5 / 19
不意のミス
しおりを挟む「タケル、今日は放課後に部活あるから、それまで問題起こさないでよ!」
ジュン(タケルの体)は、厳しい口調で念を押した。
「わかってるって。でも、この体で学校生活送るの、まだ慣れないんだよな…。」
タケル(ジュンの体)はため息をつきながら、教室のドアを開けた。
休み時間に廊下を歩いていると、ふとトイレに行きたくなった。慣れないジュンの体で過ごす中、少しでも自然に振る舞おうと努力しているタケルだったが、このとき完全にぼんやりしていた。
廊下の突き当たり、目の前に「男子トイレ」の文字が見える。
「あ、トイレだ。助かった。」
いつもの感覚で扉を開け、中へ入るタケル。
***
### 男子トイレの違和感
中に入ると、並んだ小便器が視界に入った。タケルは何の疑問も持たず、空いている一つの前に立とうとした――その瞬間、全身が硬直した。
「え、待て待て待て!」
自分が履いているスカートを見下ろし、ようやく現実を思い出した。
「俺、今ジュンの体じゃん!」
慌てて振り返ると、何人かの男子生徒がタケルを怪訝そうに見ている。
「え、ジュンじゃね?なんで男子トイレに?」
「うわ、間違えた!」
タケルは顔を真っ赤にしてその場を飛び出した。
***
### 女子トイレへの挑戦
男子トイレから出ると、タケルは心臓がバクバクしているのを感じた。
「落ち着け…次は間違えないぞ。」
そうつぶやいて、今度は「女子トイレ」の文字を確認してから中へ入った。
しかし、女子トイレに入るのも初めての経験だったため、緊張で手が震えていた。
「なんか、空気違うな…。綺麗だし、匂いもいい感じ?」
内装の明るさや香りに驚きつつ、空いている個室に入り鍵をかけた。
「ふう、これで安心だ。」
タケルは無事に用を足し、手を洗いながら鏡を見た。そこに映るのはジュンの顔だが、その表情は完全にタケルそのものだった。
「俺、絶対バレてるよな…。次は気をつけないと。」
***
### ジュンへの報告
教室に戻ると、ジュン(タケルの体)が腕を組んで待っていた。
「タケル、また何かやらかしたでしょ?」
勘の鋭いジュンは、タケルの顔を見るだけで事態を察したようだった。
「いや、その…間違えて男子トイレ入っちゃってさ。」
タケルは気まずそうに言い訳する。
「はあっ!?何やってるのよ!」
「だって、普段の癖で…!」
タケルが弁解しようとすると、ジュンは大きなため息をついた。
「いい?これからは女子トイレを使うんだから、絶対間違えないでよね。次やったら許さないから。」
「わかったよ…。でも、女子トイレの方が綺麗で良いなって思った。」
タケルの軽口に、ジュンは呆れながらも少し笑みを浮かべた。
「本当に手がかかるわね、タケルは。」
こうしてタケルは、ジュンの体での生活にまた一つ教訓を得ることとなった。
10
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる