20 / 45
剣姫①
しおりを挟む
翌朝、俺は一人、大きなアクビをしながら学生寮の裏にある雑木林を歩いていた。まだ多くの生徒が夢の中にいるであろう時間帯に何故こんなとこにいるのだろうかというと、剣を振るにちょうどいい場所を探していたのだ。
昼間の活気溢れる学園とは違い静かだ。
雑木林の中、さわさわと風に揺れる木々の音、身体を通り抜ける爽やかな風が気持ちいい。
眠気も吹き飛ぶようだ。
風に揺られながら、しばらく歩いていると木々の揺れる音に混じり、シュン、シュンっと風を切り裂く音が聞こえてきた。
俺は音のする方へ歩く。
草葉を掻き分けた先。
林の開けた場所には剣姫がいた。
風を切り裂き、長い髪を靡かせて鋭く剣を振るう彼女は踊っているかのようで、神秘的ですらあった。
俺は彼女の剣舞に、その神秘的な光景に呼吸さえも忘れて見いってしまっていた。
一連の型が終わったのだろう、残心をした後、ゆっくりと剣を鞘に納めた彼女を見て、ほっと息を吐いた。
「見てないで話しかけて来てくれていいのですよ?」
俺が見ていたことどうやら気付かれていたようだ。
「す、すいませんチグサ様。覗き見するつもりじゃなかったのですが」
「構いませんよ、ところでこんな朝早くからどうしてこんなところに?」
「え、ええちょっと特訓しようかと……」
「ああ、私と同じですね、私も毎朝、ここで剣を振るのが日課なんです」
「そうなんですね、すいません、邪魔してしまって」
「邪魔ではありませんよ?それにちょうど良かった、トーノさんと二人っきりでお話してみたかったんです。」
「最近、姫様が明るくなられたのです。いえ、昔から誰に対しても愛想よく接する方だったのですが、どこか陰があったと言いますか、私に対しても一歩、壁を造ってた気がしていたのです。」
「ですが、最近その壁がなくなったと言いますか、私に対しても無邪気な笑顔を見せてくれたり、冗談を言ってくるようになったのです」
アルミ嬢のことを嬉しそうに話してくる。
「ですから、その変化のきっかけになったトーノさんに興味が湧いたのです。」
「俺がきっかけですか?」
「ええ、私の目からですが、姫様は貴方と出会って換わったと思います。それもいい方向に」
俺がアルミ嬢を良い方向に変えたなんてことを第三者から言われるとなんだか照れくさくなる。
「チ、チグサ様は本当にアルミ様のことを嬉しそうに話しますね」
「はい♪姫様は私が仕える主ですし、こんなこと言うのは不敬かもしれませんが友人だとも思っているのです、それに私だけが嬉しそうにしていますか?トーノさんだってとっても嬉しそうですよ」
そんな言葉にキョトンとしてしまった。
「「ふふっ」」
なんだか面白くなって二人して笑いあう。
「俺たちはアルミ様が大好きってことですね」
「ええ♪」
「あのチグサ様、俺に剣を教えてくれませんか?」
「いいですよ」
「ありがとうございます!」
ダメもとで頼んでみたら快く承諾してくれた。女神か。
「教えると言っても、基本的な動作や型、肉体造りに関してはクロエ教官の授業で間に合ってますから……そうですね、私とは立合いをしましょう」
「さあ、構えてください」
俺たちは少し距離を取り剣を正眼に構える。
俺は彼女の剣先を見つめどこからでも対処してやる!と集中する。
「では、行きますよ」
そんな声が聞こえたと思ったら、俺は地面と抱き合っていた。
……見えなかった、一瞬で倒された!
「いつまで寝ているのですか?戦いは終わってませんよ?すぐ起き上がる!」
「はっ、はい!」
俺は勢いをつけて起き上がり彼女の懐へと潜り込んで拳を放つ!
しかし、軽くいなされて尻餅をついてしまった。
もう一度!
再び剣を構えて、彼女を真っ直ぐ見つめる。
「ふふっ」
彼女は微笑んで……
この後、めちゃくちゃコテンパンにされた。
昼間の活気溢れる学園とは違い静かだ。
雑木林の中、さわさわと風に揺れる木々の音、身体を通り抜ける爽やかな風が気持ちいい。
眠気も吹き飛ぶようだ。
風に揺られながら、しばらく歩いていると木々の揺れる音に混じり、シュン、シュンっと風を切り裂く音が聞こえてきた。
俺は音のする方へ歩く。
草葉を掻き分けた先。
林の開けた場所には剣姫がいた。
風を切り裂き、長い髪を靡かせて鋭く剣を振るう彼女は踊っているかのようで、神秘的ですらあった。
俺は彼女の剣舞に、その神秘的な光景に呼吸さえも忘れて見いってしまっていた。
一連の型が終わったのだろう、残心をした後、ゆっくりと剣を鞘に納めた彼女を見て、ほっと息を吐いた。
「見てないで話しかけて来てくれていいのですよ?」
俺が見ていたことどうやら気付かれていたようだ。
「す、すいませんチグサ様。覗き見するつもりじゃなかったのですが」
「構いませんよ、ところでこんな朝早くからどうしてこんなところに?」
「え、ええちょっと特訓しようかと……」
「ああ、私と同じですね、私も毎朝、ここで剣を振るのが日課なんです」
「そうなんですね、すいません、邪魔してしまって」
「邪魔ではありませんよ?それにちょうど良かった、トーノさんと二人っきりでお話してみたかったんです。」
「最近、姫様が明るくなられたのです。いえ、昔から誰に対しても愛想よく接する方だったのですが、どこか陰があったと言いますか、私に対しても一歩、壁を造ってた気がしていたのです。」
「ですが、最近その壁がなくなったと言いますか、私に対しても無邪気な笑顔を見せてくれたり、冗談を言ってくるようになったのです」
アルミ嬢のことを嬉しそうに話してくる。
「ですから、その変化のきっかけになったトーノさんに興味が湧いたのです。」
「俺がきっかけですか?」
「ええ、私の目からですが、姫様は貴方と出会って換わったと思います。それもいい方向に」
俺がアルミ嬢を良い方向に変えたなんてことを第三者から言われるとなんだか照れくさくなる。
「チ、チグサ様は本当にアルミ様のことを嬉しそうに話しますね」
「はい♪姫様は私が仕える主ですし、こんなこと言うのは不敬かもしれませんが友人だとも思っているのです、それに私だけが嬉しそうにしていますか?トーノさんだってとっても嬉しそうですよ」
そんな言葉にキョトンとしてしまった。
「「ふふっ」」
なんだか面白くなって二人して笑いあう。
「俺たちはアルミ様が大好きってことですね」
「ええ♪」
「あのチグサ様、俺に剣を教えてくれませんか?」
「いいですよ」
「ありがとうございます!」
ダメもとで頼んでみたら快く承諾してくれた。女神か。
「教えると言っても、基本的な動作や型、肉体造りに関してはクロエ教官の授業で間に合ってますから……そうですね、私とは立合いをしましょう」
「さあ、構えてください」
俺たちは少し距離を取り剣を正眼に構える。
俺は彼女の剣先を見つめどこからでも対処してやる!と集中する。
「では、行きますよ」
そんな声が聞こえたと思ったら、俺は地面と抱き合っていた。
……見えなかった、一瞬で倒された!
「いつまで寝ているのですか?戦いは終わってませんよ?すぐ起き上がる!」
「はっ、はい!」
俺は勢いをつけて起き上がり彼女の懐へと潜り込んで拳を放つ!
しかし、軽くいなされて尻餅をついてしまった。
もう一度!
再び剣を構えて、彼女を真っ直ぐ見つめる。
「ふふっ」
彼女は微笑んで……
この後、めちゃくちゃコテンパンにされた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる