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私たちと市街地
第19話 違う違う違う違う!
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困った顔で私を見つめるちなみちゃん。
心配そうな顔で私を見つめるシュカ。
人間であって妖怪でもあるちなみちゃん。私は見えなくなるのに、見えなくならないちなみちゃん。
私は忘れてしまうのに、忘れることのないちなみちゃん。
シュカと仲良くなった妖怪の初めての友達のちなみちゃん。
私の心の中に二人にはとても言えないような嫉妬の言葉がいくつも渦巻いて。
何かのきっかけで口にしてしまいそうだったから、私は二人にごめんっと謝って走り出した。
「ちょっ、しずく!」
後ろからシュカが私を呼ぶ声が聞こえた。
嫌だ今は一人になりたい。
シュカの顔も今は見たくない。
シュカは友達だけど、いつの間にか私にとって友達だと思えなくなってしまっていた。
「しずく、待って!」
シュカの制止の声に、後ろをちらっと見たけれど、すぐに視線を前に戻して全速力で私は走った。
◆◇◆◇
しずくの家で厄介になって一カ月、二カ月、三カ月、四カ月。
夏休みにはいって、夏休みもあっという間に終わって、夏物の制服もいつの間にか衣替えしていた。
人間の子供にとっては、それはとても長い時間だったと思う。
俺が殺気を放ってしまったから、この辺りの妖怪が逃げ出しちゃったんだけど。
俺たちは放課後、人間のしずく、ろくろっ首のちなみ、ぬらりひょんの俺という変なメンバーで雑魚妖怪をずっと探していた。
しかし風月のいった通りその間雑魚妖怪の一匹すら見つけられなかった。
ここ二週間前から、しずくは「妖怪探し辞めない?」とは言ってはこないけれど、明らかに真剣に探してないって感じだったし。
半分人間のろくろっ首のちなみは、人間はつ、つつ、疲れるんですってしずくのことを気にしていた。
だから、たまには息抜きが必要かなって思ったんだ。
少し寒くなってきたけれど、夏の間しずくが好んでよくアイスを食べる姿を見かけた。
だから、気分転換にと誘ったつもりだったんだけど。
しずくの様子は、その日明らかにおかしかった。
さっき、学校から出た時はこうじゃなかった。
理由はなんでかわかんないんだけど、様子が違うことはわかる。
ずっと隣にいたんだから。
「どったの? 顔色悪いよ?」
まどろっこしいのは苦手だったし、明らかに様子もおかしかったから、いつも通り思ったことを俺は口にした。
「あの、あの、期限はまだあるので、具合が悪いならこ、こ、今度に」
ちなみもしずくの様子がいつもと違うことに気がついて、おろおろとしながらそう提案した。
しずくの視点は相変わらず定まんなくて、顔色も悪くて、ちなみの肩に回していた腕を外すし、顔色のわるいしずくの頬に手を伸ばした。
「ねぇ、ほんと顔真っ青なんだけど……しずく、具合でも」
「触らないで!……あっ、違っ」
はっきりとそう言われた。
「し、し、しずくちゃん?」
おろおろとちなみが俺たちの周りを右往左往する。
ちょっとなれなれしかったかなって俺は伸ばした手をひっこめた。
「ごめん」
「「え?」」
突然謝られて意味がわからなくて、俺とちなみがそうつぶやいた瞬間だ。
しずくが突然背を向けて走り出した。
「ちょっ、しずく」
しずくは俺に勝ってしまったことで力を得たけれど、弱い人間。
一人にはできないから、これまでも俺の名までやって傍にいた。
しずくに手を伸ばして俺は走り出したその時だ。
パキッパキっと音がして、目の前を走るしずくの姿にひびが入る。
これは俺の術。
早くつかまないと景色に同化して見えなくなる。
「しずく、待って!」
そう呼びかけると、しずくがわずかながらこっちに向いた。
手を伸ばす、しずくのどこだっていいから掴もうとした。
こちらを向いた視線がゆっくりとゆっくりと前に向くと同時にパラパラとしずくが崩れ景色に溶ける。
くそっ
間に合え!
届けっ!
その願いはむなしく、俺の手はしずくの手も服も掴むことをなく空を切り。
しずくは俺の目には映らなくなった。
「ふ、ふっ、ふっ、二人とも、は、走るの、はははっ早すぎで」
ぜーはーぜーはと肩で息をしながら、立ちどまって道の先を見つめる俺にちなみが話しかけてきた。
「あ? あれ? し、しずくちゃんは?」
きょろきょろとちなみは棒立ちでいる俺の周りを見渡す。
やっぱりちなみの目にもしずくは認識されない。
「ちなみ、どうしよう。俺のせいだ。しずくが景色に溶け込んで消えた。あれ多分俺が使うのと同じ術だ」
「え? え? え? えぇっぇぇええええ!!!」
驚いて、ちなみの首がちょっとだけ伸びた。
しずくが、消えた。
俺の術のようなものを使い、消しこみ溶け込み……消えた。
心配そうな顔で私を見つめるシュカ。
人間であって妖怪でもあるちなみちゃん。私は見えなくなるのに、見えなくならないちなみちゃん。
私は忘れてしまうのに、忘れることのないちなみちゃん。
シュカと仲良くなった妖怪の初めての友達のちなみちゃん。
私の心の中に二人にはとても言えないような嫉妬の言葉がいくつも渦巻いて。
何かのきっかけで口にしてしまいそうだったから、私は二人にごめんっと謝って走り出した。
「ちょっ、しずく!」
後ろからシュカが私を呼ぶ声が聞こえた。
嫌だ今は一人になりたい。
シュカの顔も今は見たくない。
シュカは友達だけど、いつの間にか私にとって友達だと思えなくなってしまっていた。
「しずく、待って!」
シュカの制止の声に、後ろをちらっと見たけれど、すぐに視線を前に戻して全速力で私は走った。
◆◇◆◇
しずくの家で厄介になって一カ月、二カ月、三カ月、四カ月。
夏休みにはいって、夏休みもあっという間に終わって、夏物の制服もいつの間にか衣替えしていた。
人間の子供にとっては、それはとても長い時間だったと思う。
俺が殺気を放ってしまったから、この辺りの妖怪が逃げ出しちゃったんだけど。
俺たちは放課後、人間のしずく、ろくろっ首のちなみ、ぬらりひょんの俺という変なメンバーで雑魚妖怪をずっと探していた。
しかし風月のいった通りその間雑魚妖怪の一匹すら見つけられなかった。
ここ二週間前から、しずくは「妖怪探し辞めない?」とは言ってはこないけれど、明らかに真剣に探してないって感じだったし。
半分人間のろくろっ首のちなみは、人間はつ、つつ、疲れるんですってしずくのことを気にしていた。
だから、たまには息抜きが必要かなって思ったんだ。
少し寒くなってきたけれど、夏の間しずくが好んでよくアイスを食べる姿を見かけた。
だから、気分転換にと誘ったつもりだったんだけど。
しずくの様子は、その日明らかにおかしかった。
さっき、学校から出た時はこうじゃなかった。
理由はなんでかわかんないんだけど、様子が違うことはわかる。
ずっと隣にいたんだから。
「どったの? 顔色悪いよ?」
まどろっこしいのは苦手だったし、明らかに様子もおかしかったから、いつも通り思ったことを俺は口にした。
「あの、あの、期限はまだあるので、具合が悪いならこ、こ、今度に」
ちなみもしずくの様子がいつもと違うことに気がついて、おろおろとしながらそう提案した。
しずくの視点は相変わらず定まんなくて、顔色も悪くて、ちなみの肩に回していた腕を外すし、顔色のわるいしずくの頬に手を伸ばした。
「ねぇ、ほんと顔真っ青なんだけど……しずく、具合でも」
「触らないで!……あっ、違っ」
はっきりとそう言われた。
「し、し、しずくちゃん?」
おろおろとちなみが俺たちの周りを右往左往する。
ちょっとなれなれしかったかなって俺は伸ばした手をひっこめた。
「ごめん」
「「え?」」
突然謝られて意味がわからなくて、俺とちなみがそうつぶやいた瞬間だ。
しずくが突然背を向けて走り出した。
「ちょっ、しずく」
しずくは俺に勝ってしまったことで力を得たけれど、弱い人間。
一人にはできないから、これまでも俺の名までやって傍にいた。
しずくに手を伸ばして俺は走り出したその時だ。
パキッパキっと音がして、目の前を走るしずくの姿にひびが入る。
これは俺の術。
早くつかまないと景色に同化して見えなくなる。
「しずく、待って!」
そう呼びかけると、しずくがわずかながらこっちに向いた。
手を伸ばす、しずくのどこだっていいから掴もうとした。
こちらを向いた視線がゆっくりとゆっくりと前に向くと同時にパラパラとしずくが崩れ景色に溶ける。
くそっ
間に合え!
届けっ!
その願いはむなしく、俺の手はしずくの手も服も掴むことをなく空を切り。
しずくは俺の目には映らなくなった。
「ふ、ふっ、ふっ、二人とも、は、走るの、はははっ早すぎで」
ぜーはーぜーはと肩で息をしながら、立ちどまって道の先を見つめる俺にちなみが話しかけてきた。
「あ? あれ? し、しずくちゃんは?」
きょろきょろとちなみは棒立ちでいる俺の周りを見渡す。
やっぱりちなみの目にもしずくは認識されない。
「ちなみ、どうしよう。俺のせいだ。しずくが景色に溶け込んで消えた。あれ多分俺が使うのと同じ術だ」
「え? え? え? えぇっぇぇええええ!!!」
驚いて、ちなみの首がちょっとだけ伸びた。
しずくが、消えた。
俺の術のようなものを使い、消しこみ溶け込み……消えた。
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