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第四章 白魔導師の日々
決闘?!
フロルが、どうしようと慌てていると、もう一つの声がフロルの背後から響く
「── ほう。お前たち、私の命令が十分よく分かっていないようだな?」
竜騎士団長 アルフォンス・ドレイク侯爵。
「ドレイク様!」
その場にいた竜騎士の全員が、跳ね上がるようにして立ち上がり、瞬時に直立不動の姿勢を取った。
ドレイクは、両手を後に組み、カツカツと音を立てながら、真っ直ぐに立つ竜騎士の前を歩く。そして、鋭い視線を一通り部下へと向けてから、ギルの前で止った。
「・・・リード殿、私の部下が、大変失礼なことをした」
予想どおりの展開に、フロルはほっと胸をなで下ろす。冷静で誰よりも強いドレイク様が、きっとこの場をおさめてくれるに違いない。
そんなドレイクに、ギルも冷静に対応する。
「謝罪を謹んで受け取らせていただきます。ドレイク様。それで、上級士官の貴方が何故ここに?」
ドレイクのような上級士官と下級士官は食事をとる場所が分かれている。本来なら、ドレイクがこんな所にいるはずがないのだ。ドレイクは、ジロリと機嫌悪そうに、竜騎士たちに視線を向けた。
「ここ最近、フロルに対する彼らの姿勢がいささか度を過ぎていると報告を受けたので、様子を見に来た」
思った以上に酷い有様だな、とドレイクが呟いて、明らかに不機嫌そうな様子を見せた。
「・・・他部隊との確執を起こす行為を、俺は一切認めん。今後は、フロルの周りをウロチョロするな。この命令は、竜騎士団全員に向けて発令する。いいな?」
「何故、自分の番と共にいるのがいけないのでしょうか?」
一人の竜騎士が不満げに声を挙げる。
「まだお前の番と決まった訳ではない」
「でも、この中の誰かの番であることは間違いないでしょう」
気色ばんだ他の若い竜騎士も声をあげる。竜騎士たちにとって、番がどれほど大切な存在なのかは、ドレイクも痛いほどよく理解していた。一番、番を待ち望んでいるのはドレイク自身だからだ。
しかし、ドレイクが、そんな私情を仕事に持ち込む訳は一切ない。仕事に関しては、冷徹な男なのだ。
「では、こうしよう」
にやりと不敵な笑みを浮かべると、竜騎士たちは、自分達が上官に向って言い過ぎたことを悟って怯えの色が浮かぶ。ドレイクがこういう顔をする時は、かなり嗜虐的な処罰を考える時だと、部下たちは熟知していた。
「騎馬隊と竜騎士隊での剣の試合を行なう。そこで決着をつけるといい」
「親善試合?」
これには、竜騎士も騎馬隊の騎士たちも、同じように驚きの声をあげる。
立ち会い抜きの私闘は禁止されてはいるが、それがきちんとした試合であれば、城の中で容認される。むしろ、騎士たちの技術の研鑽の場として推奨されているのだ。
「そうだ。強い者が望むものを手にいれる。それが男として当然の掟だ。違うか?」
ドレイクはそう言って、フロルを見て、もう一言付け加えた。
「そして当然のことだが、番となるべき相手の気持ちも聞かねばならない。例え試合に勝ったとしても、フロルがその勝者を自分の番ではないと言えば、それで終わりになる。いいな?」
黙って頷く若い竜騎士たちに、ドレイクはジロリと睨みをきかせた。
「それまでは誰一人として、フロルの周りをうろつくな。これは命令だ」
低い低音で語るドレイクの言葉にはカリスマ性がある。魔王と言っても差し支えないくらいの言葉に、黙って頷くしかない竜騎士から、さらりと視線を移し、ドレイクは、再びギルへと向かい合う。
「リード殿。お互いの剣技を磨く良い機会だと思うが、どうだろうか?」
そんなドレイクに、ギルはにやりと好戦的な笑顔を浮かべる。
「ええ。実に、いい提案だと思いますね。俺の部下たちにとっても竜騎士と手合わせ出来るなど、滅多にない機会です」
(ええっ。試合?)
フロルは驚きながら、ドレイクとギルに代わる代わる視線を向けた。
「大丈夫だ。フロル。俺は負けたりしないからな?」
柔やかに笑うギル様の後で、騎馬隊の騎士たちも、やんやと声をあげる。
「おお、嬢ちゃん。お前の周りに五月蠅く纏わり付く奴らを俺たちが追い払ってやるからな!」
「騎馬隊を舐めんじゃないぞ」
「伊達に外警してる訳じゃないからな。俺たちは魔物とも戦ってるんだ!」
「じゃあ、決まりだな。試合に出たいものは、各自、名乗り出るように。それにしても面白いことになったな。外警騎馬部隊と竜騎士の親善試合か」
くつくつとドレイクが喉の奥で笑いを漏らす。今の竜騎士たちは、竜に頼り、あまり地上戦が得意ではない。外警部隊は、城の外でのあらゆる戦いを心得ている。当然、その敵になるのは、人間ばかりではなく、魔物や魔獣の類いとも剣を交えるのだ。
自分の部下たちが、惨憺たる状況になるのは目に見えているが、奴らの目を覚ますいい機会だとドレイクは思う。
「それじゃあ、試合の日程を調整しておこう」
「よろしくお願いいたします。こちらも、竜騎士たちのように、太刀筋の違う相手と一線交えられるのは願ったりかなったりの機会です」
二人の男は立ち止まり、お互いを見た。どちらも、自信のある様子で、にやりと笑う。
「では、うちのヒヨッコどもを好きなだけ叩きのめしてくれ」
「ええ、伊達に、うちの部隊は、野営先で魔物と戦っている訳ではありませんからね」
「まあ、魔獣ほど簡単にうちの部下は叩きのめされるとは思わんがね」
「ええ、ですから、お互いにとっていい鍛錬になると思います」
フロルは、はらはらしながら、その成り行きを見つめていたのであった。
「── ほう。お前たち、私の命令が十分よく分かっていないようだな?」
竜騎士団長 アルフォンス・ドレイク侯爵。
「ドレイク様!」
その場にいた竜騎士の全員が、跳ね上がるようにして立ち上がり、瞬時に直立不動の姿勢を取った。
ドレイクは、両手を後に組み、カツカツと音を立てながら、真っ直ぐに立つ竜騎士の前を歩く。そして、鋭い視線を一通り部下へと向けてから、ギルの前で止った。
「・・・リード殿、私の部下が、大変失礼なことをした」
予想どおりの展開に、フロルはほっと胸をなで下ろす。冷静で誰よりも強いドレイク様が、きっとこの場をおさめてくれるに違いない。
そんなドレイクに、ギルも冷静に対応する。
「謝罪を謹んで受け取らせていただきます。ドレイク様。それで、上級士官の貴方が何故ここに?」
ドレイクのような上級士官と下級士官は食事をとる場所が分かれている。本来なら、ドレイクがこんな所にいるはずがないのだ。ドレイクは、ジロリと機嫌悪そうに、竜騎士たちに視線を向けた。
「ここ最近、フロルに対する彼らの姿勢がいささか度を過ぎていると報告を受けたので、様子を見に来た」
思った以上に酷い有様だな、とドレイクが呟いて、明らかに不機嫌そうな様子を見せた。
「・・・他部隊との確執を起こす行為を、俺は一切認めん。今後は、フロルの周りをウロチョロするな。この命令は、竜騎士団全員に向けて発令する。いいな?」
「何故、自分の番と共にいるのがいけないのでしょうか?」
一人の竜騎士が不満げに声を挙げる。
「まだお前の番と決まった訳ではない」
「でも、この中の誰かの番であることは間違いないでしょう」
気色ばんだ他の若い竜騎士も声をあげる。竜騎士たちにとって、番がどれほど大切な存在なのかは、ドレイクも痛いほどよく理解していた。一番、番を待ち望んでいるのはドレイク自身だからだ。
しかし、ドレイクが、そんな私情を仕事に持ち込む訳は一切ない。仕事に関しては、冷徹な男なのだ。
「では、こうしよう」
にやりと不敵な笑みを浮かべると、竜騎士たちは、自分達が上官に向って言い過ぎたことを悟って怯えの色が浮かぶ。ドレイクがこういう顔をする時は、かなり嗜虐的な処罰を考える時だと、部下たちは熟知していた。
「騎馬隊と竜騎士隊での剣の試合を行なう。そこで決着をつけるといい」
「親善試合?」
これには、竜騎士も騎馬隊の騎士たちも、同じように驚きの声をあげる。
立ち会い抜きの私闘は禁止されてはいるが、それがきちんとした試合であれば、城の中で容認される。むしろ、騎士たちの技術の研鑽の場として推奨されているのだ。
「そうだ。強い者が望むものを手にいれる。それが男として当然の掟だ。違うか?」
ドレイクはそう言って、フロルを見て、もう一言付け加えた。
「そして当然のことだが、番となるべき相手の気持ちも聞かねばならない。例え試合に勝ったとしても、フロルがその勝者を自分の番ではないと言えば、それで終わりになる。いいな?」
黙って頷く若い竜騎士たちに、ドレイクはジロリと睨みをきかせた。
「それまでは誰一人として、フロルの周りをうろつくな。これは命令だ」
低い低音で語るドレイクの言葉にはカリスマ性がある。魔王と言っても差し支えないくらいの言葉に、黙って頷くしかない竜騎士から、さらりと視線を移し、ドレイクは、再びギルへと向かい合う。
「リード殿。お互いの剣技を磨く良い機会だと思うが、どうだろうか?」
そんなドレイクに、ギルはにやりと好戦的な笑顔を浮かべる。
「ええ。実に、いい提案だと思いますね。俺の部下たちにとっても竜騎士と手合わせ出来るなど、滅多にない機会です」
(ええっ。試合?)
フロルは驚きながら、ドレイクとギルに代わる代わる視線を向けた。
「大丈夫だ。フロル。俺は負けたりしないからな?」
柔やかに笑うギル様の後で、騎馬隊の騎士たちも、やんやと声をあげる。
「おお、嬢ちゃん。お前の周りに五月蠅く纏わり付く奴らを俺たちが追い払ってやるからな!」
「騎馬隊を舐めんじゃないぞ」
「伊達に外警してる訳じゃないからな。俺たちは魔物とも戦ってるんだ!」
「じゃあ、決まりだな。試合に出たいものは、各自、名乗り出るように。それにしても面白いことになったな。外警騎馬部隊と竜騎士の親善試合か」
くつくつとドレイクが喉の奥で笑いを漏らす。今の竜騎士たちは、竜に頼り、あまり地上戦が得意ではない。外警部隊は、城の外でのあらゆる戦いを心得ている。当然、その敵になるのは、人間ばかりではなく、魔物や魔獣の類いとも剣を交えるのだ。
自分の部下たちが、惨憺たる状況になるのは目に見えているが、奴らの目を覚ますいい機会だとドレイクは思う。
「それじゃあ、試合の日程を調整しておこう」
「よろしくお願いいたします。こちらも、竜騎士たちのように、太刀筋の違う相手と一線交えられるのは願ったりかなったりの機会です」
二人の男は立ち止まり、お互いを見た。どちらも、自信のある様子で、にやりと笑う。
「では、うちのヒヨッコどもを好きなだけ叩きのめしてくれ」
「ええ、伊達に、うちの部隊は、野営先で魔物と戦っている訳ではありませんからね」
「まあ、魔獣ほど簡単にうちの部下は叩きのめされるとは思わんがね」
「ええ、ですから、お互いにとっていい鍛錬になると思います」
フロルは、はらはらしながら、その成り行きを見つめていたのであった。
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