魔法の本

廣瀬純七

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不意のミス

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「タケル、今日は放課後に部活あるから、それまで問題起こさないでよ!」  
ジュン(タケルの体)は、厳しい口調で念を押した。  

「わかってるって。でも、この体で学校生活送るの、まだ慣れないんだよな…。」  
タケル(ジュンの体)はため息をつきながら、教室のドアを開けた。  

休み時間に廊下を歩いていると、ふとトイレに行きたくなった。慣れないジュンの体で過ごす中、少しでも自然に振る舞おうと努力しているタケルだったが、このとき完全にぼんやりしていた。  

廊下の突き当たり、目の前に「男子トイレ」の文字が見える。  

「あ、トイレだ。助かった。」  
いつもの感覚で扉を開け、中へ入るタケル。  

***

### 男子トイレの違和感  

中に入ると、並んだ小便器が視界に入った。タケルは何の疑問も持たず、空いている一つの前に立とうとした――その瞬間、全身が硬直した。  

「え、待て待て待て!」  

自分が履いているスカートを見下ろし、ようやく現実を思い出した。  

「俺、今ジュンの体じゃん!」  

慌てて振り返ると、何人かの男子生徒がタケルを怪訝そうに見ている。  

「え、ジュンじゃね?なんで男子トイレに?」  

「うわ、間違えた!」  
タケルは顔を真っ赤にしてその場を飛び出した。  

***

### 女子トイレへの挑戦  

男子トイレから出ると、タケルは心臓がバクバクしているのを感じた。  

「落ち着け…次は間違えないぞ。」  
そうつぶやいて、今度は「女子トイレ」の文字を確認してから中へ入った。  

しかし、女子トイレに入るのも初めての経験だったため、緊張で手が震えていた。  

「なんか、空気違うな…。綺麗だし、匂いもいい感じ?」  
内装の明るさや香りに驚きつつ、空いている個室に入り鍵をかけた。  

「ふう、これで安心だ。」  

タケルは無事に用を足し、手を洗いながら鏡を見た。そこに映るのはジュンの顔だが、その表情は完全にタケルそのものだった。  

「俺、絶対バレてるよな…。次は気をつけないと。」  

***

### ジュンへの報告  

教室に戻ると、ジュン(タケルの体)が腕を組んで待っていた。  

「タケル、また何かやらかしたでしょ?」  
勘の鋭いジュンは、タケルの顔を見るだけで事態を察したようだった。  

「いや、その…間違えて男子トイレ入っちゃってさ。」  
タケルは気まずそうに言い訳する。  

「はあっ!?何やってるのよ!」  

「だって、普段の癖で…!」  
タケルが弁解しようとすると、ジュンは大きなため息をついた。  

「いい?これからは女子トイレを使うんだから、絶対間違えないでよね。次やったら許さないから。」  

「わかったよ…。でも、女子トイレの方が綺麗で良いなって思った。」  
タケルの軽口に、ジュンは呆れながらも少し笑みを浮かべた。  

「本当に手がかかるわね、タケルは。」  

こうしてタケルは、ジュンの体での生活にまた一つ教訓を得ることとなった。  
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