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ep2

初ダンジョン

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ドンドンドン

「シェリーさん、起きてらっしゃいますか?
アクアさんが、お部屋にいらっしゃらないんです。」

「ん えっ なに アクアがいない!」

シェリーがガバっと起き上がるとアクアは横でまだ寝ていた。

〈驚かせないでよ。ここにいるじゃない〉

「アクアならここに居ますよ。
どうぞ、メナードさん入って来て」

「あら、アクアさん まだぐっすりオネンネですね。」

「この子のお陰で、私も完全に寝不足よ。
寝相は悪いし、布団は蹴るし。」

「シェリーさん。
今9時ですけど、今日はギルドのお仕事はお休みなんですか?」

「えっ ホント? マジ?
ヤダヤダ遅刻じゃない。」

「あの~朝食はどうします?」

「要らないわ。
ん?ちょっと待って。
やっぱりいただくわ、アクアと一緒に。
ちょっとでも1時間でも、遅刻は遅刻よね。」

シェリーは、アクアを揺り起こして、一緒に朝食をとってから、冒険者ギルドにアクアも連れて出勤した。

シェリーがいつも担当しているカウンターには、ギルド長のハックが居て、冒険者に対応していた。

「シェリー 重役出勤だな」

ギルド長の嫌味に対して

「教育係としての仕事で
深夜を含む時間外残業手当を要求します。
受付の仕事は、もうしなくてもいいですよね。
ホントこの子大変なんだから」

シェリーはアクアの頭をワシャワシャなでながら、訴えた。

「うっ 
それがな
君みたいな有能な受付係は、そう簡単に見つからないんだよ。
だから少し兼務で頼むよ。」

「遅刻扱いはしないですよね」

「ああ、もちろんだよ。
その代わり時間外手当については諦めてくれないかなぁ」

「やっぱり給与は30%増しじゃないと」

「わかった、それものむから。
シェリー、頼むよ」

それからしばらくの時間、昨日から今朝にかけて、どれだけ大変だったか、延々とシェリーの話は続いた。
シェリーが話し終わる頃には、ギルド長のハックはげっそりしていた。


「シェリー、アクア おはよー」
「おはよー」

ミルドとロキシーがやって来た。

「あっ 後はよろしく」

ギルド長は逃げるように奥の部屋へと消えて行った。


「ミルドと相談したんだけど
アクア 私たちと一緒にダンジョンに入ってみない。
シェリー いいでしょ。
彼女のことは、ちゃんと守るから」

ロキシーが誘ってきた。

「ダンジョンに入るなら、私たちみたいな経験者と入るのが安全だよ。
知らない人と組むのも危ないし、ましてソロはもっとダメだ。
トラップとかも有るから、単純に戦闘力が高くても、危険な状況に陥ることもあるんだよ」

ミルドがダンジョンの危険度の説明をした。

「アクア あなた ダンジョンに入ってみたい?」

「うん 入ってみたい。」

「ロキシー ミルド
あなたたちと一緒なら私も安心よ。
お願いしてもいいかしら」

「なに言ってるのシェリー
私たちの方から誘ったのよ。」

「そうだったわね。フフフ
だけど、2つ条件を出させて。
1つ目は、日帰りすること。ダンジョン内での野営は無しよ。
2つ目は、行くのはCランク以下のダンジョンで、3層迄にして。」

「わかったわ、無理はしないし、させないわ。安心して待ってていいわよ」

「パーティー名は、取り敢えず頭文字とってMRAでいいわよね。
3人ともカードを頂戴」

シェリーがテキパキと処理する。

「はい、それでは、アクア
いってらっしゃい。姉さんたちの言うこと聞くんだよ。
わかった。」

シェリーから冒険者カードを返してもらい、3人は冒険者ギルドを後にした。

「アクア これから『スライムダンジョン』に行こうと思うんだ。着くまで歩いて1時間位だけど、いいよね。」

「ロキシー アクアだってCクラス冒険者だぞ、問題無いだろー」

「うん、歩くの平気よ。
でも早く着きたいから、飛んで行こうよ。」

「飛んで?」「飛べるのか?」

3人の足元に『水のベール』が現れ、3人がふわっと宙に浮いた。

「凄い」「浮いてるな」
「どっちなの ダンジョン」

ロキシーが方向を指示すると『水のベール』は音もなくスルスルと動き出し、どんどん高度とスピードをあげた。

「わ わ わ もう少し低く、ゆっくりにしようよ。」

「ミルド もしかして怖いの」

「ロキシー 私が怖がっているだと。怖くはないさ。
もう少し低い方が、見慣れた景色だと思っただけだよ」

「ふーん」ロキシーは、疑いの目でミルドを見た。

わずか10分ほどのフライトで『スライムダンジョン』の入口に着いた。

ダンジョンの入口には、検問所がある。
ダンジョンのレベルにより、入場の資格も相応のものが必要となる仕組みで、一般人や低レベルの人の事故を防いでいる。

『スライムダンジョン』はレベルとしては、最低のCランクで、ソロならCランク、パーティーならDランクでも入場できる。

ダンジョンと言うので、アクアは洞窟を想像していたが、そこは湿地帯のような場所だった。
どういう仕組みなのか空からは、ちゃんと日が刺して、明るく、様々な植物が茂り、小川が流れ池もあちこちにある。
魔物ではない蝶やトンボが舞っていて、小鳥がさえずり、水鳥は子どもを引き連れて泳いでいた。

「なんか、いい所ですね。自然がいっぱいで、お弁当が楽しみ~」

「アクアは、もうお弁当のこと考えてるのか ハハハ」

「そうね、そのくらいの余裕を持つのもいいけど、魔物の出る場所だってことを忘れずにね」

木道が設置されていて、そこを歩くようになっていた。

〈なんかハイキングみたい。〉

「さあ、いっちょうやってやるか」

「ミルド なに張り切ってるのよ。今日はアクアのダンジョン初体験、デビューなのよ。
あまり出しゃばらないのよ。」

「ちっ わかってるって、ここじゃあ、あたしたちには役不足だしな」

「あ~~~ 『ちっ』って舌打ちした~~
ちゃんと『探知』使って敵を教えなさいよ」

「はいはい。了解しました。ロキシー様」

ロキシーは、アクアに
「ミルドって、こんな感じだけど『探知』と戦闘力は頼りになるのよ」と小声で言った。

〈『探知』かぁ。私にもできるかな。〉

アクアは、水の動きを感知してみた。するとすぐに様々な情報が頭に入ってきた。

〈ここに流れてる水は魔力を含んでいるのね。
魔力の集まってる場所で何かできた!きっと魔物ね〉

木道を少し歩いていると、ミルドが
「あっちにスライムの反応があるが、木道から離れてる。
そばまて行けば、向こうから襲って来るかもな。」

ミルドが指し示した方角は、その前にアクアが魔物の発生を感知した場所と一致していた。

スライムの方向へと木道を歩いているとミルドがソワソワして

「あれっ反応が消えたわ。
おかしいな。こんなことは初めてだ」

その時水色の石がアクアに向けて飛んで来た。

「危ない!」ミルドがアクアの前に飛び出す。

「ボム」ロキシーが火の玉で迎撃すると、石は砕け散った。

「いったい何だったんだ」
ミルドがそう言うと

「アクアが狙われたのは間違いないわね。
危険ね。戻りましょう。」
ロキシーも不安そうだ。

「あの~…………」

「どうしたんだアクア。私たちが居るから心配ないぞ」
「そうよ、ミルドと私が居るんだから安心してていいわよ」

「ごめんなさ~~い。ふぇ~~ん」

アクアが突然泣き出して、二人は、面くらった。

「どうしたのアクア。怖かったの」ロキシーが声をかけた。

「お姉さんは強いんだぞ~。
ほらキレてるだろ」
ミルドはボディビルダーのようなポーズをとって見せている

「そうじゃないの。
スライム倒したら、なんか石が残ったから、どんな石か見てみたくて、手元に運んでたの
そしたら………大騒ぎになって
ごめんなさい。
また、私、シェリーにおこられる。ううう」

「えっ アクア、あなたがスライムを倒したの。
あんな遠くにいたのを?」

「うん。ミルドさんの『探知』っていいなぁーと思って、やってみたら、なんとなくわかったから、スキルで倒したの。
そしたら、小さな石が残って、これが魔石かなって思って、手元に運んできたの。」

「それを私は、アクアを狙ったと勘違いしたのね」

「私はそれを撃ち落としたのね」

「うん」



「アクア あなたは、なんにも謝る必要は無いわ。あなたの実力をわかって無かった私たちがだめなのよ。
シェリーの言う通り規格外の能力者なのね」

「アクア 探知した相手をどうやって倒したんだい?
あたしの『探知』から突然反応が消えた時は、まだ見えない所だったよな」

「うーんと、見つけたスライムをギュってしたら、あの石だけになったの。それで石を拾っておこうと思っただけよ。」


「ミルド、どう思う。
探知で見つけた相手を、離れた場所から倒せるものなの?」

「あたしやロキシーには、無理だな。
でも現実の答えはイエスだ。
アクアは遠くで見えない相手でも探知に引っかかれば攻撃できるんだろうな」

「ダンジョン攻略継続しましょう。
私たち以上の能力がある事はわかったわ。
後はどこまでやるれるか、確認するのが私たちの仕事じゃない。そうでしょミルド」



♧♢♡♤♧♢♡♤

アクアのスキルが、凄いことに気づいたミルドとロキシー。
アクアが、今度は何をやらかすか、次話をご期待下さい。

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