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ep3

依頼完了報告

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復路、トンガ村から王都への道は、何事もなく順調に進んだ。

Cランク相当になったキラービーたちが露払いで軍団で居るのだから、当然だった。
パーティーメンバーもアイも魔力を上手に抑えているが、キラービーたちの魔力の強さが災いして魔物はみんな逃げて行ってしまう。

「パック、キラービーしまってよ、みんな逃げ出しちゃうわよ」

パックはキラービーを『ポケット』に収納した。

アイは馬車の屋根に登るとそこに巣を張った。
魔力を抑えて獲物を狙っている。

ワイルドボアが襲って来た。
魔力の少ない人間か動物だと思ったのだろう。
アイは、一瞬だけ魔力を高め、ワイルドボアをスチールの網で捕らえて瞬殺した。

「パール姉ぇ」

「ハイハイ、マジックバッグにしまうのね」

アイは、自分用の食糧もキープしつつ、魔物を狩りながら楽しそうに王都への旅を過した。



トンガ村を出て2日目の夕方、パックたちは王都エドモンドに到着した。
休む間もなく冒険者ギルドに向かい、トンガ村依頼達成の報告をした。

「そうですか、オーガにマッドパペットも居たんですか。
よくぞご無事でお帰りくださいました。」

「それと、この子の冒険者登録をして、パーティーメンバーに登録もしたいんだけど」

「☆五芒星への新メンバーですね。では奥へどうぞ」

受付嬢は、なんのためらいもなくパックたちをギルドマスターの部屋へと案内した。

「マスター、皆さん私の能力以上の方たちなので、対応宜しくお願いします。
パックさんよかったら、後で食事しませんか」

「えっ ああ そうだね」

「わぁー 嬉しい。約束ですよ。」

受付嬢は、走って戻っていった。

「パック、あいつ食べていい」

「だめだよ」
「いいわよ」
「消して」

「わかった。わかった。
あの子との食事は無し
それでいいよね。
殺さない。食べない。」

「パック、あの娘に種付けしたいの」

「アイ 姉さんたちから教わったよね。
『種付け』とか言わないの」

「はーい。ごめんなさい。
パック、あの娘とヤリたいの」

「ブフッ 
女の子がヤリたいのとか言うのもだめだよ。
とにかく彼女とは、そんな関係以前だから。
シンディ パール 教えてやってよ」


「あの娘の一生がここで閉じるかどうかは、パック次第みたいね。」

「まだ若いのに、アイちゃんに殺されて食べられちゃうの可哀想にね」


「わかったから。
とにかく食事の誘いは断るから。
彼女を殺さないこと。
食べないこと。
いいね、アイ」

「あの受付嬢パックの種欲しがってる。
パールやシンディやぼくと同じ」

「アイ ぼくは人間だから、クモの生態とはちょっと違うんだ。
好きな人が居ても、いきなり交尾したりしない。相手と気持ちを確かめあって始めてそうなるんだ。」

「交尾ってなに。
交接ではないの。」

「交接って、クモが子孫を残す為の行為のことかな
だとしたら、意味は同じだよ。方法が違うのかもな」

「クモのオスは子種を手にある注入器に入れて持ち歩いて、メスを見つけたら、そっと近づいてメスの生殖口に流し込む。
これが交接。」

「ほとんど人混みの痴漢だよなぁそれ。
なぜそっと近づく必要があるんだ」

「メスに食われるからに決まってる。
交接する前に食われるのが半分
残りのまた半分は交接できても食われる。
交接もできて生き残るオスは少ない」

「クモのオスは子孫を残すのも命がけか。」

「メスが卵を産むのは大変。
体力も沢山必要。丈夫な体にならないといけない。だからオスだろうとなんだろうと食べれるものは全部食べる」

「なるほどなぁ
ま とにかくあの受付嬢を食べるのは無し。いいねアイ」


「あの~ 皆さん
お取り込み中のようですが、そろそろ手続きを始めてもいいでしょうか。」

ギルドマスターのマーシーがもみ手で話しかけてきた。

結果としては、たった一回の依頼達成にも関わらず、その内容からアイを含めた全員がBランクとなって再登録された。
依頼料と魔物の売却代金は明日にはカードに振り込まれるそうだ。

「お一人メンバーが増えましたがパーティー名は変更なしでよろしいでしょうか」

X" 「これなんてどうかな」

シンディが紙に書いて見せた。

「エックスかな」

「違うわエッグスよ、右肩に点が2つあるでしよ。
私たちパーティーはタマゴと関係深いから。」

「そうか いいね。」パック
「いいわ」パール
「異議なし」ミューラー
「同意します」メーリールー
「ぼくはパックと一緒」アイ

こうしてパーティー『☆五芒星』はアイを加え『X" エッグス』と名を改めた。

「ねぇみんな、これから私のパパに会いに行かない。」

「パールのパパって
    王様だよね」

「そうだけど」

「エドモンド城に住んでる」

「私の実家よ」

「なんでそんな急に」

「このままじゃ、結婚まで我慢できずに婚前交渉しそうな人が居るからよ」

メーリールーが、ミューラーの脇腹をつついている。

「結婚って、交尾のことじゃないの」

「アイ それは後で教えるから」


「あのー ここでのご用がお済みでしたら、お帰りいただきたいのですが。」

恐る恐るギルマスのマーシーが言った。

「そうね。じゃあまたねマーシーさん。手続きありがとう。」

「悪いけど、マーシーさんから受付嬢に食事の件断るって伝えてくれないかな。」

「かしこまりました。ちゃんと伝えます。」

「みんな 城へ行くわよ。」
パールは腕を突き上げた。

「オー」

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