追放された多武器使い、一人で邪神を倒しに行く

秋鷺 照

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4章 邪神のもとへ至る前に

4-5 邪神討伐隊の会議

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「何でアレアはそんなに元気なんだよ」
 ジャンは不満そうに言った。その声には勢いが無い。
 食堂にはフィリーを除く4人が集っている。皆で昼食を食べながら話していた。
「同感だ」
 隊長が唸りながら言う。
「力は平等に得たはずなのに、この治りの差は何だ」
 石板のもとへ行った時、黒い粉のせいで皆息絶え絶えだった。そして、加護を手に入れた後、全員気を失ったのである。アレアは真っ先に意識を取り戻し、フィリー以外を叩き起こして、フィリーを担いで遺跡を出た。近くの街まで歩いた後、口を利く元気も無い隊長たちに代わり、宿をとって、新たな加護の試用までしたのだ。
 何故こうも元気なのか、不思議で仕方なかった。
 アレアは豪快に笑う。
「そんなの、決まってるじゃないか。黒い粉が出てきた時、咄嗟に息を止めたんだよ」
「吸った量の差か……」
 ジャンは納得したように言った後、机に突っ伏した。
「ちょっと、寝る……」
「俺も……」
「情けない男たちだねぇ」
 アレアは苦笑し、ふとレイスに目を向けた。
 レイスは黙々と肉を食べていた。
「レイスはどうだい?」
「…………わたし、は……分霊から遠かったので、あまり吸ってません……」
「じゃあ、元気なんだ?」
「はい。……そうは、見えないかもしれませんが」
「顔色悪いもんねぇ」
 怯えか緊張か、レイスは人と話していると必ず顔を青ざめさせる。
「あーしはその辺を散歩してるから、ゆっくりお食べ」
 そう言って、アレアは外に出た。レイスはホッとして、また肉を食べ始めた。


 夕方、食堂に邪神討伐隊の5人が揃った。
「昨日は危なかったね。加護……自己の治癒が無ければ全滅していたよ」
 アレアが話し出す。
「分霊であれだから、邪神はもっととんでもないことをしてくるに違いない。加護じゃどうにもならない、即死するような攻撃とかね。そこで、だ。改めて確認しておきたい。皆、まだ邪神に挑む気はあるかい?」
「当然!」
「何を今更」
「無論」
 ジャン、フィリー、隊長が同時に答えた。レイスも大きく頷いている。
 想像以上に邪神が強くても、倒しに行かねばならない。どんなに怖くても、逃げ出すことは許されない。断る権利はあったのに、隊に入ると決めたのだから。
「よし。それじゃ、作戦会議を始めようか」
「何でアレアが仕切ってんだ?」
 ジャンが怪訝そうに尋ねた。それに対し、隊長が平然と答える。
「俺が頼りないからだ」
「おお、ついに開き直ったか……」
「ちょっと、話を脱線させないでよ」
 フィリーが咎め、作戦会議が始まった。
 最初から全員で挑むのか、何人かに分かれて様子を見るのか。分霊を相手にした時と同じような戦い方が有効なのかどうか。邪神がどんな攻撃をしてくるかの予想。
 話はなかなかまとまらず、会議は長時間続いた。
「もうさ、行き当たりばったりで良くね?」
 ジャンが投げやりに言った。他4人から咎めるような視線を受け、補足する。
「相談したところで、邪神についてハッキリ分かる訳じゃねーし。話し合いに時間使うより、休むか鍛練するかした方が良い気がしてきた」
「……じゃあ、様子見するかどうかだけ決めようか」
 アレアが嘆息しながら言った。
 様子見についてこれまで出た意見は、「全員で挑むのは一気に全滅しそうでリスクが高すぎる」「様子見役は囮のようなもの。仲間を囮にしたくない」「戦力を小出しにするのは悪手ではないか」などだ。どの意見も尊重するに足り、だからこそ決めかねる。
 どちらが良いかは答えが出ない。なら、好みで決めるしかない。
「どっちかに手をあげて。様子見ありが好きな人。……様子見なしが好きな人」
 2対3。様子見はしないことに決まった。
 こんな決め方で良いのだろうかと、アレアは不安だった。仕切ってみたは良いものの、意外と荷が重い。
 不意に隊長が呟いた。
「ノーシュがいれば、もっと楽に戦えたのだろうか」
 昨日の分霊との戦いのことを言っているのだと皆が理解するまでに、少しの間があった。ジャンは「ノーシュなぁ」と口の中で転がし、
「そういや、あいつの実力は分からずじまいか。おいらたちと同程度には強いだろうけど。……生きて帰れたら、ノーシュに一言謝りたいな」
 と天井を見上げて言った。フィリーは神妙な顔をする。
「……そうね」
「それで、おいらも武器屋開いて、ノーシュに格安で武器を卸してもらうんだ」
「どんだけ武器屋やりたいのよ! ……真面目に捉えた私が馬鹿だったわ」
 呆れたように言うフィリー。2人の会話に、隊長とアレアが笑い声を上げる。
 相変わらずの緊張感の無い空気は、5人ともにとって心地良いものだった。




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