私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら

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 夜空に、無数の星が浮かんでいた。
 風は静かで、村の灯りが遠くにちらちらと揺れている。
 私は丘の上に立ち、月明かりに照らされた花畑を見つめていた。
 白い花々がそよ風に揺れ、あの時の“聖花”と同じように光を帯びている。

 ――この景色を見るたびに、思い出す。
 “無能”と呼ばれて泣いた日も、“聖女”として立ち上がった日も、全部この丘から始まったのだ。

 後ろから、優しい声がした。

「またひとりでここに来てたのか」

 振り向くと、リオネルが手にランタンを持って立っていた。
 彼の表情は、いつものように穏やかで、どこかあたたかい。
 その光に照らされた姿は、まるで私を導く灯火のようだった。

「眠れなかったんです。……今日は特別だから」

「そうだな。明日で、あの事件からちょうど一年だ」

「早いですね。本当に、あっという間でした」

 私は微笑みながら空を見上げた。
 あれから一年。
 王都では“真の聖女”として認められ、辺境では“光のミリア様”なんて呼ばれるようになった。
 けれど、そんな称号よりも、私は――この村の“ミリア”でいられることが何より嬉しかった。



 リオネルが私の隣に立ち、静かに夜空を見上げた。
 月明かりが銀の髪を照らし、まるで星の光をまとっているようだった。

「おまえが来てから、村も人も変わった。……俺自身もだ」

「え?」

「昔の俺は、ただ戦うことしかできない男だった。守るより、奪うことのほうが得意でな」

 リオネルが小さく笑う。
 その笑い方に、ほんの少しだけ寂しさが混じっている。

「でも、あの日、おまえが光を放ったとき思ったんだ。――ああ、俺はもう剣じゃなく、誰かの笑顔を守るために生きたいって」

 胸がじんと熱くなる。
 彼の言葉の一つ一つが、心の奥まで響いていく。

「……リオネルさん」

「ん?」

「私ね、最初にこの世界に来たとき、すごく怖かったんです。
 誰も信じられなくて、自分の力も怖くて。
 でも今は、こうして笑っていられる。あなたがそばにいてくれたから」

 その言葉を口にした瞬間、涙がこぼれた。
 リオネルがそっと私の髪を撫でる。

「泣くな、ミリア。おまえの涙は、世界を優しくしすぎる」

 思わず笑ってしまう。
 彼も笑った。
 夜風が吹いて、ふたりの髪を撫でた。



「ねぇ、リオネルさん」

「なんだ」

「この先も……ずっと一緒に歩いてくれますか?」

 言った瞬間、胸が高鳴った。
 けれど、リオネルは迷いもなく頷いた。

「もちろんだ。どんな場所でも、どんな夜でも――おまえの光がある限り、俺は隣にいる」

 その言葉に、視界が滲んだ。
 私はそっと彼の胸に額を寄せた。

「ありがとう」

「こちらこそ。……おまえがいなければ、俺はもうとっくに消えてた」

 彼の声が低く響き、胸の奥に染み込む。
 私はその鼓動を聞きながら、手を伸ばして彼の手を握った。
 彼も握り返してくれる。その手の温もりが、まるで永遠の約束のようだった。



 その時、空に流れ星がひとつ走った。
 尾を引く光が夜空を裂き、まるで世界そのものが祝福しているようだった。

「願い事を」

「え?」

「今の流星に願えば、きっと叶う」

「……叶うなら」

 私は小さく笑って、言葉を続けた。

「どうか、この幸せが長く続きますように」

 リオネルが頷き、同じ言葉を重ねた。

「俺も、同じ願いだ」

 二人の声が重なり、夜の静寂に溶けていく。
 ネックレスの中の光が、また柔らかく明滅した。



 やがて夜が明け、東の空が金色に染まる。
 鳥の声が聞こえ、花畑が朝露に輝く。
 リオネルが微笑みながら言った。

「ほら、また新しい朝だ」

「はい。……この光景が、ずっと続きますように」

 私は彼の腕に自分の手を絡めた。
 彼も私の肩を抱き寄せる。
 世界がゆっくりと動き出す。

 ――そして、朝日が昇る。

 その光が二人を包み込み、丘の上の白い花々が一斉に咲いた。
 まるで聖なる奇跡が、もう一度この世界に訪れたかのように。

 私は笑い、リオネルも笑った。
 風がやさしく吹き抜け、金色の光が未来へと伸びていく。

 聖女として。
 ひとりの女性として。
 そして、愛する人と共に生きるただの人間として。

 私はこの世界で、確かに“生きている”。

 ――光はまだ、終わらない。
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