上 下
34 / 75

運命論⑤

しおりを挟む

【side 蓮】

「なぁ……DV受けとる奴ってどうしたらええのん?」
「はぁ?」

職場で医師仲間に聞いてみた。

「シェルターやない?」
「でも本人も洗脳状態というかさぁ……抜け切らんのだよ……自分から戻って行くっていうか……」
「でも蓮先生のところには来るんだ」
「んー……昨日は来た……なぁ」
「家置いてきたの?」
「ん、仕事やって言うから一緒に家出たけど」
「それ、また戻るんちゃう?」
「え、今日も来るやんなって、確認して別れたけど」
「甘すぎやろーーー」

パソコンのオーダー画面をカチカチしていた医師仲間は、伸びをして言った。画面には、たった今入院してきた8ヶ月の男の子のデータが並ぶ。

また、忙しくなる。
この子に運命があるとするなら。
それは、長くはない。

「あ、やっぱ。出とるわ……厳しいわぁ……」
「移植かぁー……」

データを見て、治療を決める。

この子どもが、今の時代に生まれて、俺のいる病院に運ばれてきたことも、運命。ならそれを、意味のあることにしてやろうじゃないか。ココには、そういう奴らが集まっている。

「絶対治してやろう……」

絶対に治す、という同じ目指すべきところ。
真面目に、本気で、そう願う。

「オーダー、俺出しとくわ」
「それ終わったら蓮先生、帰ってええよ」
「明日から忙しくなんで?」
「はーーーい」

そう言われて俺は、パソコンに向かってオーダー画面と向き合った。

「あ、そうそう、蓮先生」
「んぁ?」

患者の様子を見に行こうとした医師仲間は、チラリと振り返った。なびく白衣が一瞬、アオの黒いあのマントを連想させて思わず、頬が緩む。

今度着てもらお、なんて呑気なことが浮かぶ。

「蓮先生、その子と関わるの、覚悟しないと蓮先生も危ないよ」
「危ない?」
「1番は専門家に相談すること。それができない事情は知らないけど。その子も相手も視界狭まってそうだし。助けてくれたって入れ込まれる可能性もある。それからわかってると思うけど相手から恨まれることも」
「……うん」
「でも、蓮先生のところに来てるのはやっぱり、なんかあるんだよ」
「……」
「蓮先生の世界に引き込んでやりなって、難しいこと考えないでさ」

俺の世界。
なんだそれは。

「それなんか言ってること矛盾してねぇ?」
「あ、バレた? どっちも大事ってことよ!」
「意味わかんねぇけど……ありがと」

ちゃちゃっとオーダーを入れてその場を立ち去りたいところだけど、間違えられないから計算機片手にじっくり考えてオーダーを出した。

「先生まだいるの?」
「もう帰るよー」

なんて病棟の看護師に通りすがりに声をかけられたりもしながら。

アオに無償に会いたくて。
俺は、急いで家に向かった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

「Promise」-α×β-溺愛にかわるまでのお話です♡

BL / 連載中 24h.ポイント:475pt お気に入り:1,149

BL団地妻on vacation

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:36

BL団地妻~淫乱人妻(♂)、濡れ濡れ内助の孔~

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:59

騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く

BL / 連載中 24h.ポイント:2,756pt お気に入り:471

この感情は悪いもの?

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

溺愛アルファの完璧なる巣作り

BL / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:3,070

【婚約破棄されたΩは、イケメンαに溺愛される】

BL / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:809

Collarに光の花の降る

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:193

昼下がりの団地妻

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:32

あの約束を、もう一度

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:37

処理中です...