カオルとカオリ

廣瀬純七

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薫の密かな決意

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その日、香織の体の中には、彼女の意識と共に、**薫の意識も微かに存在していた**。

だが、表には出られない。ただ、静かに奥で、見ているだけ――まるで夢を見ているような、ふわふわとした感覚だった。

彼は見ていた。

香織が“薫として”咲良を誘ったあの日曜日。

自分の姿を借りて、香織はぎこちなくも一生懸命に“男子高校生”を演じていた。声のトーン、話し方、歩き方、ちょっとした仕草に至るまで、彼女なりに「薫とはどういう人か」を考え、咲良の隣を歩いていた。

──笑った。

──照れた。

──真剣な顔をした。

そのすべてが、“自分”であって“自分でない”、不思議な存在だった。

けれど、咲良が笑った時。

彼女が映画の暗闇で小さく寄りかかった時。

香織の“薫”が咲良をエスコートするたびに、薫の心の奥で、何かが熱く、温かく、こみ上げてきた。

(……ありがとう、香織)

彼は言葉にならない感情で、心の中でそっとつぶやいた。

(俺が気づけなかったことを、君は代わりに感じてくれてる気がする)

香織と咲良の会話を聞くたびに、自分がどれだけ二人に支えられていたかを思い知らされた。

それは翌日の放課後も同じだった。

香織が咲良とベンチに腰掛けて、昨日のデートの後日談を熱っぽく語る姿。

咲良が優しく笑って、ふたりで新しい「物語」の続きを語り合う声。

(なんて、幸せそうなんだろう)

それは、外から見たら、親しい女の子同士の他愛ない会話にすぎなかったかもしれない。

でも薫にはわかった。

これは、**誰にも真似できない、唯一無二の絆**だと。

(俺も、もう少し強くならないとな)

香織が演じてくれた“自分”を通して、薫は“自分自身”のあり方を見つめ直していた。

優しくて、真っ直ぐで、どこか不器用で、でも大切な人のために全力になれる“薫”という存在。

香織がその姿を、心を、見事に演じてくれたからこそ、彼はようやく自分自身を少しだけ好きになれた気がした。

そして――

(次は、俺の番だな)

微かに、だけど確かに、彼の意識は少しだけ“前に出る”力を取り戻していた。

香織と咲良が見上げる空の下で、薫は静かに決意を固めていた。

**この物語は、まだ終わらない。
3人で紡ぐ、新しい一歩が始まるのだから――。**

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