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新婚旅行と始祖の神
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リリアローズがフレイディーベルグの執務室に向かうと、エレノアは部屋のソファに座って本を開いた。
リリアローズはフレイディーベルグの仕事を手伝っているらしい。神様がどんな仕事をしているのかはわからないが、エレノアは手伝いが許されている彼女が少し羨ましくなった。
(わたしもサーシャ様のお手伝い、したいな……)
とはいえ、エレノアは何も知らない。サーシャロッドの仕事の手伝いが自分にできるかどうかなんてわからないし、逆に迷惑をかけたらと思うと申し出ることができなかった。申し出たとしても、サーシャロッドのことだ、「何もしなくていいよ」と言う可能性の方が高い。
サーシャロッドは今までもエレノアのことを妻と呼んだが、結婚式をして、「おいおい」と言われていた子作りの本番をして、ようやく本当の意味で妻になれた気がする。だから、もう少しでもいいからサーシャロッドの役に立つことがしたかった。
悶々としながら本をめくる。
恋愛小説だそうだが、この本の主人公は結婚している。リリアローズが、新婚さんにはぴったりよ、と言っていた。これを読めば何かヒントがあるだろうか。
物語は結婚式からはじまった。
主人公とその夫は、紆余曲折あってようやく結婚までこぎつけたらしい。
主人公は貴族の令嬢で、夫は王家に仕える騎士。身分差を乗り越えての結婚のようだ。
主人公の結婚式の描写を、先日の自分の結婚式と重ねて読んでいたエレノアは、すぐにのめりこんで、わくわくとページをめくっていく。
そして楽しく読み続けていたエレノアだったが――
「………」
物語が結婚式を終えて、初夜の場面に突入すると、みるみるうちにその顔を赤く染めた。
キスを交わしてもつれ込むようにベッドにダイブした主人公たち。主人公の夫はそのまま彼女のドレスを――
(きゃああああっ)
バタン! エレノアは心の中で悲鳴を上げて本を閉ざした。
(リリー様、なんてものをすすめるんですか!)
本を閉ざして、両手で顔を覆う。ようやくサーシャロッドと結ばれて、男女のアレコレについて勉強中のエレノアにとってはあまりに刺激が強すぎる。
「エレノア、どうした?」
あうあうと唸っていたところに突然サーシャロッドの声が聞こえて、エレノアは飛び上がらんばかりに驚いた。
あわてて本を自分の背中とソファの間に隠す。
フレイディーベルグとの話が終わったのだろう、サーシャロッドが部屋に入ってきて、エレノアの隣に腰を下ろした。
エレノアは本が見つからないようにとソファの背もたれにぴったりと背中をつける。
「顔が赤いようだが、熱でもあるのか」
サーシャロッドが心配そうに顔を覗き込んで、エレノアの額に手を当てた。
サーシャロッドのひんやりと心地いい手が、前髪をかき上げるように頭を撫でる。
「熱はないか」
「な、ないですよ。ちょっと部屋が暑かっただけです」
「部屋が? そうでもない気がするが」
窓を開けておこうかとサーシャロッドが立ち上がる。
サーシャロッドが背を向けた隙に、エレノアは、過去に例を見ないほどの素早さで背中に隠していた本をベッドの下に押し込んだ。基本的に動作がのんびりしているエレノアにとっては新記録の素早さだ。
そしてソファに座りなおして心臓の上に手をおいてホッとしていたら、隣に戻って来たサーシャロッドにさらに不審な目を向けられた。
「……本当に大丈夫か?」
「大丈夫です!」
とにかくサーシャロッドの目から本を隠すことに夢中のエレノアは、必死で頷けば頷くほど、サーシャロッドに訝しがられていることには気がつかなかった。
リリアローズはフレイディーベルグの仕事を手伝っているらしい。神様がどんな仕事をしているのかはわからないが、エレノアは手伝いが許されている彼女が少し羨ましくなった。
(わたしもサーシャ様のお手伝い、したいな……)
とはいえ、エレノアは何も知らない。サーシャロッドの仕事の手伝いが自分にできるかどうかなんてわからないし、逆に迷惑をかけたらと思うと申し出ることができなかった。申し出たとしても、サーシャロッドのことだ、「何もしなくていいよ」と言う可能性の方が高い。
サーシャロッドは今までもエレノアのことを妻と呼んだが、結婚式をして、「おいおい」と言われていた子作りの本番をして、ようやく本当の意味で妻になれた気がする。だから、もう少しでもいいからサーシャロッドの役に立つことがしたかった。
悶々としながら本をめくる。
恋愛小説だそうだが、この本の主人公は結婚している。リリアローズが、新婚さんにはぴったりよ、と言っていた。これを読めば何かヒントがあるだろうか。
物語は結婚式からはじまった。
主人公とその夫は、紆余曲折あってようやく結婚までこぎつけたらしい。
主人公は貴族の令嬢で、夫は王家に仕える騎士。身分差を乗り越えての結婚のようだ。
主人公の結婚式の描写を、先日の自分の結婚式と重ねて読んでいたエレノアは、すぐにのめりこんで、わくわくとページをめくっていく。
そして楽しく読み続けていたエレノアだったが――
「………」
物語が結婚式を終えて、初夜の場面に突入すると、みるみるうちにその顔を赤く染めた。
キスを交わしてもつれ込むようにベッドにダイブした主人公たち。主人公の夫はそのまま彼女のドレスを――
(きゃああああっ)
バタン! エレノアは心の中で悲鳴を上げて本を閉ざした。
(リリー様、なんてものをすすめるんですか!)
本を閉ざして、両手で顔を覆う。ようやくサーシャロッドと結ばれて、男女のアレコレについて勉強中のエレノアにとってはあまりに刺激が強すぎる。
「エレノア、どうした?」
あうあうと唸っていたところに突然サーシャロッドの声が聞こえて、エレノアは飛び上がらんばかりに驚いた。
あわてて本を自分の背中とソファの間に隠す。
フレイディーベルグとの話が終わったのだろう、サーシャロッドが部屋に入ってきて、エレノアの隣に腰を下ろした。
エレノアは本が見つからないようにとソファの背もたれにぴったりと背中をつける。
「顔が赤いようだが、熱でもあるのか」
サーシャロッドが心配そうに顔を覗き込んで、エレノアの額に手を当てた。
サーシャロッドのひんやりと心地いい手が、前髪をかき上げるように頭を撫でる。
「熱はないか」
「な、ないですよ。ちょっと部屋が暑かっただけです」
「部屋が? そうでもない気がするが」
窓を開けておこうかとサーシャロッドが立ち上がる。
サーシャロッドが背を向けた隙に、エレノアは、過去に例を見ないほどの素早さで背中に隠していた本をベッドの下に押し込んだ。基本的に動作がのんびりしているエレノアにとっては新記録の素早さだ。
そしてソファに座りなおして心臓の上に手をおいてホッとしていたら、隣に戻って来たサーシャロッドにさらに不審な目を向けられた。
「……本当に大丈夫か?」
「大丈夫です!」
とにかくサーシャロッドの目から本を隠すことに夢中のエレノアは、必死で頷けば頷くほど、サーシャロッドに訝しがられていることには気がつかなかった。
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