あの日、好きになったのは君でした

SNOW❄️

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番外編第2話 ハルカ、体育祭の日

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朝から、胸が苦しかった。
いつもなら
緊張なんてすぐ顔に出てしまうのに、
今日はそれ以上に、
何か心が落ち着かなくて。

体育祭なんて、
小学校のときから苦手だった。
人前で何かをすること、
注目されること。
それが、どうしても怖かった。

でも今年は少し違っていた。
「ペアを組む相手が誰になるか」
それが気になって仕方がなかった。

……大庭先輩だった。
それを知った瞬間、
心臓が大きく跳ねて、
呼吸が浅くなった。

どうしよう。
ちゃんと踊れるだろうか。
恥ずかしい思いをさせたらどうしよう。
先輩は、嫌じゃないだろうか。

そんな不安ばかりが頭の中をぐるぐるして、
ダンスの出番が近づくにつれて手が震えてきた。

でも、整列して目の前に立つ先輩は、
私が思っていたよりずっと落ち着いて見えた。
……少しだけ顔がこわばっていたけど。
それは私と同じように
緊張している証拠だと思った。

音楽が流れ始めたとき、
心が一瞬だけ真っ白になった。
でも先輩の手がふと
私の肩に触れた瞬間、
その温かさに少しだけ
息が楽になった気がした。

リズムに合わせて、
手を取って、ステップを踏む。
何度も練習したはずの動きなのに、
今日は全てがぎこちなく感じた。

でも、ほんの一瞬、
視線が重なったとき、
先輩の目がすごく優しく笑った。

……あの瞬間だけ、胸がいっぱいになって、
ちゃんと笑えた気がする。

ダンスが終わって、拍手が遠くで響いて。
私たちは向かい合って、
先輩が小さく息を整えながら言った。

「お疲れ様でした」

その声が、耳に残って離れなかった。
たった一言なのに、
あたたかくて、誠実で、
少しだけ震えていて。

どうしよう、って思った。
このままじゃ、
きっと私は先輩を好きになってしまう。
それでも、嫌じゃなかった。

でもその気持ちをうまく
隠さなきゃと思った。
先輩は優しい人だから。
もし私の気持ちに気づいたら、
困らせてしまうかもしれない。

だからその後も、
本当は少しでも近くで話したくて、
少しでも目が合えばいいのにって
思っていたけれど、
私からは何もできなかった。

……あの日から、
私は先輩の姿を探すようになった。

遠くから見つけるたびに、
心が痛いように高鳴るのを
どうしても止められなかった。

体育祭は、きっと
誰にとっても思い出になる行事だと思う。
でも私にとっては、
それ以上の何かになった。

もし、あのとき先輩が
少しでも私を見ていてくれたなら。
……それだけで、
まだこの気持ちを信じてもいいんだと思える。
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