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内診台、それは女神の椅子か拷問器具か
しおりを挟む尿検査と体重測定をなんとかクリアし、血圧も「まぁギリ平常値っすね」と看護師さんに言われ、ついに来た――**内診**という関門が。
「あの、次は内診ですので、カーテンの向こうで下着を脱いで、ガウンに着替えてお待ちくださいね~」
「う、うす……あ、いえ、はい……(女の声、女の声……)」
俺(美奈)は、ふらふらと指示された部屋に向かう。後ろでは、美奈(健一)が「大丈夫!?無理しないで!っていうか絶対ムリじゃない!?」と口パクしてくる。
心の中では「だよなああああ!!!」と叫びつつも、もう逃げられない。なぜならここは病院。聖域。演技ではなく、完全な**偽装**が求められる場所。
***
カーテンの向こう。
そこには一脚の……台。
これが……噂の「内診台」……!!
椅子なのか、ベッドなのか、乗り物なのかもわからん。手術室にあるやつより、なぜか怖い。
しかも足を置くステップみたいなのがある。え、脚広げる感じ?ほんとに?そんなに!?人として!?!?
看護師さんが優しく言う。
「それでは、ゆっくり乗ってくださいね~。脚はこの位置で。はい、力抜いてください~」
無理だろがァァァァ!!!
全神経がビンビンに逆立ってる中、俺の足は無情にも自動で**ウィーン**と開いていく。
「うわああああああ!!!(心の中で)」
その瞬間――悟った。
「……これを、美奈は毎回やってたのか……」
羞恥とか不安とか、全部丸出しになる椅子に、何度も座ってたのか。俺だったら初回で逃げ出してるわ。
「はーい、ちょっとひんやりしますよ~。すぐ終わりますからね~」
先生の声がやさしいのが逆に辛い。こっちは内心フルパニック。股の向こう側にいる先生が、たぶん一番冷静。
「子宮口の状態は良好ですね~、赤ちゃんも元気ですよ~。では、お疲れさまでした!」
ピロリロリン、レベルアップ音が聞こえた気がした。
***
内診を終えて待合室に戻ると、美奈(健一)がすっ飛んできた。
「だ、大丈夫だった!?どうだった!?精神削られてない!?」
「……人間って、すごいな……って思った……」
「え、なにその目の光……一皮むけてない?」
「いやむけたどころか、もう3Dスキャンされた気分だよ……」
そのあと健診内容の説明を受けながら、俺はぼんやりと考えていた。
こんなこと、何回もやって、笑って過ごしてる美奈って、めちゃくちゃ強いじゃん……。
一方で、健一(奈美)は「マジで俺の身体に戻るまでに何回内診あるの!?っていうか戻れんのこれ!?」と動揺しまくっていた。
***
こうして俺たちは、"妊婦ってすごい"という事実に心の底から震えながら、次なる難関「母親教室」へと向かうのだった――。
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