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湖には魔物がすんでいる!?
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スノウが変だ。
ウォール村から別荘に戻ったヴィクトールは、帰るといつも抱きつきに来るスノウが来なかったことに違和感を覚えていた。
ただいま、と告げても「ん!」と返事をしたきりで目を合わそうともしない。
「スノウ、具合が悪いの?」
「違うもん」
「じゃあ、おなかすいたのかな」
「違うもんっ」
理由はよくわからないが、どうやらご機嫌斜めのようだ。
ヴィクトールはスノウにキスをしたかったが、引き寄せようとするとパタパタと逃げていくので途方に暮れる。
(……まあ、少ししたらなおるかな)
違うと言っていたが、おなかがすいてイライラしているのかもしれない。
いつもより帰るのが少し遅くなったので、急いで夕飯の準備をした方がよさそうだ。
腹が膨れると機嫌も直るだろう。
ヴィクトールはそう安易に考えていたのだが、スノウは食事中もぷくっと拗ねていて、食べ終わっても機嫌が直らなかった。
別荘に来てから毎日一緒に入っている風呂も、一人で入ると言ってヴィクトールと一緒に入浴するのを嫌がる始末だ。
そして就寝時。
いつもならヴィクトールの腕の中にすぽっとおさまって可愛らしく眠りにつく彼女が、ベッドの端でヴィクトールに背を向けて横になったとき、さすがのヴィクトールも――、キレた。
「いい加減にしなさい!」
背を向けて丸くなっていたスノウを強引に引き寄せて、無理やりに自分の方を向かせようとする。
しかし、スノウはいやいやと首を振って、ヴィクトールの腕から逃れようと大暴れをするので、ヴィクトールはさらにイラついた。
「スノウ!」
細く小さな体を押さえつけて、ベッドに縫い留める。
それでもスノウが視線を合わせようとしないので、腹が立ったヴィクトールは、彼女のガウンの紐を解いて、それで彼女の手首を縛りあげた。
「やだぁっ!」
ヴィクトールの暴挙にスノウが悲鳴を上げるが、彼はその声を無視してガウンもはぎ取ると、スノウを全裸に剥いてしまう。
「やぁ―――!」
恐怖を覚えたスノウが、目に涙を浮かべてようやくヴィクトールの方を向いた。
今にも涙が零れ落ちそうなスノウの大きな瞳が自分の視線とかち合って、ヴィクトールはようやくホッとする。
「やっとこっちを向いた……」
ヴィクトールはスノウの目尻に口を寄せて涙を舐めとる。
スノウはぐすんと鼻を鳴らして、ヴィクトールを睨みつけた。
「ヴィーの、ばか!」
罵られたヴィクトールは、にっこりと口元だけで微笑むと、何も言わずにスノウの裸体に手を這わせていく。
「や!」
スノウが身をよじって逃げようとするが、力で押さえつけられているのでびくりともしない。
やだやだと叫ぶスノウを無視して、太ももの内側にちゅうっと吸いつくと、さすがにスノウが泣きはじめた。
「やだ! ヴィー、きらいっ! 意地悪っ! ばかっ」
ヴィクトールを罵りながらぽろぽろと泣きだすスノウに、ヴィクトールも手を止める。
「スノウ、何に怒っているのか、言ってくれないとわからないよ?」
視線を合わせて、涙の伝う頬をつつきながらそう言えば、スノウがヴィクトールを睨みながら叫んだ。
「ヴィー、浮気したっ!」
「……………………。……は?」
ヴィクトールはたっぷりと沈黙した後で、目を丸くした。
何を言われたのかわからずにパチパチと目を瞬いていると、スノウが泣きじゃくりながら続ける。
「ヴィー、ほかの女の子と楽しそうだった! わたしのことはおいてどこか行っちゃうのに! ほかの女の子となかよくするのはビビアンさんが浮気って言った! ヴィー、浮気者!」
ヴィクトールはさっぱりわからずに、スノウにのしかかった体勢のまま考え込んだ。
女の子と楽しそうにしていたと言うが、ヴィクトールが今日女の子と会ったのは、ウォール村で、カーラとその友達に会っただけだ。
まさか――、と思って、ヴィクトールはスノウの瞳を覗き込む。
「スノウ、もしかして今日、ウォール村に行ったの?」
スノウはぷくっと頬を膨らませながら「ポールお爺さんと行った! 金髪っぽい女の子と楽しそうだった!」と答える。
(なるほど、ね……)
ヴィクトールは何となく状況を理解した。
ウォール村に行ったスノウは、そこで、ヴィクトールとカーラが話している姿を目撃したようだ。
それで「浮気者」はさすがにひどい気がするが、しかし、ヴィクトールはそれよりも気になることがある。
「ねえ、スノウ。もしかして――、焼きもち、やいているのかな?」
怒っているスノウには悪いが、ヴィクトールは顔がにやけるのを止められなかった――。
ウォール村から別荘に戻ったヴィクトールは、帰るといつも抱きつきに来るスノウが来なかったことに違和感を覚えていた。
ただいま、と告げても「ん!」と返事をしたきりで目を合わそうともしない。
「スノウ、具合が悪いの?」
「違うもん」
「じゃあ、おなかすいたのかな」
「違うもんっ」
理由はよくわからないが、どうやらご機嫌斜めのようだ。
ヴィクトールはスノウにキスをしたかったが、引き寄せようとするとパタパタと逃げていくので途方に暮れる。
(……まあ、少ししたらなおるかな)
違うと言っていたが、おなかがすいてイライラしているのかもしれない。
いつもより帰るのが少し遅くなったので、急いで夕飯の準備をした方がよさそうだ。
腹が膨れると機嫌も直るだろう。
ヴィクトールはそう安易に考えていたのだが、スノウは食事中もぷくっと拗ねていて、食べ終わっても機嫌が直らなかった。
別荘に来てから毎日一緒に入っている風呂も、一人で入ると言ってヴィクトールと一緒に入浴するのを嫌がる始末だ。
そして就寝時。
いつもならヴィクトールの腕の中にすぽっとおさまって可愛らしく眠りにつく彼女が、ベッドの端でヴィクトールに背を向けて横になったとき、さすがのヴィクトールも――、キレた。
「いい加減にしなさい!」
背を向けて丸くなっていたスノウを強引に引き寄せて、無理やりに自分の方を向かせようとする。
しかし、スノウはいやいやと首を振って、ヴィクトールの腕から逃れようと大暴れをするので、ヴィクトールはさらにイラついた。
「スノウ!」
細く小さな体を押さえつけて、ベッドに縫い留める。
それでもスノウが視線を合わせようとしないので、腹が立ったヴィクトールは、彼女のガウンの紐を解いて、それで彼女の手首を縛りあげた。
「やだぁっ!」
ヴィクトールの暴挙にスノウが悲鳴を上げるが、彼はその声を無視してガウンもはぎ取ると、スノウを全裸に剥いてしまう。
「やぁ―――!」
恐怖を覚えたスノウが、目に涙を浮かべてようやくヴィクトールの方を向いた。
今にも涙が零れ落ちそうなスノウの大きな瞳が自分の視線とかち合って、ヴィクトールはようやくホッとする。
「やっとこっちを向いた……」
ヴィクトールはスノウの目尻に口を寄せて涙を舐めとる。
スノウはぐすんと鼻を鳴らして、ヴィクトールを睨みつけた。
「ヴィーの、ばか!」
罵られたヴィクトールは、にっこりと口元だけで微笑むと、何も言わずにスノウの裸体に手を這わせていく。
「や!」
スノウが身をよじって逃げようとするが、力で押さえつけられているのでびくりともしない。
やだやだと叫ぶスノウを無視して、太ももの内側にちゅうっと吸いつくと、さすがにスノウが泣きはじめた。
「やだ! ヴィー、きらいっ! 意地悪っ! ばかっ」
ヴィクトールを罵りながらぽろぽろと泣きだすスノウに、ヴィクトールも手を止める。
「スノウ、何に怒っているのか、言ってくれないとわからないよ?」
視線を合わせて、涙の伝う頬をつつきながらそう言えば、スノウがヴィクトールを睨みながら叫んだ。
「ヴィー、浮気したっ!」
「……………………。……は?」
ヴィクトールはたっぷりと沈黙した後で、目を丸くした。
何を言われたのかわからずにパチパチと目を瞬いていると、スノウが泣きじゃくりながら続ける。
「ヴィー、ほかの女の子と楽しそうだった! わたしのことはおいてどこか行っちゃうのに! ほかの女の子となかよくするのはビビアンさんが浮気って言った! ヴィー、浮気者!」
ヴィクトールはさっぱりわからずに、スノウにのしかかった体勢のまま考え込んだ。
女の子と楽しそうにしていたと言うが、ヴィクトールが今日女の子と会ったのは、ウォール村で、カーラとその友達に会っただけだ。
まさか――、と思って、ヴィクトールはスノウの瞳を覗き込む。
「スノウ、もしかして今日、ウォール村に行ったの?」
スノウはぷくっと頬を膨らませながら「ポールお爺さんと行った! 金髪っぽい女の子と楽しそうだった!」と答える。
(なるほど、ね……)
ヴィクトールは何となく状況を理解した。
ウォール村に行ったスノウは、そこで、ヴィクトールとカーラが話している姿を目撃したようだ。
それで「浮気者」はさすがにひどい気がするが、しかし、ヴィクトールはそれよりも気になることがある。
「ねえ、スノウ。もしかして――、焼きもち、やいているのかな?」
怒っているスノウには悪いが、ヴィクトールは顔がにやけるのを止められなかった――。
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