もしも僕がいなくなったら

そらね

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第2章

無常高等学校~はじまり2~

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 僕が想像していたのは、感情が無いから無口で何もわからないと思っていたが、この状況。
「その子、危ない。捨てろ」
「あいつ、汚い。ゴミ」
「消えろ」
「お前もあいつと同じか?」
 どうなっているんだ。この多人数の生徒が目の前にいて、僕は少女を抱いて一人でぽつりと立って。
 僕は言った。
「ここを通してください。この子に何の恨みがあるのか僕には知りませんが、助けることが今僕にできることなので」
 言ってやった。正論というものを。
「人間信じない」
「信じない」
 この人たち、やっぱり何かおかしい。
 何かを失っている気がする。表情はともかく、心のどこかが欠けているのではないだろうか?
 カゲの言っていたことがわかった気がするけど……
「信じなくていいです。そういう生き方を今までしてきたなら仕方がない。僕も同じ。だから君たちの言っていることも信じない。通させてもらうよ」
 自分でも驚いた。こんなこと言う予定じゃなかったのに。何を言っているんだ、僕は。
「………………」
 とりあえず僕の言葉に何を感じたかはわからないけど、学校の中に入ることができた。
 保健室に向かう。でも場所がわからない。と思っていたその時、先生らしき人がこちらに向かって歩いてきた。
 そして話しかけてきた。
「こんにちは。君は新しい子だね?」
「はい、そうですけど」
「迷惑をかけたね」
「?」
「生徒が玄関前で君を困らせていただろう?」
「あ、はい…」
「すまなかった」
「あの、どうなっているんですか?」
「君の抱いている少女が気にくわないらしくてね。その子は決して悪い人じゃない。ただ、近づいてきているんだ」
「近づいてきてる?」
「そう。感情のある人に」
「感情がある人に近づいてはいけないこと何ですか?」
「いや、良いことだ。しかし、他の子にとってそれは犯罪みたいなものなんだ」 
「犯罪……?」
「話はまた明日ゆっくりしてあげよう」
「明日ですか?」
「あぁ。今日はだめなんだ。その子は私が手当するから、君は今すぐ帰りなさい」
「あの……」
「帰りなさい」
「はい…」
 ここの学校の人たちは何を考えているんだ?
 僕は夢でも見ているんじゃないか?頭がおかしくなりそうだ。
 やっぱり僕にはわからない。
 
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