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湖には魔物がすんでいる!?

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 別荘に帰ったあとも、スノウはヴィクトールにしがみついて離れようとしなかった。

 スノウの震えは止まらず、熱でもあるのかと心配になったが、額に手を当ててみても平熱と変わらない。

 ヴィクトールは少し考えて、スノウを抱きしめたままベッドに横になった。

 震えるスノウを抱きしめて、ぽんぽんと背中を叩いていると、しばらくして彼女の体から力が抜けていく。

「スノウ、大丈夫だよ。僕はここにいるからね」

 安心させるようにささやくと、やがてスノウはこてんと眠りについた。

 すやすやと眠るスノウの目尻に滲んでいる涙を指先でぬぐいながら、ヴィクトールは眉を寄せる。

 どうやら、体調が悪いわけではなさそうだった。

(……怯えている?)

 スノウのこの反応は、久しぶりに見る。

 スノウと出会ったばかりのころ――ヴィクトールが彼女に対して酷薄に接していたころに見せていたのと同じ顔。いや、それ以上かもしれない。

 ヴィクトールはスノウの髪を梳きながら、スノウの様子がおかしくなったときのことを考えた。

 スノウの様子がおかしくなったのは、そう――、町の広場の人だかりで立ち止まったときだ。

 それまで楽しそうにしていた彼女は、そこで何かを見たのだろうか。そうだとすれば、何を見て怯えはじめたのだろうか。

(起きたら確かめてみるか……)

 スノウのこの怯えようは、見過ごせない。

 ヴィクトールはスノウが起きるまで、ほかにすべきことをすませておこうとベッドから降りる。

「クック」

 ヴィクトールが呼べば、バサバサと白い鳩が肩にとまった。

 彼は部屋にある机で、小さな紙に何かを書き記すと、鳩の左足に括りつける。

「これを、我が君ユアーマジェスティへ」

 ヴィクトールがクックの首元を撫でて告げると、まるで人の言葉を理解しているかのように、彼は「クルックー」と鳴き、窓の外へと飛び立っていく。

 ヴィクトールはその白い影が見えなくなるまで見つめたのち、そっと息を吐きだした。
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