魔女の復讐は容赦なし?~みなさま覚悟なさいませ?~

狭山ひびき

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霧男の目的

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 メリーエルが消えた――

 突然あたりを覆った濃い霧が晴れたかと思えばすぐそばにいたはずのメリーエルの姿がなくなったことに、ユリウスは少なからず焦りを覚えた。

 先ほどの濃い霧。あれは自然現象ではない。魔力の気配がしたし、何よりこんな昼下がりに突然霧が発生するはずがない。

(油断した――)

 もともとこの迷いの森は、今から会いに行こうとしていた妖精のほかにも、たくさんの人外のものが住んでいる。

 妖精の国やユリウスの故郷の龍の国など、異界に通じる出入り口にもなっている森だ。何かが起こるのは当たり前だと思っていたし、龍の王子であるユリウスに対して牙を剥く怖いもの知らずはそうそういない。だから、油断していた。

「おい、メリーエルはどこだ」

 ユリウスはダメもとでビオラに訊いてみた。もしかしたらという一縷の望みにかけたのだが、

「知らないわよ! そんなことより、なんだったの、あの霧」

 女王の側近らしいちんちくりんな妖精は何の役にも立ちそうもない。

 ユリウスはくしゃりと髪をかきむしって、湖の周りに漂っていた気配を追ってみた。

 だが、魔力の気配はするものの、どこにつながっているのかがわからない。

「……くそっ」

 ユリウスは毒づいて、空を見上げた。まだ明るいが、日はもう傾きかけている。

 メリーエルがどこにいるのか、今どういう状況なのかはわからないが、急がないと日が暮れる。日が暮れれば、この森は危ない。少なくとも、メリーエル一人では。

 それに、メリーエルをこの場から消した相手の目的がわからない。

(でもどうしてメリーエルを……。あいつを攫ったところで、どうしようもないだろうに)

 アロウンのように、メリーエルを嫁にしたいと言うもの好きならいざ知らず、魔力のほとんどない彼女に使い道はない。攫っても何の役にも立たないはずだ。

(世話の焼ける……)

 ユリウスは自分自身に苛立ちを覚えながらも、微かにメリーエルの気配のする方向へと足を向けた。
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