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ハクレン防衛戦①
しおりを挟む「「「「「【炎槍】!!!」」」」」
「「「「「【氷槍】!!!」」」」」
「「「「「【雷槍】!!!」」」」」
ハイド副団長の指揮のもと城壁の上から遠距離魔法部隊が攻撃魔法の雨を降らしていく。
炎が雷が氷が魔物の群れを屍へと変えていく。
ここまではいい、低ランクの魔物はこれだけであらかた間引ける。
けれども問題はこれでダメージを受けなかった魔物。
「魔法爆撃やめ!前衛部隊でろ!」
城壁の下、城門の内側で待機していた前衛部隊が外へとでる。
そして当初の作戦通り、魔導騎士と高ランクの冒険者がSランクの魔物へと向かう。
残りの騎士と冒険者は他の魔物を受け持つ。
Sランクを抑えたといってもAやBの高ランクの魔物もいる、依然として危機的状況なのは変わらない。
「遠距離魔法部隊、Ⅱ式魔導銃用意!」
魔導銃、王国の騎士団に正式に配備されている汎用型遠距離補助魔道具の1つだ。
長い砲身にそれを支えるための二脚、トリガーとスコープ、青い水晶がついている。
銃という名前がついてはいるがこれは杖だ。
効果は魔力の収束。
込めた攻撃魔法を収束させ、威力と射程を伸ばすための道具である。
先程までは魔法を雨のように降らせ面での攻撃であったが味方の前衛部隊へ被害がでないよう、点での攻撃に移るのだ。
この魔道具を扱うには特別な訓練がいるため学生では扱えない。
俺たちは後方支援へと回った。
負傷をして戦線から離脱してきた戦士たちを支えて救護所へと向かう。
そこは地獄だった、半身が焼けただれた者、片足が欠損した者、多くの人々が痛みに呻き、横たわっていた。
片足がなくなろうと魔法があるセカイだ、時間さえかければまた生やすことだってできるし高性能な義足だってある、けれでもこんな戦場では当然そこまでの治療なんてできない、致命傷をふさぎ、最低限の生命活動を維持させることしかできなかった。
俺たちも医師の指示にしたがい回復魔法をかけていく。
しかし負傷者は増えていくばかりだ。
いくら屈強な騎士といえど敵の数が多い、数の暴力の前に倒れていく。
アルミ嬢は笑顔で戦士たちを励ましながら懸命に回復魔法をかけていた。
けれども血が滲むほどに握りしめた拳から悔しさが痛いほどに伝わってくる。
もうすでに予備戦力として残していた騎士もすべて戦場に投入している。
治療を受けた者のなかで比較的軽傷なものはガチガチにテーピングをして再び戦場に戻っていく、怪我してるんだもう行くなとなんども言いそうになったけれど彼らの瞳は必ず守ると強い意志が込められていてなにも言えなくなってしまう。
ドガン!
都市を震わせる程の爆音と衝撃が轟く。
何事かと急ぎ城壁の上へと上り様子を伺うと僅かにだが城壁の一部に傷がついていた。
攻撃を受けたのか?
結界に覆われた鉄壁ともいえる城壁に傷がつくほどの……
ドガン!
再び先程と同様の衝撃が襲う、今度は見えた、敵の魔物の軍勢の最後列、巨大な魔物からレーザーのような攻撃を受けたのだ。
それは、30メートル以上はある巨大なサソリだった。
普通のサソリと違うのはその大きさだけではなかった、尻尾だ、尻尾が二本あるのだ。
その内の一本、毒針がこちらを向いている、あれから攻撃が放たれたのだ。
「あのデカいサソリを狙え!」
ハイド副団長の指示のもと魔法部隊が、魔導銃によって収束された攻撃魔法をサソリへと放つ!
一筋の閃光が巨大なサソリへと向かいその脳天を貫くだろうと誰もが思った。
しかしその瞬間は訪れなかった。
二本目の尻尾が前に出て、攻撃を吸収したのだ。
こちらの遠距離攻撃が効かない、しかし敵の攻撃は確実に城壁を削る。
「くそったれ」
ハイド副団長の口からそんな言葉が漏れ出るほどに悪い状況であった。
「私が行きます!」
アルミ嬢がハイド副団長の前にでて進言した。
この人は魔物の大群の中を掻い潜って巨大なサソリの前まで行き、斬るつもりだ。
それはあまりにも危険。
俺は思わず「アルミ様!危険です」と言ってしまったけれど、彼女の瞳は揺らぐことはなくて、
「私が行かなくてはなりません、このままなにもしなければ城壁が破られ街に魔物がなだれ込みます、しかしあの魔物に割ける戦力はありません、私以外に、それになにより私は王族なのです、本来誰よりも先頭で魔物を斬り伏せなくてはならないのです、魔物の脅威から人々を守るのが私達の義務なのですから……だから大丈夫です、トーノ、私がなんとかしてみせますから」
そう言って笑って見せた彼女に俺も覚悟を決める。
「俺もお供します」
ただ一言そう告げた。
「もう、仕方ない人ですね」
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