転校性

学校にて

体が再び入れ替わった悠斗と真奈は、学校での生活をそれぞれの体で送らざるを得なかった。教室に戻ると、周りのクラスメイトがいつも通り話しかけてくるが、二人はお互いのキャラクターを演じることに戸惑いを隠せなかった。

### 悠斗（真奈の体）の戸惑い

悠斗は真奈の体で、女子グループの中にいることに緊張していた。普段なら、自分の男子友達とバカな話をして笑っている時間だが、今日は全く違う環境に放り込まれていた。真奈の友達である美咲（みさき）や彩（あや）が、彼女に話しかけてくる。

「真奈、昨日のドラマ見た？」美咲が楽しそうに話しかけてきた。

悠斗は一瞬、何のことか理解できずに黙ってしまったが、とにかく真奈らしく振る舞わなければと思い、無理やり微笑んで答えた。

「あ、うん、見た…かな？」

だが、詳しい内容を聞かれると全く話についていけず、焦る悠斗。話が進むうちに、彼は少しずつ黙り込み、ただ頷くだけになってしまった。真奈の友達たちは少し不思議そうに彼を見つめたが、特に突っ込むことはなかった。

「真奈、今日ちょっと変じゃない？」彩が小声で美咲に囁くのを、悠斗はなんとか聞こえないふりをした。

休み時間が終わる頃、悠斗はようやく解放され、ほっと一息ついた。しかし、次の問題が迫っていた。

「トイレ、どうしよう…」

男子トイレに行くべきか、女子トイレに行くべきかで大いに悩んだ。女子トイレに入るのは、体は真奈でも精神的にハードルが高すぎる。しかし男子トイレに行ったら大問題だ。結局、休み時間が終わるまでトイレに行くのを諦めた。

### 真奈（悠斗の体）の困惑

一方、真奈も悠斗の体で男子の世界に入り込むことに戸惑っていた。悠斗の男子友達であるケンジやタクミが、いつもの調子で話しかけてくる。

「おい悠斗、今日の部活終わったらゲームやろうぜ。新しいソフト買ったんだよ！」

「マジか、やるやる！」と真奈は悠斗の調子で答えようとしたが、内心では「ゲームなんて全然わからない…」と不安だった。しかし、友達の期待に応えなければと、なんとか軽く返事を続けていた。

「ところで悠斗、お前最近ちょっと様子が変じゃね？なんかおとなしいっていうか…」

タクミが不思議そうに聞いてきた。真奈は慌てて、悠斗らしい振る舞いをしようと声を上げた。

「え、そうか？全然普通だろ！」

だが、その「普通」の言い方が少しぎこちなく、タクミとケンジは顔を見合わせた。

「なんかお前、無理してないか？」

「いやいや、全然無理なんかしてない！」と真奈は必死に答えたが、明らかに空気が変だった。

さらに問題はトイレだった。休み時間中、男子友達がトイレに誘ってきた。

「おい、行こうぜ」

真奈は一瞬、心臓が止まりそうになった。「男子トイレに入るの！？」という強烈な違和感が彼女を襲ったが、断るわけにもいかず、渋々ついていくことに。

男子トイレに入ると、あたりは男子たちが無造作に用を足している光景が広がり、真奈は顔が真っ赤になった。「どうしてこんなところで堂々と…！」という衝撃に耐えながら、なんとか振る舞おうとしたが、体がすくんでしまった。

「悠斗、何してんだよ。早くしろよ」とケンジがからかうように言った。

「いや、ちょっと今…いいや、後で…」

結局、真奈は男子トイレを出てしまい、再び廊下で頭を抱えた。

### 二人の遭遇

その後、休み時間が終わり、廊下で偶然にも二人は出会った。お互いの体での日常に戸惑いを隠せないまま、顔を見合わせる。

「お前、どうだった？」悠斗（真奈の体）が先に口を開く。

「最悪だった…男子トイレなんて、もう二度と行きたくない」と真奈（悠斗の体）が真剣な顔で答えた。

「おい、俺も女子トイレには絶対行けないぞ。どうするんだよこれ…」悠斗は困惑の表情を浮かべていた。

「早く元に戻りたい。でも、どうやって…」真奈が溜息をついた。

二人はお互いに何も言わず、ただ学校の一日をなんとか乗り切るしかないという現実を受け入れつつ、次の授業へと向かった。入れ替わったまま過ごす一日はまだ続くが、二人にとっては、まるで終わらない悪夢のようだった。