姉になった隆司

廣瀬純七

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ビキニの隆司

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隆司が再び姉・美咲の体に入れ替わったその朝、彼はベッドの中で頭を抱えていた。

「またかよ…」

前日の会社での体験や姉のサッカー部での話を振り返りながら、なんとかやり過ごしてきたが、今回もまた姉の生活をこなさなければならないのかと思うと、ため息が出る。そんな中、美咲のスマホが鳴り出し、メッセージが届いた。

送信者は「亮」という名前だった。

「今日、プールに行く約束だよね? 楽しみにしてる!」

その一文を読んだ瞬間、隆司は硬直した。

「えっ…プール…? しかも、亮って…姉ちゃんの彼氏か!?」

慌ててメッセージを確認するが、間違いなく亮というのは美咲の彼氏だった。普段、姉がどんな生活をしているか深く関わらない隆司にとって、姉がプールデートの約束をしていたことなど知らなかった。

「どうしよう…でも、これ断ったら不自然だよな…」

入れ替わりの原因がわからない以上、元に戻るまで姉の代わりを務めなければならない。だが、さすがに彼氏とプールデートなんて…と、隆司は想像しただけで気まずさに顔をしかめた。

「はぁ…仕方ない。今日はおとなしく付き合うしかないか」

彼はメッセージに「うん、楽しみにしてる!」と返信し、やれやれと着替えの準備を始めた。

***

美咲のクローゼットを開け、水着を探し出す。中にはいくつかのビキニやワンピースタイプの水着が並んでいたが、その中でも特に目を引いたのが黒のシンプルなビキニだった。

「これ…着なきゃダメか?」

隆司は顔を赤らめながらも、姉の彼氏とのプールデートを考えると、なるべく姉らしく振る舞わなければならないと思い、しぶしぶ水着を手に取った。鏡の前で水着を着てみると、完璧に美咲の姿そのものが映し出されている。

「やっぱり…姉ちゃんの体、めっちゃスタイルいいな…」

彼は改めて姉の女性らしいプロポーションを見つめながら、軽くため息をついた。

「大丈夫、今日だけだから…頑張ろう…」

***

待ち合わせの場所で隆司は亮と顔を合わせた。彼は背が高く、明るい性格の好青年という印象だった。彼を前に、緊張感が高まる隆司は、できるだけ自然に振る舞おうと努めた。

「美咲、久しぶりだね! 今日はすごく楽しみにしてたんだ」

亮は爽やかな笑顔を見せながら、美咲の体に入った隆司に近づいてきた。隆司は心の中で動揺しながらも、無理やり笑顔を作った。

「う、うん、私も…」

そして、二人はプールへと向かった。更衣室で着替えた後、プールサイドに出ると、亮が待っていた。彼はすでに水着姿で、腕を振りながら隆司を呼んだ。

「おーい、こっちこっち!」

隆司はビキニを着た姉の体で、ゆっくりと亮の方に歩み寄る。自分が女性の体であることを改めて強く感じつつ、その視線の集まり方に内心戸惑いを隠せなかった。

「お前が視線を集めてるわけじゃない、これは姉ちゃんの体なんだ…」と自分に言い聞かせながら、隆司はプールサイドに立った。

亮は楽しそうに笑顔を浮かべて、水に飛び込むように誘ってきた。

「さあ、一緒に入ろう!」

「う、うん…」

隆司はためらいながらも、水に入ると、その冷たさに少しほっとした。水の中では、少しは自分が美咲だということを忘れられるかもしれない。

***

水中で亮と一緒に遊びながら、隆司は何とか自然に振る舞おうと努めた。亮は時折、隆司に向かって水をかけたり、ふざけた声をかけたりしながら、二人の時間を楽しんでいた。

「美咲、今日はなんだかいつもよりおとなしいね。疲れてる?」

亮が不思議そうに尋ねると、隆司は慌てて首を振った。

「え、いや、別にそんなことは…」

「そう? なんか、ちょっと様子が違う感じがするんだよなぁ。でも、こうやって久しぶりに一緒に過ごせるだけで嬉しいよ」

亮の言葉に、隆司は一瞬罪悪感を覚えた。彼は亮にとっての美咲ではなく、ただ姉の体を借りているだけだ。それでも、亮は無邪気に美咲との時間を楽しんでいるようだった。

隆司は心の中で「早く元に戻りたい…」と切に願いながらも、できるだけバレないように彼女らしく振る舞い続けた。

***

プールを出た後、亮はアイスクリームを買ってきて、隆司に手渡した。

「ほら、アイスでも食べて。こうやってのんびり過ごすのもたまにはいいよね」

「ありがとう…」

隆司はアイスクリームを受け取りながら、亮の優しさに気づいた。彼は本当に美咲のことを大切に思っているのだと感じた。姉にとって亮は、頼りになる存在なのだろう。

亮はその後も隆司の気遣いを見せ続け、二人でのんびりと時間を過ごした。

「今日はすごく楽しかったよ。今度は映画とか行こうね!」

そう言って、亮は優しく微笑んだ。その言葉に、隆司は少し困惑しながらも頷いた。

「うん、また…その時にね」

***

家に帰った隆司は、ぐったりとソファに倒れ込んだ。姉の体で彼氏とデートをするなんて、もう二度と経験したくないと思いながらも、亮の優しさに触れて少しだけ心が温かくなったことも否めなかった。

その夜、隆司は姉の体で経験した一日を振り返りながら、早く元に戻れるように願った。

    
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