネは会ったばかりの精霊から噛みつかれることも覚悟で、その身体の下に両腕を差し入れて抱き上げようとした。
しかしその透明な身体は水が入っているようにずしりと重く、サヒーマの猛毒で弱体化したばかりのイリーネでは到底動かせそうにない。
抱えた精霊から滲む体液で、イリーネはみるみるうちにずぶ濡れになった。
(もうこんなに傷口から霊力が流れ出て……急がなきゃ。ここままだと、この子の存在が維持できなくなる)
迫りくる現実を知りつつも肝心の力が入らず、精霊の身体はなかなか持ち上がらない。
余裕のない状況に、イリーネの焦りといらだちが募った。
(どうして! どうして肝心な時に、身体が使い物にならないんだろう!)
イリーネは腕の中の現実に胸が張り裂けてしまいそなほど怯えていたが、それでも諦めきれず、必死に力を込めて何度も繰り返し立ち上がろうとする。
(弱気になっている場合じゃない。この子は私が助けるしか……)
ふと視線を感じ、イリーネは険しい表情を緩めて抱いている獣を見下ろした。
浅く呼吸する精霊の、不思議に澄んだ瞳と目が合う。
『タリカ……』
精霊の言葉に、イリーネは驚いた。
「……そっか。あんた、タリカを知っているんだね。タリカはどこなの? 生き物の世話が得意な彼女なら、あんたのこと治せるかな」
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