もしも僕がいなくなったら

そらね

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第1章

カゲぼうし2

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「おっと、その前に俺の名前は十輝(とぎ)。君の名前は?」
「………篠崎慎」
「慎くんね。これからこの俺が、色々とこの世界のこととか教えるから。よろしく」
「………」
 馴れ馴れしい。
「じゃ、俺の話聞いてね」
 そして聞かされた話が、多分愼くんが先生から聞いた話と同じだと思う。僕もこの話を聞いて、正直どうでもいいとかわからないことだらけだった。意味がわからない。
 でも、月日が経つにつれて、十輝の言う事が理解するようになった。
 そのきっかけとなったのが無常高等学校に通うようになってからだった。
 詳しく話すと愼くんが損してしまうから話さないけど。
 僕がこの世界に慣れてきた頃、十輝は言った。
「俺はこの世界に来てからもう数年経つけど、一部の人たちにしか感情や表情を与えることができなかった。だから、この世界にいる人たち全員を笑顔にして欲しいんだ。慎くん一人の力では無理だ。あと何年後がすれば、希望の光を持った少年が現れる。この世界を支配している人が言っていた。慎くんはその少年とこの世界を救ってくれないか?俺も力になりたいけど、無理なことに気がついた。俺はあることを果たしたから。慎くん、頑張って」
 十輝はそれだけを言い残して、どこかへ消えてしまった。
 おそらく、表側の世界に帰ったんだろう。と僕は思った。
 なぜ帰れたのかは今だにわからないけど、あることを果たせば帰れるみたいなんだ。
 十輝がいなくなってから、僕は無常高等学校に行かなくなった。全校生徒の様子が元に戻ってしまったから。僕は手に負えなくなった。また無に戻ったから。
 僕は十輝のような人を目指さした。だけど、とてもそれは難しいことであり、不可能に近い。
 だから愼くん、君ならきっとみんなを救うことができる。そう信じてるよ。
 感情がある僕や先生は。
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