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対談開始
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夕方になり忠弥達はダーク氏との対談場所である港に赴いた。
港を指定したのはダーク氏の飛行機フライングランナーが下ろされているからだった。
そして対談時間を夕方にしたのはラジオの前に大勢の人々が集まる――仕事の就業時間であり、ラジオの置かれている飲食店に集まってくるからだ。
対談はラジオ中継されており、対談を聞こうと大勢の人々が皇国中のラジオの前に釘付けになった。
ラジオの無い農村部でもわざわざ対談を聞こうとラジオのある町に原付やバイクで駆けつける人々が大勢出現したほどの注目を集めている。
その意味では忠弥の計画は成功していた。
「ふんっ」
鼻息の荒く、対談相手であるダーク氏は自分の飛行機であるフライングランナーの前に用意された席に着いた。
様々な小細工を施していることを与党幹部からダーク氏は聞いていたが、気にはしていない。むしろ、大勢の注目を集める事は望むところであり、忠弥の化けの皮を剥がし、自分の名声を確固とする絶好の機会と考えていた。
それだけ自分のフライングライナーの業績が絶対であるという自信があったからだ。
フライングライナーの姿は、忠弥が去年の夏まで必死にデータを取るのに使った模型飛行機の姿にそっくりだった。
機体を大型化してエンジンをゴムからガソリンエンジンに切り替え、機体に椅子を付けたような姿だ。
現代の飛行機を知っている人間からすれば滑稽な姿だったが、キチンと空を飛んだ業績のある飛行機であり、ダーク氏はそのことは曲げられないと信じていた。
一方の忠弥も昴が選んでくれたスーツを着込んで届いたばかりの自分の飛行機、玉虫をバックに座っていた。
二回目の飛行の時、翼を損傷してしまったが既に修繕されて試験飛行も終えている。
今日は対談の為に義彦が手配した船に乗せられて、分解されずそのままの状態で運ばれてきた。
初めて生で見る小柄な忠弥がスーツを着た姿に討論会場に集まった観衆の中にいた皇都の若い女子は黄色い歓声を上げている。
やがて対談の時間になった。
「では時間になりましたので対談を始めたいと思います」
司会役であるラジオ放送局のアナウンサーが開会を宣言した。
アナウンサーが中央の机にすわり、観客席からみてみて右側にダーク氏、左側に忠弥が座っている。
二人とも背筋を伸ばしているが、ダーク氏は自らを鼻に掛けたような態度であり上から見下ろすような姿勢で、忠弥をコテンパンに使用という態度が見える。
それに対して忠弥は嬉しそうな笑みを浮かべてこの対談を楽しみにしているかのようだった。
「双方の主張をお聞き致しましょう。まずはダーク氏から」
勿論、アナウンサーは義彦の息が掛かっている。
討論で不利な先攻をダーク氏に押しつけるためだ。
ダーク氏も気が付いていたが、自分の功績に自信があり、気に掛けず強気に発言を始めた。
「私はこのフライングランナーによって去年の秋に有人飛行を成功させている。忠弥氏の玉虫は去年の冬であり、私より遅い。よって人類初の有人動力飛行は私がなしえた栄誉だ。彼は私の飛行を見てその実績を元に飛んだのだ。よって私が人類初の有人動力飛行を達成したのだ」
大声で宣言するダーク氏の発言は直ぐに通訳を通じて翻訳されて会場内とラジオにに放送された。
「これについて忠弥氏はどのようにお考えですか」
アナウンサーに尋ねられた忠弥は答えた。
「ダーク氏の最後の説明を除いて異議はありません。ダーク氏がその機体で空を駆け抜けたのは確かでしょう。しかし、飛行したとは言えません」
「バカを言うな!」
忠弥の発言が翻訳されるとダーク氏は立ち上がって忠弥に指を指しながら抗議した。
「この機体が空を飛んだのは間違いない! これは歴史的事実だ。この機体は間違いなく空中を飛んだのだそれとも川の上だから陸地では無いと屁理屈を言うのか!」
フライングライナーは操縦性に疑問があったため、安全を考慮して川の上を飛行している。そのことが疑問視されており合衆国の議会でも話題となっていてダーク氏の政敵が追及している点だった。
自分で言ってしまうほど意識していたダーク氏は、自分の正当性を主張するため必要以上に血が上り、大きく口を開けて思いっきり吠える。
「空中に地上も水上も関係ない! 空中は何処でも空中であり! そこを飛べたら飛行機が飛んだと言うこと! 最初に空中へ飛び立ち飛行をしたのは私だ」
「違います。フライングライナーが空中に浮かんだことは間違いないでしょう」
興奮したダーク氏をなだめるように忠弥は言い、説明を始める。
「しかし、フライングライナーが飛び立ったことを飛行と言うには少々疑問があります」
「人の偉業にケチを付けるのかね」
少し冷静になったダーク氏は見下すように忠弥を見て言う。
「いいえ、飛行の定義についてダーク氏と私には異論があるのです」
対談ではなく討論になり始めた会場で忠弥は淡々と話し始めた。
港を指定したのはダーク氏の飛行機フライングランナーが下ろされているからだった。
そして対談時間を夕方にしたのはラジオの前に大勢の人々が集まる――仕事の就業時間であり、ラジオの置かれている飲食店に集まってくるからだ。
対談はラジオ中継されており、対談を聞こうと大勢の人々が皇国中のラジオの前に釘付けになった。
ラジオの無い農村部でもわざわざ対談を聞こうとラジオのある町に原付やバイクで駆けつける人々が大勢出現したほどの注目を集めている。
その意味では忠弥の計画は成功していた。
「ふんっ」
鼻息の荒く、対談相手であるダーク氏は自分の飛行機であるフライングランナーの前に用意された席に着いた。
様々な小細工を施していることを与党幹部からダーク氏は聞いていたが、気にはしていない。むしろ、大勢の注目を集める事は望むところであり、忠弥の化けの皮を剥がし、自分の名声を確固とする絶好の機会と考えていた。
それだけ自分のフライングライナーの業績が絶対であるという自信があったからだ。
フライングライナーの姿は、忠弥が去年の夏まで必死にデータを取るのに使った模型飛行機の姿にそっくりだった。
機体を大型化してエンジンをゴムからガソリンエンジンに切り替え、機体に椅子を付けたような姿だ。
現代の飛行機を知っている人間からすれば滑稽な姿だったが、キチンと空を飛んだ業績のある飛行機であり、ダーク氏はそのことは曲げられないと信じていた。
一方の忠弥も昴が選んでくれたスーツを着込んで届いたばかりの自分の飛行機、玉虫をバックに座っていた。
二回目の飛行の時、翼を損傷してしまったが既に修繕されて試験飛行も終えている。
今日は対談の為に義彦が手配した船に乗せられて、分解されずそのままの状態で運ばれてきた。
初めて生で見る小柄な忠弥がスーツを着た姿に討論会場に集まった観衆の中にいた皇都の若い女子は黄色い歓声を上げている。
やがて対談の時間になった。
「では時間になりましたので対談を始めたいと思います」
司会役であるラジオ放送局のアナウンサーが開会を宣言した。
アナウンサーが中央の机にすわり、観客席からみてみて右側にダーク氏、左側に忠弥が座っている。
二人とも背筋を伸ばしているが、ダーク氏は自らを鼻に掛けたような態度であり上から見下ろすような姿勢で、忠弥をコテンパンに使用という態度が見える。
それに対して忠弥は嬉しそうな笑みを浮かべてこの対談を楽しみにしているかのようだった。
「双方の主張をお聞き致しましょう。まずはダーク氏から」
勿論、アナウンサーは義彦の息が掛かっている。
討論で不利な先攻をダーク氏に押しつけるためだ。
ダーク氏も気が付いていたが、自分の功績に自信があり、気に掛けず強気に発言を始めた。
「私はこのフライングランナーによって去年の秋に有人飛行を成功させている。忠弥氏の玉虫は去年の冬であり、私より遅い。よって人類初の有人動力飛行は私がなしえた栄誉だ。彼は私の飛行を見てその実績を元に飛んだのだ。よって私が人類初の有人動力飛行を達成したのだ」
大声で宣言するダーク氏の発言は直ぐに通訳を通じて翻訳されて会場内とラジオにに放送された。
「これについて忠弥氏はどのようにお考えですか」
アナウンサーに尋ねられた忠弥は答えた。
「ダーク氏の最後の説明を除いて異議はありません。ダーク氏がその機体で空を駆け抜けたのは確かでしょう。しかし、飛行したとは言えません」
「バカを言うな!」
忠弥の発言が翻訳されるとダーク氏は立ち上がって忠弥に指を指しながら抗議した。
「この機体が空を飛んだのは間違いない! これは歴史的事実だ。この機体は間違いなく空中を飛んだのだそれとも川の上だから陸地では無いと屁理屈を言うのか!」
フライングライナーは操縦性に疑問があったため、安全を考慮して川の上を飛行している。そのことが疑問視されており合衆国の議会でも話題となっていてダーク氏の政敵が追及している点だった。
自分で言ってしまうほど意識していたダーク氏は、自分の正当性を主張するため必要以上に血が上り、大きく口を開けて思いっきり吠える。
「空中に地上も水上も関係ない! 空中は何処でも空中であり! そこを飛べたら飛行機が飛んだと言うこと! 最初に空中へ飛び立ち飛行をしたのは私だ」
「違います。フライングライナーが空中に浮かんだことは間違いないでしょう」
興奮したダーク氏をなだめるように忠弥は言い、説明を始める。
「しかし、フライングライナーが飛び立ったことを飛行と言うには少々疑問があります」
「人の偉業にケチを付けるのかね」
少し冷静になったダーク氏は見下すように忠弥を見て言う。
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