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第7話 ずぶぬれ
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占い師ができないとなるど……ストレス発散をすることができない。
あぁ、ストレスがたまるわ。
お茶会の予定もまだ先だし。
親友のミランダは今まさに結婚式の準備で忙しいのか、全然かまってくれないし。
こういう時にかぎって、王都に行くような用事も、パーティーもないんだから……
自室でお茶を嗜みながらため息を一つついて、窓の外に私は視線をやった。
自室の窓から見えるのは美しい庭、ではなく立派な畑だった。
畝がいくつも並び、季節ごとの野菜が植えられている。
今はもっぱら夏野菜である、トマト、きゅうり、なす、ピーマンもう夏に育つ物がそこらじゅうに植えられ育てられている。
家の庭師の仕事は、木々の手入れではなくて、野菜の栽培なのだ。
お屋敷の窓からみた景色が、広大な畑というのは実は珍しいものではない。
僻地のお貴族様の庭なんて、こんなものだ。
芝生をはやしておくより、野菜を育てておいたほうが、お金になる。
こういうところでお金を節約したり、収入源として売って外貨を稼ぎ領地が少しでもよくなるように使うのだ。
まぁ他に収入源があるような領地はこんなことしてないだろうけれどね。
王都にある、こじんまりとしたマクミラン家の別宅はさすがにこうじゃないけれど。
領主も兼ねている公爵家は、当然王都にも顔をみせに定期的にいかねばならないが、当然、領地をないがしろにはできない。
となると、必要性にかられて、王都と領地を往復するはめになる。
マクミラン領から王都までは、徒歩だと60日、馬車45日もかかるのだ。
金貨一枚と高額だけれど、魔法のスクロールがあるから、王都と辺境の地の行き気ができるのだけれど。
だからこそ、スクロールを購入するためにも、せっせと庭で野菜を育ててもらうのだ。
マクミラン領は、あまり恵まれた土地ではない。
山岳が多く、平地は少ない。平地が少ないからこそ、私の屋敷の貴重な平地も有効活用してるのだけれど……
平地が少なく山岳に囲まれているおかげで、奪っても無駄な土地ゆえに、誰も攻めてこないし、攻めるのも難しいって理由があるんだけれど。
山岳を利用して大きなダムの建設の話しもすすんできたし、ダムができれば、万年水不足からも解消されるし、上手くいけば隣国に水が売れるかもしれないのだ。
水さえ売れるようになれば、もうちょっとは私の結婚相手が探しやすくなると思うんだけれど。
隣国の水を安く都合してほしいところのぼっちゃんとか。ぼっちゃんとか、ぼっちゃんとか……
「お嬢様!! 大変でございます」
退屈してる私にセバスはいつものように、たいした話じゃないのにそれは一大事ですって雰囲気で部屋に入ってくる。
「ハイハイ、それは一大事ね。わかりました。庭に出て私が唯一の使える得意魔法で水をやりましょう」
数多の属性を操る人も世の中にはいる。
私も水の魔法が使える。
ちょっとだけ生活魔法程度に魔法を使える人は庶民にもよくいる。
魔力の細かい調節が下手糞な私は、平民より魔力があったせいで、ちょっとだけではなく、ドーンとだけ使える。
そのため、雨があまり降らないと、跡取りのお嬢様にも関わらず畑の水やりにかりだされるってわけ。
これもダムができるまでの辛抱よ。
いつか、このやり取りも懐かしいなと思い出すだろう。
一応、セバスも跡取りであるお嬢様に、畑の水やりを頼むのはまずいと感じているようで。
『お嬢様、本日も大規模家庭菜園に水やりをお願いします』といえばいいのに。
『大変です、お嬢様。雨が降らず下々の者が困っております』だの手を変え品を変え私に水やりを頼んでくる。
『別に水やりはちゃんとするから、回りくどい言い回しはしなくていい』と言っているのにセバスは変なところで体裁を気にするタイプだから……
だから、毎回水やりお願いしますと言えば済むのに、公爵家の跡取りである私が出張らなければいけない時がきたと雰囲気を出すために大騒ぎなのだ。
というわけで、今回もどうせ、水やりすればいいんでしょうと。
セバスの話なんか無視して私はずんずん玄関に向かって進む。
「ティアお嬢様!」
はい、三文芝居は無視無視。
もう、外に出て1から詠唱することもめんどくさいわね。
外に出てすぐドーンと降らしてやろうじゃないの。
皆私が水やりするとわかってるだろうから、すでに屋根の有るところに避難しているだろうし。
「水よ。私の呼びかけにこたえ集いたまえ」
本来この詠唱はコップ1~バケツ1杯の水を出す詠唱呪文である。
「お嬢様!!!」
ハイ、無視無視。
玄関の両開きの扉を勇者開きでドーンとあけて、最後の一節を唱える。
「さぁ、派手にぶちまけなさい」
豪快な文句に答えて私のもとに集まっていた魔力が一気に拡散して、スコールのような一寸先すら見渡すのが難しいほどの雨が降った。
ふぅ、今日も私の唯一の仕事完了っと。
私がそんなことをしてると、セバスが青い顔をして私の横にいることに気がついた。
バケツをひっくり返したかのような雨は、1分もしないうちに先ほどの豪雨が嘘のようにいつも通り止んだ。
私の目の前に、二人の人物がずぶぬれで現れた。
一人は黒髪、もう一人は赤茶色。
というのも二人はずぶぬれのため下をむいているから、身長が結構高いんじゃないかしら以外だと髪の色くらいしかわからない。
「えっ? えっ?」
ヤバいわ、おもいっきりぶっぱなしたわ。
お客さんだったの? と今さら後ろに控えているセバスのほうにゆっくりと振り返る。
「……お……お嬢様に、大事なお話があるそうで、はるばるヴィスコッティ領からお越しになられました」
セバスの声が震えている。
もしかして、物すごく重要な客人だったの? とすでにやらかしてしまった私はどうしようと今さら思い始める。
って、ヴィスコッティ領?
いやいやまさかね。
目の前の男は、右手でずぶぬれになりぽたぽたと水が滴る髪をかきあげた。
その顔をみて、私はヒイッと息をのんだ。
もう2度と個人的に会うないだろうと思っていた。
だって、私はあれほど用心に用心を重ねて姿を消したのだから。
「こちらの黒髪の見目麗しいお方が、お嬢さまもご存じかも知れませんが。ヴィスコッティ家、次男。ノア・ヴィスコッティ様……ご本人でございます」
セバスはそういうと、私からそっと視線をそらす。
セバス!! お願い、嘘だと言って。
それに、これほど大事な話だったら、私を無理やりにでも制止してよと、セバスを故意に無視したのにセバスに責任をなすりつける。
「こっ、これは失礼いたしました。セバスすぐにタオルを」
ヤバい、どうしてこんな僻地に王都の貴族の中心人物である彼がなぜ現れたの?
まさか、ばれたんじゃ……
嫌な汗が背中を流れるのは、絶対に夏の暑さのせいではない。
自分よりも格上の地位の方に失礼を思いっきりしてしまったからなのか、まさかアレだけ用意周到にトンズラしたというのに、ノアが占い師の正体を見抜いて訪問してきたのではないかと思ったからなのか……
「タオルは必要ありません」
フワッと熱風が私のところまできたと思うと、そこにずぶぬれの男はいなかった。
一瞬でノアの服も髪も乾いてしまった。
隣に控えていた従者だろう男は、一瞬で乾かしたノアとは違い。魔法を詠唱し始める。
ちなみにノアのほうが普通ではないのだ。
後ろにいる彼のほうが魔術師として普通なのだ、むしろノアと比べてしまったせいで劣っているように感じるが。
略詠唱で、風と熱を融合した魔法を使っているのだから十分凄い。
少なくとも、家の領にはノアの後ろに控えている彼レベルの火と風の応用魔法を使える腕前の人物はいない。
魔法の適性が高い人物は小さい間に魔法を学ぶ学園に入れられるのだから。
魔法の才能がない判定された私には関係がなかったけれど……
私の下までやってくると、しらじらしく私の手をとり、膝を折り額を私の手に軽く額をつけ挨拶をされた。
「ノア・ヴィスコッティと申します。中央の貴族ですので、こちらの方は私のことをあまりご存じないかと思いますが、以後お見知りおきを、マクミラン姫君」
ボヤッとノアが発した言葉が中に浮かび上がり、ホント、ホント、ホントが羅列した。
彼は本物の、中央貴族界の次世代の中心人物。
数多のゴシップを私は耳にしていた。
その容姿で女達を酔わせ、悩ませ、争わせ、恋心をあっさりと踏みにじる奇人ノア・ヴィスコッティである。
あぁ、ストレスがたまるわ。
お茶会の予定もまだ先だし。
親友のミランダは今まさに結婚式の準備で忙しいのか、全然かまってくれないし。
こういう時にかぎって、王都に行くような用事も、パーティーもないんだから……
自室でお茶を嗜みながらため息を一つついて、窓の外に私は視線をやった。
自室の窓から見えるのは美しい庭、ではなく立派な畑だった。
畝がいくつも並び、季節ごとの野菜が植えられている。
今はもっぱら夏野菜である、トマト、きゅうり、なす、ピーマンもう夏に育つ物がそこらじゅうに植えられ育てられている。
家の庭師の仕事は、木々の手入れではなくて、野菜の栽培なのだ。
お屋敷の窓からみた景色が、広大な畑というのは実は珍しいものではない。
僻地のお貴族様の庭なんて、こんなものだ。
芝生をはやしておくより、野菜を育てておいたほうが、お金になる。
こういうところでお金を節約したり、収入源として売って外貨を稼ぎ領地が少しでもよくなるように使うのだ。
まぁ他に収入源があるような領地はこんなことしてないだろうけれどね。
王都にある、こじんまりとしたマクミラン家の別宅はさすがにこうじゃないけれど。
領主も兼ねている公爵家は、当然王都にも顔をみせに定期的にいかねばならないが、当然、領地をないがしろにはできない。
となると、必要性にかられて、王都と領地を往復するはめになる。
マクミラン領から王都までは、徒歩だと60日、馬車45日もかかるのだ。
金貨一枚と高額だけれど、魔法のスクロールがあるから、王都と辺境の地の行き気ができるのだけれど。
だからこそ、スクロールを購入するためにも、せっせと庭で野菜を育ててもらうのだ。
マクミラン領は、あまり恵まれた土地ではない。
山岳が多く、平地は少ない。平地が少ないからこそ、私の屋敷の貴重な平地も有効活用してるのだけれど……
平地が少なく山岳に囲まれているおかげで、奪っても無駄な土地ゆえに、誰も攻めてこないし、攻めるのも難しいって理由があるんだけれど。
山岳を利用して大きなダムの建設の話しもすすんできたし、ダムができれば、万年水不足からも解消されるし、上手くいけば隣国に水が売れるかもしれないのだ。
水さえ売れるようになれば、もうちょっとは私の結婚相手が探しやすくなると思うんだけれど。
隣国の水を安く都合してほしいところのぼっちゃんとか。ぼっちゃんとか、ぼっちゃんとか……
「お嬢様!! 大変でございます」
退屈してる私にセバスはいつものように、たいした話じゃないのにそれは一大事ですって雰囲気で部屋に入ってくる。
「ハイハイ、それは一大事ね。わかりました。庭に出て私が唯一の使える得意魔法で水をやりましょう」
数多の属性を操る人も世の中にはいる。
私も水の魔法が使える。
ちょっとだけ生活魔法程度に魔法を使える人は庶民にもよくいる。
魔力の細かい調節が下手糞な私は、平民より魔力があったせいで、ちょっとだけではなく、ドーンとだけ使える。
そのため、雨があまり降らないと、跡取りのお嬢様にも関わらず畑の水やりにかりだされるってわけ。
これもダムができるまでの辛抱よ。
いつか、このやり取りも懐かしいなと思い出すだろう。
一応、セバスも跡取りであるお嬢様に、畑の水やりを頼むのはまずいと感じているようで。
『お嬢様、本日も大規模家庭菜園に水やりをお願いします』といえばいいのに。
『大変です、お嬢様。雨が降らず下々の者が困っております』だの手を変え品を変え私に水やりを頼んでくる。
『別に水やりはちゃんとするから、回りくどい言い回しはしなくていい』と言っているのにセバスは変なところで体裁を気にするタイプだから……
だから、毎回水やりお願いしますと言えば済むのに、公爵家の跡取りである私が出張らなければいけない時がきたと雰囲気を出すために大騒ぎなのだ。
というわけで、今回もどうせ、水やりすればいいんでしょうと。
セバスの話なんか無視して私はずんずん玄関に向かって進む。
「ティアお嬢様!」
はい、三文芝居は無視無視。
もう、外に出て1から詠唱することもめんどくさいわね。
外に出てすぐドーンと降らしてやろうじゃないの。
皆私が水やりするとわかってるだろうから、すでに屋根の有るところに避難しているだろうし。
「水よ。私の呼びかけにこたえ集いたまえ」
本来この詠唱はコップ1~バケツ1杯の水を出す詠唱呪文である。
「お嬢様!!!」
ハイ、無視無視。
玄関の両開きの扉を勇者開きでドーンとあけて、最後の一節を唱える。
「さぁ、派手にぶちまけなさい」
豪快な文句に答えて私のもとに集まっていた魔力が一気に拡散して、スコールのような一寸先すら見渡すのが難しいほどの雨が降った。
ふぅ、今日も私の唯一の仕事完了っと。
私がそんなことをしてると、セバスが青い顔をして私の横にいることに気がついた。
バケツをひっくり返したかのような雨は、1分もしないうちに先ほどの豪雨が嘘のようにいつも通り止んだ。
私の目の前に、二人の人物がずぶぬれで現れた。
一人は黒髪、もう一人は赤茶色。
というのも二人はずぶぬれのため下をむいているから、身長が結構高いんじゃないかしら以外だと髪の色くらいしかわからない。
「えっ? えっ?」
ヤバいわ、おもいっきりぶっぱなしたわ。
お客さんだったの? と今さら後ろに控えているセバスのほうにゆっくりと振り返る。
「……お……お嬢様に、大事なお話があるそうで、はるばるヴィスコッティ領からお越しになられました」
セバスの声が震えている。
もしかして、物すごく重要な客人だったの? とすでにやらかしてしまった私はどうしようと今さら思い始める。
って、ヴィスコッティ領?
いやいやまさかね。
目の前の男は、右手でずぶぬれになりぽたぽたと水が滴る髪をかきあげた。
その顔をみて、私はヒイッと息をのんだ。
もう2度と個人的に会うないだろうと思っていた。
だって、私はあれほど用心に用心を重ねて姿を消したのだから。
「こちらの黒髪の見目麗しいお方が、お嬢さまもご存じかも知れませんが。ヴィスコッティ家、次男。ノア・ヴィスコッティ様……ご本人でございます」
セバスはそういうと、私からそっと視線をそらす。
セバス!! お願い、嘘だと言って。
それに、これほど大事な話だったら、私を無理やりにでも制止してよと、セバスを故意に無視したのにセバスに責任をなすりつける。
「こっ、これは失礼いたしました。セバスすぐにタオルを」
ヤバい、どうしてこんな僻地に王都の貴族の中心人物である彼がなぜ現れたの?
まさか、ばれたんじゃ……
嫌な汗が背中を流れるのは、絶対に夏の暑さのせいではない。
自分よりも格上の地位の方に失礼を思いっきりしてしまったからなのか、まさかアレだけ用意周到にトンズラしたというのに、ノアが占い師の正体を見抜いて訪問してきたのではないかと思ったからなのか……
「タオルは必要ありません」
フワッと熱風が私のところまできたと思うと、そこにずぶぬれの男はいなかった。
一瞬でノアの服も髪も乾いてしまった。
隣に控えていた従者だろう男は、一瞬で乾かしたノアとは違い。魔法を詠唱し始める。
ちなみにノアのほうが普通ではないのだ。
後ろにいる彼のほうが魔術師として普通なのだ、むしろノアと比べてしまったせいで劣っているように感じるが。
略詠唱で、風と熱を融合した魔法を使っているのだから十分凄い。
少なくとも、家の領にはノアの後ろに控えている彼レベルの火と風の応用魔法を使える腕前の人物はいない。
魔法の適性が高い人物は小さい間に魔法を学ぶ学園に入れられるのだから。
魔法の才能がない判定された私には関係がなかったけれど……
私の下までやってくると、しらじらしく私の手をとり、膝を折り額を私の手に軽く額をつけ挨拶をされた。
「ノア・ヴィスコッティと申します。中央の貴族ですので、こちらの方は私のことをあまりご存じないかと思いますが、以後お見知りおきを、マクミラン姫君」
ボヤッとノアが発した言葉が中に浮かび上がり、ホント、ホント、ホントが羅列した。
彼は本物の、中央貴族界の次世代の中心人物。
数多のゴシップを私は耳にしていた。
その容姿で女達を酔わせ、悩ませ、争わせ、恋心をあっさりと踏みにじる奇人ノア・ヴィスコッティである。
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