美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さくら

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第4話 異世界での初めての朝


 夜明け前、鳥の声で目が覚めた。柔らかな羽毛布団に包まれたまま、しばらく天井を見つめる。淡いクリーム色の天井には、花の模様が彫り込まれていた。昨日の夕暮れ、レオンと共に都へ向かう途中で泊まったのは、彼の私邸――王都郊外にある白い石造りの屋敷だった。旅の埃を落とすように湯を浴び、ふかふかの寝具に横たわった瞬間、眠りに落ちてしまったのだ。
 けれど、眠りの奥でも、どこか現実味がなかった。窓から差し込む朝の光がカーテンを透かし、薄い金色を部屋に散らしている。ああ、本当に異世界で朝を迎えたんだ――そう思うと、胸の奥がふわりと浮くような、不思議な気分になる。

 ベッドを出て、部屋の中央の鏡の前に立つ。昨夜、クララが用意してくれた薄桃色の部屋着を着ている。肌触りは驚くほどなめらかで、首筋まであたたかい。鏡の中の自分は、見慣れた顔のはずなのに、どこか少し違って見えた。頬の血色が良く、目の奥が柔らかい。
 少し笑ってみると、鏡の中の“ミナ”も笑う。その顔を見て、胸がほんの少し痛くなった。昨日までの私は、笑顔なんて最後にいつ浮かべたかも思い出せなかったのに。

 そのとき、扉を軽く叩く音がした。
「ミナさん、朝食のご用意ができました」
「クララ?」
「はい。殿下もすでにお目覚めです。お支度をお手伝いしますね」
 クララが入ってきて、素早くカーテンを開ける。窓の外には、青い空と、整えられた庭園が広がっていた。花壇には薄紫の花が咲き、噴水の水音が涼やかに響いている。
「すごい……こんな庭、初めて見ました」
「ルーベリアでは“朝を迎える庭”と呼ばれるんです。夜明けとともに花が開くよう、魔法師たちが調整しているんですよ」
「魔法……」
 その言葉に、思わず息を呑む。昨日まで、異世界に魔法があることを頭では理解していたけれど、こうして“当たり前”のように語られると、まるで童話の世界にいるような気分になる。

 クララに髪を整えてもらい、薄いブルーのドレスを着せてもらう。軽やかな布が肌を滑り、裾が空気を含んでふわりと揺れる。
「わあ……」
「殿下がお選びになったんですよ」
「レオンさんが……?」
 胸の奥がまた少し熱くなる。鏡に映る自分は、昨日の自分とはまるで違う。まるで、少しだけこの世界の“誰か”になれたような気がした。

 クララに案内されて、階下の食堂へ向かう。途中の廊下には、古い絵画や花瓶が並び、壁には光を反射する水晶灯が等間隔に灯っている。すれ違う使用人たちは皆、柔らかく微笑み、軽く会釈をしてくれた。
 食堂の扉を開けると、朝の光がいっぱいに差し込んでいた。大きな窓の外には庭が広がり、花びらが風に舞っている。白いクロスのかかった長いテーブルの端に、レオンが座っていた。

「おはよう、ミナ」
 レオンは顔を上げ、微笑む。その笑顔は昨日よりも柔らかく見えた。
「おはようございます、レオンさん」
「昨夜はよく眠れたようだな」
「はい。ベッドがあまりにふかふかで、途中で夢を見てるのかと思いました」
「そうか。それならよかった」

 テーブルには色とりどりの料理が並んでいた。焼きたてのパン、香草をまぶした卵料理、淡い緑のスープ。そして、見たことのない果実が皿に盛られている。
「これ……食べられるんですか?」
「もちろん。ルーベリアで“朝の果実”と呼ばれる。少し酸っぱいが、体を目覚めさせる力がある」
 レオンがナイフで果実を半分に切り、私の皿に分けてくれる。透き通った赤い果肉が輝いていて、ほのかに甘い香りが漂った。口に含むと、少し酸味があって、それが心地よい。

「どうだ?」
「おいしいです。すごく……元気が出る味」
「それはよかった。ミナには元気でいてほしいからな」

 そんな何気ない言葉に、鼓動が跳ねる。私は思わず視線を逸らした。レオンは気づいていないふうに、静かにスープを口に運ぶ。
 どこかで、風鈴のような音が鳴った。庭の噴水が太陽を受けてきらめいている。

「この屋敷、すごく素敵ですね」
「気に入ってくれたなら嬉しい。この屋敷は、母上が建てたものだ。今は私が管理している」
「お母さまが……」
「優しい人だった。植物が好きでな、いつも庭で土を触っていた」
 レオンの声が少し遠くを見ているような響きを帯びる。私はそっと彼の顔を見た。穏やかで、けれどどこか寂しげな表情。
「私も、そういう人になりたいです。誰かを、優しく包める人に」
 思わず口にすると、レオンが目を細めた。
「ミナなら、もうそうなっていると思うが?」
「えっ」
「昨日、町で子どもたちが君を見て笑っていただろう? あれは偶然ではない。人の心は、君を見ると安心するんだ」
 そんなことを言われて、頬が熱くなる。
「……そんな大げさな」
「大げさじゃないさ」
 レオンの微笑みは、どこまでも優しかった。

 朝食を終えたあと、彼は立ち上がり、窓の外を見た。
「今日、都へ行く前に一か所寄りたい場所がある。ミナも一緒に来てほしい」
「どこですか?」
「温室だ。母上が愛していた花々を、今も世話している」
「……行きたいです」

 私が答えると、レオンは嬉しそうに頷いた。その微笑みを見て、胸の奥で小さな灯がまたひとつ、静かに灯った。

 ――そうだ、きっとこれが始まりなんだ。

 異世界で迎える初めての朝は、驚くほど優しくて、あたたかかった。




 レオンに導かれて屋敷の奥へ進むと、ガラス張りの天井から朝の光が差し込む温室があった。外の空気よりも少し湿っていて、花と土の匂いがやさしく混ざり合っている。蔦の絡まる柱の間には色とりどりの植物が咲き誇り、花弁が朝露をまとってきらめいていた。

「すごい……まるで楽園みたい」
「母上が生前、最も愛した場所だ。今も季節ごとに庭師たちが手入れをしている」
 レオンが温室の奥を指差す。そこには淡い青の花が群れ咲いていた。
「“エルスの花”だ。この国では“心を癒す”と信じられている。君に見せたかった」
 私は近づき、花弁に触れる。ひんやりとした感触のあと、指先にやわらかな光がにじんだ。
「……光ってる」
「やはりな」
 レオンの声が少し驚き混じりだった。
「母上もこの花に触れると光が宿った。癒しの力を持つ者だけが反応する。やはり、君は特別だ」

 心臓が跳ねた。まるで、花が私を選んでくれたみたいに感じた。けれど、それよりも驚いたのは、レオンの瞳に浮かんだ光だった。金色の瞳がわずかに揺れ、感情の波が隠しきれずに滲んでいる。

「……昔、母上が病で倒れたとき、俺は何もできなかった。王家の魔法師たちも治せなかった。その時から“癒し”という力を探してきたんだ」
「レオンさん……」
「君に出会ってから、ようやくその意味がわかった気がする。癒しとは、魔法ではなく、心が触れることなのかもしれない」

 彼の言葉が温室の空気に溶ける。花の香りと混ざり合い、胸の奥に広がっていく。
 私はゆっくりと笑った。
「……私もそう思います。レオンさんに助けられてから、不思議と怖くなくなりました」
「それは君の中に強さがあるからだ」
「違います。きっと、あなたが優しいからです」

 レオンはわずかに目を見開いたあと、微笑んだ。
「そう言われると、救われるな」
 その笑顔は、昨日まで見たどんな景色よりも美しかった。

 温室の中を歩きながら、私はひとつひとつの花に目を向けた。紫の花、橙の実、銀の葉を持つ木。どれも、太陽の光を受けて輝いている。まるで、ここだけ時間の流れが穏やかになっているみたいだった。

「ミナ、君がこの国に来たのは偶然じゃない」
「え?」
「運命は、誰かを必要とする場所に人を導く。俺はそう信じている」
 その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。昨日までの私は、無能と呼ばれ、居場所を失っていた。けれど今、誰かが“必要”と言ってくれている。その違いが、涙が出るほど嬉しかった。

 レオンが私の方へ歩み寄り、手を差し出す。
「行こう。都が待っている。君の居場所を見せたい」
「居場所……」
「そう。誰にも奪われない、本当の居場所だ」

 その言葉に導かれるように、私は彼の手を取った。温かく、頼もしい感触が掌に広がる。
 温室の扉が開き、光が差し込む。風が花の香りを運び、青空がまぶしく広がっていた。

 ――あの時の涙も痛みも、全部この瞬間のためにあったのかもしれない。

 私は心の中で小さくつぶやき、レオンと並んで一歩を踏み出した。
 遠くで鐘の音が鳴り、白い鳥が空へ舞い上がる。
 新しい世界が、ゆっくりとその幕を上げていくのだった。



 温室を出ると、風が頬を撫でた。外の空気は澄んでいて、遠くで鐘の音が鳴っている。屋敷の庭はどこまでも続き、白い石畳の道の先には、小さな門と見張り台が見えた。空の青が深くて、太陽の光がすべての葉に金の縁を描いていた。

「ここから都までは半日ほどだ。途中の丘を越えると、一面に王都ルーベリアの街並みが見える」
 レオンがそう言って、軽く笑う。私は頷き、眩しさに目を細めた。
「昨日までとはまるで別の世界みたいです」
「それは君の目が新しい世界を見ているからだ」
 穏やかに言う声に、思わず胸が熱くなる。

 クララが馬車の準備を整えていて、私たちは庭を横切って向かった。途中、青い鳥が枝から枝へ飛び移り、花びらがひとひら、私の肩に落ちる。触れると、花弁はすぐに溶けるように消えた。
「今の……?」
「“ルーベリアの精花”だ。幸福を運ぶ花と呼ばれている」
「幸運の……花」
「きっと、君を歓迎しているんだろう」
 レオンの言葉に、胸の奥がやさしく弾んだ。

 馬車に乗り込むと、出発の合図とともに石畳の上を静かに進み出す。屋敷の門が遠ざかっていく。私は窓の外を見つめながら、心の奥に芽生えた小さな決意を確かめた。――もう、誰かの陰に隠れるだけの自分ではいたくない。レオンの隣で、この国で、自分なりに生きたい。

 道はやがて緩やかな丘へと続き、頂上に差しかかるころ、視界が一気に開けた。
 そこに広がっていたのは、巨大な都――王都ルーベリア。
 幾重にも重なる屋根の群れ、白い尖塔、輝く水路、そして中央にそびえる宮殿の塔。そのすべてが朝の光を浴びてきらめいていた。街を囲む川が鏡のように反射し、風に乗って鐘の音がかすかに届く。

「……きれい」
 言葉が自然にこぼれた。息を吸うたびに胸が満たされていく。
「これが君の新しい故郷だ、ミナ」
 レオンの声は静かで、それでいて力強かった。

 馬車が坂を下り、街の門へ近づく。衛兵たちが整列して敬礼し、レオンは軽く手を上げて応える。門をくぐると、街の中は光と色で溢れていた。
 道端ではパン屋が香ばしい香りを漂わせ、子どもたちが笑いながら追いかけっこをしている。露店には果物や布、香水の瓶が並び、人々の表情には穏やかな生活の温もりがあった。

「ここが……私の、居場所……?」
「そうだ。君のための場所だ」
 レオンの言葉はまるで魔法のようだった。胸の奥がじんわりと熱くなり、視界が少し滲む。
 馬車はゆっくりと進み、やがて高台に建つ一つの建物の前で止まった。白い壁に緑の蔦が這い、窓には青い花の鉢が並んでいる。外観は城というよりも、静かな別邸のようだった。

「ここが、私の屋敷だ」
 レオンが扉を開け、私を中へ導く。
 廊下には淡い光が差し込み、木の香りが広がっている。奥からクララが笑顔で現れ、軽く会釈した。
「ようこそ、ミナさん。これからここでお過ごしください」
 胸の奥がじんと温かくなる。
 レオンが少し笑って、私の方を向いた。
「君に頼みたいことがある」
「……頼みたいこと?」
「この屋敷を、君の色で満たしてほしい。花でも、香りでもいい。君がここにいて、君らしく笑える場所にしてほしい」

 その言葉に、涙がこぼれそうになる。
「私に、そんなことができるでしょうか」
「できるさ。君の笑顔があれば、どんな場所でも変わる」

 外から春の風が吹き込み、カーテンがふわりと揺れた。
 この屋敷が、私の新しい家になる――そう思った瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。

 私は深く息を吸い、微笑んだ。
「はい。頑張ります、レオンさん」
 レオンはその笑顔を見て、優しく目を細める。
「……その言葉を聞けて嬉しい」

 窓の外では、噴水の水が陽を受けて虹を作っていた。
 異世界での新しい朝。
 私は確かに、この世界の空気の中で、生き始めていた。


 夕暮れが再び街を包み始めたころ、レオンの屋敷のバルコニーから眺める王都は、まるで宝石の海のように輝いていた。石畳の通りには灯りがともり、オレンジと青のあいだの空を背景に、塔の先端にある鐘楼が淡い光を受けて浮かび上がっている。遠くから聞こえる音楽と、屋台の笑い声。どれもが心地よく耳に響く。

「……これが王都ルーベリアの夜景か」
 思わずつぶやくと、背後で静かな足音がした。
「気に入ったか?」
「はい。綺麗すぎて、夢みたいです」

 レオンが隣に立つ。夜風が金色の髪を揺らし、肩にかかる布をそっと整えてくれた。
「昼の街もいいが、夜の方が好きだ。人の営みが光になって見える。静かだが、生きている音がするだろう?」
「……たしかに」
 風が吹き抜け、灯りがまたたく。彼の言葉が胸に落ちて、心の奥に小さな火が灯る。

 そのまま二人で黙って景色を見ていた。沈黙なのに、居心地が悪くない。むしろ、穏やかな波の上に浮かんでいるような心地だった。

「ミナ」
「はい?」
「明日から、屋敷の暮らしに慣れていくといい。必要なものはクララに言えば手配する」
「ありがとうございます。でも……私、何もできませんよ? 家事も、こちらの作法も、全部知らなくて」
「構わない。君には“癒やす”という力がある。無理に何かをしようとしなくていい」

 レオンはバルコニーの手すりに肘をつき、夜空を仰ぐ。その横顔を見ていると、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「癒やす力って……本当に私にそんなものがあるんでしょうか」
「ある。証拠はもう見た。温室の花が反応しただろう?」
「でも、あれは偶然で……」
「偶然じゃない。あの花は人の心にしか応えない。光ったということは、君が心を開いてくれた証だ」

 彼の声は静かで、どこか祈るようだった。
「この国には、長い間“癒し手”が現れていない。人々は癒やしの存在を伝承でしか知らない。……だからこそ、君が来たのは運命だと感じている」
「運命……?」
「そう。神が導いたのかもしれない。君は、この国に必要な人だ」

 あまりにもまっすぐな瞳で言われて、息が詰まる。頬が熱くなり、指先が震える。
「……そんなこと、言われたことないです」
「なら、俺が最初に言う。君は無能じゃない。君の存在そのものが、誰かを救う」

 夜風が二人のあいだを通り抜け、カーテンがふわりと揺れた。どこかで鳥の声がして、月が雲の切れ間から顔を出す。

「ミナ」
「……はい」
「明日、都の中央にある神殿へ行こう。正式に君の“癒し”の力を測定してもらう。古の神官たちが、力を見極める儀式を行っている」
「神殿……」
「少し怖いかもしれないが、俺がそばにいる。心配はいらない」

 その言葉に、胸の中の不安が静かに溶けていく。
「……わかりました。行ってみます」
 そう答えると、レオンが安堵したように微笑んだ。
「ありがとう。君の勇気に感謝する」

 沈黙がまた訪れた。けれど、今度は先ほどよりも柔らかい。私は手すりに両手を置き、街の光を見下ろす。
 王都の灯りが、星のように瞬いている。
 昨日まで、何もできないと笑われていた自分が、いまこうして異世界の王子の隣で未来を語っている――信じられないようで、でも確かに心が動いていた。

「ねえ、レオンさん」
「なんだ?」
「もし……私が本当に癒しの力を持っていたら、その力で誰を癒したいですか?」
 レオンは少し驚いたように私を見たあと、ゆっくりと目を細めた。
「まずは君自身を、だろうな」
「え……」
「誰かを癒すには、まず自分が満たされていなければならない。だから君が笑うことが、この国の癒しになる」

 言葉を返せなかった。胸の奥で、何かがほどける音がした。頬を伝う風が心地よく、目を閉じると涙が出そうになった。

「ありがとう、レオンさん」
「礼を言うのは俺のほうだ。……君に出会えて、救われた」

 視線が絡む。静かな夜、言葉が消えても、心が会話を続けているようだった。
 遠くでまた鐘の音が鳴る。月光が二人を包み、白い影を足元に落とした。

 そのとき、レオンが一歩近づき、そっと私の肩に手を置いた。
「君がこの国に来てくれて、本当に良かった」

 その声は、あたたかく、優しかった。
 私はただ頷く。
 胸の中の小さな灯が、静かに、けれど確かに燃え始めていた。

 夜風が再び吹き抜け、バルコニーの花が揺れる。香りが漂い、星がひとつ、流れた。
 異世界での初めての夜は、こんなにも優しく、穏やかに更けていった。
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