嘘の私が本物の君についたウソ

四宮 あか

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第25話 本物の私は圏外

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 ショウはこの質問になんて答えるんだろう。緊張して心臓の音が大きくなるのがわかる。
「…………友達だよ。決まってるだろ幼稚園からの腐れ縁の付き合いだぞ」
 少しの間のあと、ショウの口から出てきたのは予想通りの言葉だった。私はトイレに向かった。

 わかってた。友達でいようとしてたのは私。
 だから、ショウの答えはこれで正解なんだ。でも、なんか大事なものがあらためてズルリと私の中から抜けた気がする。
 部屋に戻りたくないけれど、大きいほうしてると思われたくないから気持ちがきっちりと切り替わってないけれど、私は部屋に戻った。


 さっきまでショウの隣に座ってた私。
「ごめん、おまたせ次何狩るとか決まった?」
 そう言ってショウの隣に置いてあるお気に入りのクッションを掴むと、ショウとハルトの間ではなくハルトの反対側の隣に私は座ってハルトの画面を覗き込んだ。


「昆虫棍てさ上手く乗ってくれるとやっぱり強いね、肩にカナブンみたいなのさえ乗らなければ使ってもいいかなって思うんだけど……」
 まだ、ゲームしかしてないけど。今のところ悪い人じゃないと思うし、顔だってそりゃ惚れてたショウと比べるとだけど、かっこいい部類だと思う。
「虫苦手? ゲームでも?」
「うーん、サイズビックリするくらい大きいじゃん」

 そんなこんなで何回かやって3人で遊ぶというのは終わった、おばさんが家にいるしあまり遅くまではってことで6時前にはハルトは帰ると言っていた。
「駅まで道わかる? 送る?」
 何気なくきくと。
「暗くなってきたら危ないし、大丈夫」
 と断られて、女の子扱いをしてもらえたのかとなんだかムズムズした。


 結局尻尾が出てないんだよ……あれこれクエストする前に尻尾はぎとれるまで同じのしておけばよかったかも……クソー取れなかったという後悔。なんか紹介というより、ただ3人でゲームやった感じが強い余韻だ。
 スニーカーを履いていると。
「ユウキちゃんトンカツ食べてく?」
 そういってショウのお母さんが顔をだした。
「えっ、食べます」
 トンカツ!? に思わず反射的にそう答えてしまったし、ショウの家ではそう言えちゃう間柄なのだ。
「OK、ユウキちゃんのお母さんに連絡しておくね。出来たら呼ぶからショウの部屋でまだ遊んでて」
「お前な……遠慮とかないの?」
「だってトンカツだよ。ショウの取り分がへるのはしょうがないよ。だってトンカツだし」
 トンカツだから仕方ないことを2回もいうことで強調した。


 再び靴を脱ぐと、トンカツ、トンカツと歌いながらなれた階段をショウよりも先にズンズンと進んでいた時だった。
 はきなれてないストッキングだった私は滑ったのだ。

「キャ」
 油断してた私は普通に可愛い声がでた。
 結構登ってたからヤバいと壁に手をついたけれど、すでに後ろに傾いた重心では踏みとどまれなかった。
 視界に天井がうつりこむ。後ろにいるショウ巻きこんで落ちるぞと思ったけれどそうならなかった。

 ギュっと目を閉じて開けたとき私の視界はショウのアップだった。
 今どうなっているの?
 ショウの片手は壁、もう片方の手は私の腰に回っていた。落ちてきたから支えてくれたのだと思う。
 私は首がガクンとなったまま、真上を向いてて、下から支える形となったショウとの身長差が階段のおかげで少なくなってこうなったのだと思う。
「……ごめん、滑った。いや、セーフセーフ。下まで落ちるのを流石に覚悟したわ。ありがと」
 急に視線をそらすのは不自然だろと、いつも通りいつも通りと言葉を絞り出した。
 変な体勢で。

 ショウの眉間にしわが寄る。
 ヤバい怒ってる? もしかして、私を支えたからどこか痛めた?
「お前なぁ……トンカツの歌を歌う暇があったら足下に気をつけろよ」
 ごもっともである。

「ちょっと、今の音何?」
 おばさんが、揚げ物の途中だろうに、中断して声をかけてきた。
「ちょっと階段落ちかけました」
「やだ、大丈夫なの」
 パタパタとこちらにスリッパを履いたまま走ってくる音がする。
「後ろにショウがいたのでセーフでした。これからも私が先に階段を登るようにします……」
 私がそんな冗談を交えた会話をショウのお母さんとしている間に、ショウはグイっと私の背中を押してまっすぐ立たせてくれた。



 顔近かった……いや、キスしたことあるけども。
 というか、おそらくユウでショウの服の袖を軽く引けばそれだけでキスしてもらえるんだろうけれど。
 ユウキとしてショウとこの距離は初だったからびっくりした。顔真っ赤になってないだろうか、いや赤くなってたら落ちてびっくりしたってことにしよう。
「今のはさすがにヤバかった。ショウを巻きこんで落ちたら、きっとショウのほうが重症だったよね私の下敷きになっただろうし」
 恥ずかしくて、ついついごまかすかのようにいつもよりも饒舌に話してしまう。
 普段から沢山話すほうでよかったと思ったことは今ほどなかった。
「もっと感謝しとけ」
「ははぁ……」
 おふざけで土下座してあがめたてまつってみる。

 私は、いつも見てるショウの異変に気がついた。
 私を支えたほうの手がなんか変だ。
 まさかひねったのか、ストーカー ……いや幼馴染の観察眼なめんなよ。
「左手どうかした? もしかしたら支えるときひねった?」
 利き手ではないし、ショウは部活もしてないけれど、それは手首をひねっていい理由にはならない。
 モンハンでは大事な操作をするときに使うほうの手だし。
「え? あぁ、別に何ともなってない」
 そういって手をぷらぷらとして見せてくれた。
 なら、なんで今不自然だったの?
「私が気にすると思って嘘ついてない?」
 私が気にするんじゃないかって、痛くても隠そうとするタイプってことは、片思い歴長いからお見通しなんだよと腫れたりしてないか確認するためショウの手を取った。


 ショウが拒絶するかのように、やんわりと手を私のところから自分のほうに引き寄せるけれど、怪我してたら大変だしそんなこと気にしてられない。
「もう、怪我してないかの確認大人しくしておれ!」
 変な日本語をかまして、ショウの手首がどうにもなってないか、自分なりに確認する。アレ、気のせいか。
「ホントに痛くない? ハッキリ重かったから手首やったかもって言っていいんだからね。シップとかおばさんにもらってこようか?」
「だから、本当に何ともないって。ほら、もう一狩り行くぞ、尻尾まだはぎとれてないだろお前。取れてたらすぐ装備かえるから、わかるんだよお前」
 あちらも、さすが幼馴染、装備を変えてないことから私がしっぽをまだGETしていないことをお見通しってわけか。


 ショウのキャラクターはいつも通り、罠を変なところに設置することはあったけれど動いていた。
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