壊れた王のアンビバレント

宵の月

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無言の夜 ★

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 高くあげさせた尻。指で押し広げた秘裂が、潤んでいる光景をカーティスは侮蔑の視線で眺めた。

 「兄様……お願い……話を……!!ああっ!!」

 アルヴィナの悲鳴を無視して、カーティスは血管が浮き出て怒りに猛った怒張をあてがった。
 愛液を含んだ肉襞が、押し入って隘路を進む怒張に媚びて絡みつきながら蠕動し歓迎してくる。
 脊髄を這い上がる熱く蕩ける快楽が、よりカーティスの憎悪を煽る。
 根本まで咥え込ませ、アルヴィナの肩に両手をかけた。体重をかけて華奢な肩を寝台に押し付ける。

 「兄様……お願い……」
 
 か細い懇願を振り切るように、一切の加減も遠慮もせず抽挿を開始する。

 「あぁ!!やぁ!兄様!あっ!あっ!あっ!」

 じゅくじゅくと潤んだそこは、犯すたびに蜜を溢れさせ、絶え間なく粘膜を擦り立てる怒張に掻き出された、泡立つ蜜を垂れ流した。
 
 「ああ!あぁ!兄様!兄様!ああ!いやぁ!」

 押し付けられてくぐもる嬌声は、間違いようもなく甘く翻っている。カーティスを受け入れるそこも、ぐにゅぐにゅと快楽に身悶え、カーティスの怒張に絡みつく。
 カーティスはそれを嘲った。生存が本能に刻まれた欲求なら、快楽もまた否応なく植え付けられた本能で、カーティスが教え込んだ快楽にアルヴィナは間違いなく堕ちている。
 屈辱的に犯されていても、甘く啼き中は媚びてうねる。

 「あぁ……兄様!待って!待って!ふっ!ああ!」

 慄くような快楽に歯を食いしばり、カーティスは美しい肢体に乱暴に律動を繰り返す。結合する水音と、肉を叩きつける音が室内に響き渡った。
 身体の下で成すすべなく啼く、アルヴィナは甘く美しい。この女を犯し、穢し、壊したいと願わない男はいない。

 「あぁ……!もう……だめ!だめ!いや!あぁ!あぁ!」

 切実なアルヴィナの悲鳴が上がり、カーティスを咥え込むそこが締め付けを増す。痙攣するように蠕動し始める肉壁に、骨髄に痺れるような快楽が駆け上がる。

 「ああああぁぁぁーーーー!!」

 押さえつけた身体が絶頂し、突っ張るように強張った。カーティスを飲み込んだそこは、搾り取るように波打ち、カーティスの射精を促す。

 「ぐぅっ………!!」

 その愉悦に堪えきれず、カーティスは息を詰め最奥に白濁を吐き出した。緩く腰を穿ちながら吐き出した白濁で、隙間なくアルヴィナを穢す。

 「あぁ……あぁ……はぁ……はぁ……」

 余韻に甘く声を震わせるアルヴィナに、心が震えカーティスは唇を噛み締めた。
 もう戻れずもう許せない。欺き裏切られた絶望が、アルヴィナの言葉を拒否していた。

 「あっ!あっ!待って!待って!お願い!兄様!兄様!」

 怒りが再びカーティスを猛らせる。再びアルヴィナを犯し始めるカーティスに、アルヴィナは悲鳴を上げた。
 空が白むまでカーティスはアルヴィナを犯し、部屋を出ていった。
 
 「兄様……」

 あの日以来、カーティスは王妃の閨に行っていた日にだけ、アルヴィナを抱きに来るようになっていた。
 ただ抱き、気が済むと出ていく。言い訳も謝罪も全てを拒み、ただアルヴィナを身篭らせるためだけに訪れる。

 カーティスは一度も顔を見ることも、名前も呼ぶこともしなかった。それでも少しずつ知った過去が、アルヴィナにカーティスを呼び止めさせる。
 カーティスの望んだ結末が何なのか。その答えが聞きたかった。

 
※※※※※
 
 
 白亜宮の中庭で向かい合うエクルドが、何通かの封書を差し出した。

 「玉璽文書のおかげで、特別法が執行できます。影響が大きい所から順に手続きを進めています。」
 「そう……」

 ぼんやりと封書を受け取ったアルヴィナの様子に、エクルドが口を開きかけた。

 「アルヴィナ妃。リーベンからの返信です。」

 キリアンの声に顔を上げたアルヴィナが、差し出された封書を受け取った。俯いて封書を見つめるアルヴィナに、エクルドとキリアンは顔を見合わせた。
 憔悴した様子に何も言葉が見つからず、エクルドは結局黙り込む。

 「……ノーラは元気でいますか……?」
 「はい。ネロと共にキロレスの医療記録をログナーク仕様に書き起こしています。」
 「そうですか……あの、兄様は……」
 
 口籠ったアルヴィナに、エクルドは隣接する翠蒼宮にちらりと視線を投げかけた。窓の人影にため息を噛み殺す。

 「この件が恙無く完了したら、どこかの離宮で過ごすことを許してくださると思いますか……?」
 「それは……」
 「謝罪どころか目を合わせることもできない……それに……」

 アルヴィナは泣くのをこらえるように顔を歪めた。エクルドとキリアンは目を見開いて、慰めを口にしようとするも、その前にアルヴィナは立ち上がった。
 
 「………部屋に、戻るわ……」

 力なく笑みを浮かべてアルヴィナは戻っていき、エクルドはもう一度翠蒼宮を振り返った。人影が窓から離れ、再びため息を吐き出した。

 「……キリアン卿、何とかしてください。」
 「…………」
 「………救済政策の件は陛下に話されましたか?」
 「……いえ……」
 「ではそれも合わせて、私が話をしてきます。」
 「……ですが。」
 「このままにしておけば、大詰めを前に何もかも不意になってもおかしくない。」
 
 戸惑ったように瞳を揺らしたキリアンに、エクルドは眉根を寄せた。

 「アルヴィナ妃がいなければ、私は反旗を翻していました。」
 「……やはり、そうでしたか……今も、ですか……?」
 「………今は……不忠を詫びねばならないと思っております。」
 
 キリアンはホッと顔色を緩めた。その上で敢えてエクルドに向き直った。

 「………もし婚姻誓約の内容が分かったとしても、心が変わることはなかったのですか?」

 エクルドはゆっくり首を振り、キリアンを見据えた。

 「貴方にもおわかりでしょう。婚姻誓約の内容を明かし、解毒薬を公表。キロレスの医術開示。それでも碁盤は覆らなかったと。」
 「………そう、ですね。」
 
 キリアンは拳を握りしめた。

 「粛清の不信は利益では取り戻せない。臣民の心を取り戻すには、それでは足りなかった。陛下にも分かっていたはずです。」
 「カーティスは……」

 その先を言葉にすることはできず、キリアンは俯向いた。カーティスは完全な対策を、用意することはしなかった。

 「……疲れて、いらしたのでしょう。」

 エクルドのぽつりと落とした呟きに、キリアンの瞳が涙で潤んだ。カーティスも限界だったのだと理解はできても、胸が詰まった。
 エクルドは慰めるようにキリアンの肩を叩いた。

 「キリアン卿は懸命に力を尽くしておりました。我々が追い詰めたのです。詫びねばなりません。」
 「………」
 「救済政策はこれからが佳境です。キリアン卿にもお分かりでしょう?アルヴィナ様だからこその政策だと。」
 「……はい。」
 「陛下との関係が改善しなければ、アルヴィナ様は……。そうなればもう止める手立てはない。」
 「……ええ。分かっています。」
 
 カーティスの執務室を見上げ、キリアンは重々しく頷いた。危ういバランスだったカーティスとアルヴィナ。
 避妊薬が発覚したことで、今は完全に拗れてしまった。エクルドが話したところで、その心を変えるのは難しく思えた。
 かつてのダンフィルを取り戻すためだけに、無理を重ねてきたカーティス。その心を支えていたアルヴィナの避妊……。

 (カーティス……)

 キリアンはただ、ため息を吐き出した。

 
 
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