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5 怖いのは
しおりを挟む「それからずっと毎日?」
早都は、克実を見た。克実はコクリと頷いた。
克実は話を濁した部分もあったが、ドラレコで推測した内容と大体合っていた。
(これは、心中ということでいいのか。心中で自殺なら保険金は出ない)
早都は一刻も早くここを立ち去りたかった。
(この案件はヤバイ……これ以上関わっちゃダメだ……)
早都は立ち上がろうと思った。ところが、気配があった時に克実に腕を掴まれたままだった。くいっと腕が克実に引かれた。
「俺、どうしよう……姉さんだったら……怖い……」
そりゃそうだろう。
色々あったとはいえ、最後は性的虐待として成り立つんじゃないか。されたことを考えたら、この状況が余計に怖いことはわかる。
早都は頷いたが、次の克実の言葉にギョッとした。
「最後に晋也さんに抱かれたから」
克実はボソッと言ったのだが、それは強烈に早都の耳に響いた。
(は……? さっきの話の流れでどこに……えっ? 結婚式の夜?! はぁぁぁ?? ……それは、お姉さんが怒ってると思ってもおかしくはないだろうな……)
顔には出していないつもりだった早都だったが、克実は微かに笑った。
「俺のことバカだと思うだろ。姉さんを怒らせるってわかってて、どうしてそんなことしたのかって」
どう返していいかわからず、早都は首を振った。
「晋也さんが、切実な顔してたから……それまで、二年近く……勃たなかった……らしいし……俺、俺と姉さん、晋也さんに見捨てられたら……って……」
伏し目がちに喋る克実のまつ毛を早都は見ていた。
「はー……」
早都は大きくため息をついた。
「それは恋じゃない。そんなのは……」
早都は首を振った。克実と目が合う。
「じゃあ、恋ってどんなのか、……教えて??」
吸い込まれそうなくらい真剣な目。ドキッとして、早都はヤバイと思った。
(死んだ姉夫婦よりもたちが悪いのはこの──……)
克実にギュッとしがみつかれて、早都には不快感はなかった。不快感がなかったことがおかしな話だということに早都は気づいていたが、何だか何もかもが朦朧としていた。
「ごめんなさい……俺……」
克実は早都の心がギュッとなるような表情をしていた。
(多分、〝晋也さん〟という人はこれにやられたんだ)
耳鳴りのように赤ちゃんの泣き声が早都のそばでしている。
ドライブレコーダーにも響いていたそのノイズ。
「くそっ……」
なぜかギンギンに臨戦態勢になっている己のものに、克実が手を添える。
「俺は、男は、抱けない……」
かろうじて早都がそう言うと、克実が笑う。
「いいんだ。俺のことはどう思ってくれても……」
克実の言っていることのすべてが矛盾していることに、早都は気づいていた。けれど、抗うことができない。
ペタリ、ペタリと甘えるように早都の肌に克実が触れる。冷たくはない。かといってあたたかくもなかった。
早都の屹立したものに唇をよせて、ぱかりと口を開けて克実は早都のものをくわえる。開けた時に口の中が毒々しいほど真っ赤に見えた。そんなはずはないのに。
「ちょっ……」
思ったよりも上手くて、早都はすぐにイキそうになったが、早都がイク直前に克実は口を離した。
「俺の中にそそいでください」
言いながら、克実は早都に跨り、早都のものを自分の中に導いた。
「はっ? ちょっ、それは……」
ぬぽっと音がして、克実の中に早都のものが入っていった。きついとは感じなかった。慣れた様子で克実の中は早都のものをすべて飲み込んだ。
「はっ……俺の中気持ちいいですか? 気持ち良かったら出してくださいねっ……!!」
上下に揺れながら、克実が言う。早都は気持ちよさを感じながらも歯を食いしばって果てぬよう我慢した。男の中に、しかもこの状況で中で出すなど正気の沙汰ではない。早都は克実を押そうとしたが、どこにそんな力があるのかと思うほど強い力で押しつけられ、グッと奥まで早都のものは飲み込まれた。
「くっ……頼むから……抜いてくれ……」
限界が近づき早都は克実を押しのけようとしたが、びくともしなかった。
「ふぁっ……あっ……お願い……中でイッて!! あっ……俺もイクからっ……あっ……」
克実が早都の上でビクビクと跳ねる。早都もまたその動きと締めつけで、耐えきれずイッてしまった。
「……っふ……ありがとうございます……」
早都の上から抜け出ると、克実は満足そうに笑いながら腹を撫でた。その仕草は、さながら腹に赤ちゃんでもいるようで、早都はゾッとした。
早都は急いで身なりを整えると、早口で克実に「不慮の事故であると証明できないと、保険金は出ない可能性があります。保険会社から連絡が行くと思います」と言い、目も合わせずにその場を後にした。
早都は提出した調査報告にドラレコを添付したが、保険会社から「何も映っていない」と言われた。
克実からは名刺の連絡先にも保険会社にも何も連絡はなく、保険会社が生命保険に関しては支払いできない旨通知したらしいが、特にそれに関して異議などは出ていないという。
早都は、あれ以来女に欲情することがなくなってしまい、「やはりそういうことだったのだ」と妙に納得した。
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