魔法の本

廣瀬純七

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美咲と健一の「役作り」

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翌日の昼休み、ジュン(タケルの体)とタケル(ジュンの体)は美咲(健一の体)と健一(美咲の体)と話す機会を持った。屋上のベンチで四人が揃い、不思議な空気が漂っている。  

ジュンは、美咲(中身は健一)の動きをじっと観察していた。  
「ねえ…美咲、というか健一?なんか、すごく…自然じゃない?」  

美咲(健一)は肩をすくめ、優雅な笑顔を浮かべて言った。  
「ありがとう。頑張って美咲らしく振る舞ってるつもりなんだ。」  

その言葉にタケルは首を傾げる。  
「え、頑張ってるってどういうことだ?まるで俳優みたいじゃん。」  

すると今度は健一(中身は美咲)が声を上げた。  
「だって、この体になってから元の健一みたいに行動しないと周りに不自然だと思われるでしょ?」  

「でもさ、そこまで徹底しなくても…。なんか、すごくリアルというか。」  
ジュンが疑問を口にする。  

美咲(健一)は得意げに微笑んだ。  
「まあね。観察力の勝利ってところかな。」  

***

### 完全になりきる二人  

「じゃあ、具体的にどうやってるの?」  
タケルが興味津々に尋ねると、健一(美咲)が胸を張って答えた。  

「たとえば、健一だった頃の自分がどんな話し方をしていたか思い出して、それを真似してるの。ほら、『俺』って言うでしょ?」  

「あと、美咲の体での仕草も研究したの。髪の触り方とか、笑い方とかね。」  
美咲(健一)が補足する。  

ジュンは驚いた顔で言った。  
「そんなに細かくやってるの!? それ、本当に大変じゃない?」  

「まあね。でも、これくらいやらないとバレちゃうから。」  
健一(美咲)が少し誇らしげに言う。  

タケルは思わず笑った。  
「いや、そこまでやるなんてすごいわ…。俺なんか全然ジュンらしく振る舞えてないのに。」  

ジュンも苦笑いしながら同意した。  
「私もタケルらしくするのは無理だった。自分じゃ到底気づけない癖とか、知らないところが多すぎて。」  

***

### ちょっとしたデモンストレーション  

「じゃあ、私たちがどれだけなりきってるか、ちょっと見せてあげようか?」  
美咲(健一)が目を輝かせた。  

「おお、見せてくれ!」  
タケルは面白がって身を乗り出す。  

美咲(健一)は急に低めの声で、健一の話し方に切り替えた。  
「おい、タケル。お前、また宿題サボっただろ。」  

タケルは思わず目を丸くした。  
「うわ、本当に健一っぽい!」  

次に健一(美咲)が美咲らしい可愛らしい仕草で笑いながら言った。  
「ねえ、タケルくん。今日の放課後、ちょっと付き合ってくれない?」  

「お前ら、マジで演技力ヤバすぎ!」  
ジュンが爆笑する一方で、タケルは感心するばかりだった。  

***

### 自分たちの立場を見直す  

ジュンとタケルは、入れ替わったまま適当にごまかしていた自分たちと、完璧になりきっていた美咲と健一を比べて、少し恥ずかしくなった。  

「私たちも、もうちょっと頑張ったほうがいいかもね。」  
ジュンが呟くと、タケルは頭を掻きながら言った。  
「まあ、無理しない程度にな。」  

美咲(健一)は笑顔で言った。  
「もし困ったら、私たちがコツを教えてあげるから。」  

健一(美咲)も頷く。  
「うん。仲間なんだから、お互い助け合おう。」  

四人は不思議な絆を感じながら、これからの試練に向けて少し前向きな気持ちを抱いたのだった。  
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