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三人よると姦しい
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翌日。
だるい体で授業を受けていた。
幸いにも今日は一日中座学である。
ぼやっとする頭で先生の話を聞き流す、この時間は数学であった。
前世で学んだ事なので聞き流しても大丈夫なはず、次の属性魔法理論に備えよう。
横目で昨日俺を搾りとったお姫様と騎士様をみると、何だか二人ともツヤツヤしていた。
「トーノ大丈夫?なんか疲れているけど......医務室いった方がいいんじゃない?」
授業終わり、オトハが心配そうに尋ねてきた。
「オ、オトハ~」
「ど、どうしたのよ、情けない声だして」
オトハの優しさが胸に染みる。ついオトハにひしっとしがみついてしまっていた。
「も、もうっどうしたの?よーしよし」
そんな俺の頭をまんざらでもなさそうに撫でてくれる。心地良い。
「ちょっと、オトハさん、教室でイチャイチャするのはよろしくないのではありませんか?」
「そうですよ、控えるべきです」
しばらくオトハに甘えているとアルミ嬢とチグサ嬢がやってきた。
二人の言葉にオトハは俺の頭を強く抱き締めて勝ち誇ったようにフフッと笑った。
「「む」」
「トーノ、貴方もいつまでそうしているつもりですか?みっともないですよ、離れなさい」
「そうですよ、オトハさんに迷惑ですよ」
「お二人とも気にしないでください、私は迷惑じゃないですから、幼馴染みとしてトーノの面倒は私が見ないと」
ピキリ、アルミ嬢とチグサ嬢からそんな音が聞こえた。
「幼馴染みだからと言って面倒をみる必要なんてありませんよ、人は長い人生の中でたくさんの出会いと別れを繰り返すのですから、トーノにも新しい出会いがあったはずです、きっと新しく出会ったその運命の人がトーノに寄り添うでしょう」
「たまたま産まれた時、家が近かっただけの出会いと自らの意思で進んでいった先での出会いどちらが素敵だと思いますか?」
ピキリ、今度はオトハから。
「積み重ねた時間にはおよびませんよ」
「心配入りません、私たちはまだ学生の身、これから重ねていく時間の方が長いのですから」
ミシリ、俺を包み込むオトハの腕に力が入る。痛い。
しかし、急にその力が緩んだ。
どうしたのだろう?とオトハを見上げると彼女はしきりに自らの髪をさわっていた。そう彼女がいつもつけている髪飾りの辺りをだ。
それを見ていたアルミ嬢は聞いてはいけない、けど聞かずにはいられないといった様子でぐぬぬと唸った後、静かに口を開いた。
「……オトハさん、その髪飾り毎日つけていますね?」
「あ、これですか?トーノが昔、私にプレゼントしてくれたんです、嬉しかったなぁ、これを着けた私に似合ってる、可愛いって言ってくれて、あっ、やだもう恥ずかしいところを」
わざとらしくいやんいやんと首をふるオトハに対して顔をひきつらせた二人。
「ふふふ」「ふふふ」「うふふ」
三人で笑い合いながらも誰一人として眼が笑っていない。
胃が痛いです。
「おーい、次の授業始めるぞ~」
教師の一声に救われる。
もう身体の怠さなど吹っ飛んでいた。
その後も、授業の中休みに昼休みと彼女たちの睨みあいは続いた。
それはまるで達人同士の立合いの如く、視線だけでの攻防。
互いの隙を伺い、一瞬の気の弛みに必殺の一撃を繰り出す。
オトハが受験勉強、俺に付きっきりで教わったことを繰り出すと、チグサ嬢が毎日の朝の鍛練で斬り返す。
隙をついてアルミ嬢のデートのエピソードが二人を襲う。
一進一退の攻防。誰一人として一歩も退かない。
俺の胃にはいるダメージ。
「綺麗だって言ってくれました」
「私も言われましけど?」
「私も」
三人の射抜くような視線が俺を貫いた!
「ヒッ」
「「「トーノ(さん)!」」」
「トーノ!貴方は節操がないのですか!?誰にでもそんなこと言って」
「そうですよ!いつか刺されますよ」
「昔からそうよね、近所の女の子みんなトーノに気があったわ」
「え?トーノさん昔からこんななんですか」
「そうなんですよ!幼年学校の時なんかーー2つ歳上のメリィちゃんなんてーー」
「ええ~!!幼年学校の時って八歳くらいですか?そんな幼いときからトーノはトーノしてたんですか?」
「ええそうなんです!アルミ様!聞いてくださいよーーー」
「あっ、それ私もやられました!」
「そういうとこホントずるいんですよね!悔しいからこっちからドキッとさせようとすると涼しい顔して受け流しますし!」
「そうよ!それにこっちが意図してないことで急に照れたりするのも反則よね!」
……なんか途中から矛先が変わった気がする。
いたたまれない。
◇
そして放課後、彼女たちは三人でカフェに行くらしい。
当然のごとく俺はハブだ。
でもまぁ、三人の親睦が深まったようで何よりです。
だるい体で授業を受けていた。
幸いにも今日は一日中座学である。
ぼやっとする頭で先生の話を聞き流す、この時間は数学であった。
前世で学んだ事なので聞き流しても大丈夫なはず、次の属性魔法理論に備えよう。
横目で昨日俺を搾りとったお姫様と騎士様をみると、何だか二人ともツヤツヤしていた。
「トーノ大丈夫?なんか疲れているけど......医務室いった方がいいんじゃない?」
授業終わり、オトハが心配そうに尋ねてきた。
「オ、オトハ~」
「ど、どうしたのよ、情けない声だして」
オトハの優しさが胸に染みる。ついオトハにひしっとしがみついてしまっていた。
「も、もうっどうしたの?よーしよし」
そんな俺の頭をまんざらでもなさそうに撫でてくれる。心地良い。
「ちょっと、オトハさん、教室でイチャイチャするのはよろしくないのではありませんか?」
「そうですよ、控えるべきです」
しばらくオトハに甘えているとアルミ嬢とチグサ嬢がやってきた。
二人の言葉にオトハは俺の頭を強く抱き締めて勝ち誇ったようにフフッと笑った。
「「む」」
「トーノ、貴方もいつまでそうしているつもりですか?みっともないですよ、離れなさい」
「そうですよ、オトハさんに迷惑ですよ」
「お二人とも気にしないでください、私は迷惑じゃないですから、幼馴染みとしてトーノの面倒は私が見ないと」
ピキリ、アルミ嬢とチグサ嬢からそんな音が聞こえた。
「幼馴染みだからと言って面倒をみる必要なんてありませんよ、人は長い人生の中でたくさんの出会いと別れを繰り返すのですから、トーノにも新しい出会いがあったはずです、きっと新しく出会ったその運命の人がトーノに寄り添うでしょう」
「たまたま産まれた時、家が近かっただけの出会いと自らの意思で進んでいった先での出会いどちらが素敵だと思いますか?」
ピキリ、今度はオトハから。
「積み重ねた時間にはおよびませんよ」
「心配入りません、私たちはまだ学生の身、これから重ねていく時間の方が長いのですから」
ミシリ、俺を包み込むオトハの腕に力が入る。痛い。
しかし、急にその力が緩んだ。
どうしたのだろう?とオトハを見上げると彼女はしきりに自らの髪をさわっていた。そう彼女がいつもつけている髪飾りの辺りをだ。
それを見ていたアルミ嬢は聞いてはいけない、けど聞かずにはいられないといった様子でぐぬぬと唸った後、静かに口を開いた。
「……オトハさん、その髪飾り毎日つけていますね?」
「あ、これですか?トーノが昔、私にプレゼントしてくれたんです、嬉しかったなぁ、これを着けた私に似合ってる、可愛いって言ってくれて、あっ、やだもう恥ずかしいところを」
わざとらしくいやんいやんと首をふるオトハに対して顔をひきつらせた二人。
「ふふふ」「ふふふ」「うふふ」
三人で笑い合いながらも誰一人として眼が笑っていない。
胃が痛いです。
「おーい、次の授業始めるぞ~」
教師の一声に救われる。
もう身体の怠さなど吹っ飛んでいた。
その後も、授業の中休みに昼休みと彼女たちの睨みあいは続いた。
それはまるで達人同士の立合いの如く、視線だけでの攻防。
互いの隙を伺い、一瞬の気の弛みに必殺の一撃を繰り出す。
オトハが受験勉強、俺に付きっきりで教わったことを繰り出すと、チグサ嬢が毎日の朝の鍛練で斬り返す。
隙をついてアルミ嬢のデートのエピソードが二人を襲う。
一進一退の攻防。誰一人として一歩も退かない。
俺の胃にはいるダメージ。
「綺麗だって言ってくれました」
「私も言われましけど?」
「私も」
三人の射抜くような視線が俺を貫いた!
「ヒッ」
「「「トーノ(さん)!」」」
「トーノ!貴方は節操がないのですか!?誰にでもそんなこと言って」
「そうですよ!いつか刺されますよ」
「昔からそうよね、近所の女の子みんなトーノに気があったわ」
「え?トーノさん昔からこんななんですか」
「そうなんですよ!幼年学校の時なんかーー2つ歳上のメリィちゃんなんてーー」
「ええ~!!幼年学校の時って八歳くらいですか?そんな幼いときからトーノはトーノしてたんですか?」
「ええそうなんです!アルミ様!聞いてくださいよーーー」
「あっ、それ私もやられました!」
「そういうとこホントずるいんですよね!悔しいからこっちからドキッとさせようとすると涼しい顔して受け流しますし!」
「そうよ!それにこっちが意図してないことで急に照れたりするのも反則よね!」
……なんか途中から矛先が変わった気がする。
いたたまれない。
◇
そして放課後、彼女たちは三人でカフェに行くらしい。
当然のごとく俺はハブだ。
でもまぁ、三人の親睦が深まったようで何よりです。
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