悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない

四宮 あか

文字の大きさ
64 / 171
人の恋路を応援している場合ではない

第13話 天気の話

しおりを挟む
 私は天気の話をエドガーとしていた。エドガーは最近ヒロインとも天気の話ばかりしてるせいか、結構天気の話題で間が持つ。
 フォルトはしばらく待ってみたけれど来なくて、代わりに給仕がフォルトに予定ができて今日は来ることができないと伝言の伝言を私達に告げた。
 ちょっとまった、3人で打ち合わせ? と一瞬思ったけれど、フォルトが大きな誤解をしていることにようやく私は気がつく。
 これは、私から恋の相談を受けたフォルトが私とエドガーとの恋を思いっきりアシストしてしまっているではないか。とりあえず、今日を切り上げたら誤解を解かなければ。

 適当に飲み物とお勧めのケーキと一応しょっぱいものを頼んでみるが、エドガーと私はごくたまにお話する程度の仲である。気まずい。
 天気の話題ではいつまでも間を持たせることはできない。
 フォルトどうやって呼び出したの? 練習のときに仲良くなったのかしら。


 私のほうが身分が明らかに高いこと、そして慣れない場ということもあり目の前のエドガーが緊張しているのが伝わる。
 不本意ながら私が上座にいることもあり、ゲストをもてなさなければと公爵令嬢としてのこれまでの教養がなんとかしろと告げる。
「ここのケーキはどれもおいしいんですよ。甘いものは普段食べられるのですか?」
「お恥ずかしい話ですが、私の家は祖父の頃、騎士として爵位をいただけたばかりですので、甘味を楽しむ余裕がなかなかなかったのです。あっ、ですので、今日はおいしいものがいただけると楽しみにしておりました」
 めっちゃ会話盛り上がらない。思いっきり気を使わせている、気まずい。
 頑張れ私とりあえず、フォルトが来ないから解散と出来るメンバーではないから最後までがんばるしかないのだ。

 

 思い出せエドガーのことを。
「エドガー様は風魔法の使い手だとか」
 そう、エドガーは風魔法の使い手なのだ。今回仲良しメンバーから私を外して彼がメンバーに選ばれたのは風魔法が戦闘において使えるからに違いないのだ。断じて私の緑の魔法が戦闘にあまり向いてなさそうだからではない。
「はい、戦闘面においては使いやすい魔法に長けておりました」
 よし、ここで会話を終わらせてなるものか、話を広げろ私。
「攻撃だけでなく、妨害活動などにも使えると伺いました。具体的にどのようなことができるのか聞いてもかまいませんか?」


 風を利用して相手を切り裂く。
 身体強化の際に風をまとうことで早く走れる。
 風向きの調整ができる。
 距離にもよるけれど、人の会話を聞くことや妨害することができる。


 めちゃくちゃ便利だった。特に人の会話の盗み聞きが可能とか今後の危機回避のためにも欲しかった。
 トマト育てる能力とかより欲しかった。


「レーナ様はどのような魔法が使えるのでしょうか?」
 会話の基本、聞かれたら聞き返すきた……。
「私は緑の魔法が使えるのです……」
 緑の魔法のことを口頭で説明しようとしたけれど、しょぼい。

 トマト……育てられます。
 お花咲かせられます。
 きゅうりとかもやったことないですが、たぶん出来ます。



「すぐに新鮮な野菜が手に入るというのは兵糧のことを考えるととても便利ですね。種の状態なら保存も長くききますし、何より軽い」
 思いのほかポジティブに返してくれた!
 シオンだったら今戦争ないからその辺の街で買えるけどねってバッサリ言ったと思う。
 褒められると悪い気はしない。いつも使い物にならなかったと思っていた私にもちょっとだけ居場所ができたような気がする。
「ありがとうございます。私の家系の多くは雷魔法を使えるのですが、私は全然違う魔法だったのです」
「緑の魔法は所有者はあまりいないので、レーナ様はご婚約されてしまうので関係はないかもしれませんが……緑の魔法の所有者は王宮の植物園で働く人が多いので庶民に近い私にすればレーナ様の魔法は当たりですね」
 何!? はずれと思っていたけれど就職先を考えると悪くないのかコレ……。確かに安全面を考慮すると、どこから取ってきたかわからない野菜よりも、目の前で魔力で育てた野菜のほうが毒の混入とか考えると安全かもしれない。
 というか、王宮勤務になれば、金の心配はそこまでしなくてもいいんじゃないの?

 私の目の前に結婚しなくても最悪食っていけるんじゃない? という救いが見えた。

「他にはどのような職についている方がいらっしゃるかわかりますか?」
 エドガーはゲームでも将来騎士になるだけあり、将来働かなくても食っていける貴族とは違い先を見据えているようだ。


 公爵令嬢のレーナ様とはご縁がないでしょうがと前置きされて。
 品種改良に力をいれている商人のお抱えになったりする場合があると教えてもらった。


 もう、途中から進路相談みたくなっていた。
 エドガーは私の質問にいちいち丁寧に答えてくれる。


「レーナ様……公爵令嬢である貴方にこのようなことを質問するのは失礼にあたるのかもしれないのですが。卒業どこかで働くことを考えているのですか?」
「えぇ、もちろんです。せっかく魔力があるのにそれを使わず死蔵させてはもったいがないですから」
 婚約は解消しちゃったし、次の婚約の予定もない。何より金がないと食っていけない。せっかく庶民の大半は使えない魔力が微々たるものだけれど使えるのだからそれを使って就職できるなら就職するしかない。死蔵させておくのは私の中にある魔剣一本で十分である。


 私が将来働いてお金を沢山稼ぎたいことをマイルドにして告げると。エドガーも自分の将来について話してきた。
「私はできれば将来は魔法省で働きたいと考えております」
「えっ? 騎士にはならないのですか?」
 将来的に騎士を目指してたはず、それがどうして魔法省という単語が……。
「あくまで私の将来の夢の話です。現実問題としては、私の父も所属しているので、騎士になる可能性が高いと思います。騎士として忠誠を誓えるのはたった一度だけなのです。
 王は素晴らしい方ですが、年齢的に私が忠誠を誓うならば、今の王ではなく、お姿は拝見したことはありませんが、次の王になると思います。
 あっ、まだ見ぬ次期王もきっと素晴らしい方なのだと思います。でも、我儘ですが君主がどのような方かわからないのに私は忠誠を誓えるほど大人ではなかったのです」
 王家の忠犬アーヴァインということをもしかして思い出したのかもしれない。慌ててエドガーがフォローをいれた。

「なるほど、仕える人によって大きく人生は変わりますから。でもなぜ魔法省?」
「一番倍率の高い職場だから挑戦してみたいのです」
「魔法省に就職することは難しいのですか?」
 私がそう質問すると、エドガーは今日一番饒舌に話をした。
 コネ採用はされず完全実力主義であること。
 希望すれば試験のチャンスが与えられるのではなく、魔法省からお声掛けがないと試験すら受けれない。
 厄介事の鎮静化が主な業務となることから戦争の起こらない今の世で一番危険でやりがいのある仕事らしい。
 御給金もとてもいいそうだ。

 此処だけの話、自分の父と祖父もお声がかからなかった魔法省に声をかけてもらうのがエドガーの夢らしい。
 リオンそんなところで働いてたのに、私の下僕になったのかと一瞬思った。
 魔法省の職員の知り合いもいないけれど、いつか手合わせして自分がどのくらいの実力があるのかも知りたいとエドガーは続けた。

 手合わせを頼めそうな相手にリオンがいるけれど、身分を伏せて学園にいるリオンが魔法省の人間だと教えるわけにもいかないので、彼のやりたいことは叶えてあげることはできないだろう。


 エドガーとのお茶会は就職相談よりだったけれど、思ったよりも楽しく、2時間以上おしゃべりをしてしまった。

しおりを挟む
感想 582

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。