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またもや美紀の世界へ
しおりを挟む朝、目が覚めると、俺はまた知らない天井を見上げていた。
(……またかよ……)
起き上がると、長い髪が肩にかかる感覚があった。
見慣れたはずの自分の手は、昨日までのものとは明らかに違う。
(ってことは、また"美紀"になってるのか……)
鏡の前に立つと、そこには昨日も見た"田中美紀"の顔が映っていた。
どうやら、今度は「双子の兄がいる世界」ではなく、"美紀"が一人っ子の世界のようだ。
(……こうなると、もう驚きもしないな)
俺は深くため息をつきながら、制服に着替え、朝食を済ませて家を出た。
この世界の"美紀"として過ごさなければならないことは、もう理解している。
でも、今日の登校中、思いがけないことが起こった。
学校へ向かう途中、見覚えのある顔がこちらに向かって駆け寄ってきた。
「美紀……じゃないよね?」
俺は驚いて立ち止まった。
(えっ……?)
目の前にいるのは、新川結衣だった。
だが、彼女は"美紀"ではなく、俺のことを"健太"として見ているようだった。
「……結衣?」
「やっぱり健太君だ!?」
結衣は驚いたような顔をしながら、少し興奮気味に言った。
「えっ、なんで……?」
「昨日、美紀から"時々パラレルワールドの健太君と体が入れ替わる"って聞いたんだよね!」
俺は一瞬、言葉を失った。
(美紀が……?)
つまり、昨日のこの世界にいた"美紀"は、俺じゃなくて"本物の美紀"だったってことか?
(じゃあ……美紀は、自分が俺と入れ替わることを知っている……?)
俺は混乱しながらも、結衣を見つめた。
「美紀は……そんなことを言ってたのか?」
「うん。昨日、美紀が"実は最近、不思議なことが起きてて、時々パラレルワールドの健太君と体が入れ替わるの"って言ってたの!」
「マジか……」
まさか、美紀自身もこの現象を認識していたとは……。
結衣は俺の腕を軽く叩きながら、笑顔で言った。
「ねえ、これってすごく面白いよね! ってことは、昨日の美紀は本物の美紀で、今日は健太君がこっちに来ちゃったんだ?」
俺は深いため息をついた。
「……どうやら、そうみたいだな」
結衣は嬉しそうに笑いながら、俺の手を引いた。
「じゃあ、今日は健太君としての"美紀"をしっかり観察させてもらうね!」
「お、おい、そんなに面白がるなよ……」
(でも、少なくともこの世界の結衣には、もう誤魔化さなくてもいいのかもしれないな)
俺は苦笑しながら、結衣と一緒に学校へ向かった。
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