上 下
31 / 62
第4章 破壊の女王

第30話 無事に帰ってきた

しおりを挟む
血まみれになりながら、カロンは軍の基地に帰還した。

「はぁ…… はぁ……、っっっ痛っ…… 戻りました……」

「遅かったじゃあーないの、お前の能力で壁飛び越えたらすぐっしょ」

「この怪我で使えませんでした。まあ、休ませてもらいます」

「ま、どんまい」

「そういえば ディザスター、プロメテウスというか 他の町を侵攻する作戦はどうなったんですか??」

「あー、そのことなんだけど 最近幻惑能力の集団が南部で、この中央都市を落とす作戦に動いてるみたいで、プランさん的にはそっちのが危険だから 先に伸ばすみたいだ」

「そもそも、ディザスターを回収しに行った時、東部も落とせていたはずなのに何故撤退したのです??」

「これもプランさんの指示だ、俺もさっぱりだがな」

「3(サード)を相手に動けないのにそれ以上に危険なやつってことですか??」

「ああ 詳しいことはわからんが、噂によれば……」







鳥の鳴き声で目が覚めた、あの後どれくらい寝たんだろう??
僕はスマホを取って、日時を確認した。

「日曜日、なんだ1日しか経ってないじゃん」

僕が独り言を言っていると、部屋のドアが開いた。

「気がついたか……」

「おはよー 陽翔くん 心配できちゃったー」

雅也と迅は僕の元へとやってきた

「お前ら来てたのか…… っっっ…… いってぇ…… 」

腕や背中のあちこちが痛み、体が起こせない。

「まだ回復し切ってないんだろ??無理するな」

僕が体を倒すと、迅が布団をかけた

「ありがと」

「うん!!それより外部の3(サード)相手にいい勝負したんだって??」

(頭に銃弾を受けた後のことは何も覚えていない、そう言われれば頭の傷も完治しているな……)

「それが全然思い出せなくてさ、僕って負けたんじゃないの??」


「いや、海都さんがロザリオを持ってきたから、勝ったはずだと思う」

(まじで何があったんだろ、まあ回収に成功したならいいか)

僕たちが話していると、紫音が部屋に入ってきた。

「あ、お兄ちゃん おかえり~ よかった無事で~」

「ああ、ただいま 紫音」

紫音は僕に栄養剤を持ってきた。

「はい どうぞ!!」

「ありがと」

僕が紫音にお礼をいうと、雅也がこっちにきた

「うう、俺だけ一人っ子……」

「そうだな、迅は確か弟か兄がいたよね??」

「うん、お兄ちゃんだね」

雅也が涙を流した

「おーれーも、おにいいいちゃんって呼ばれたいいいいい」

まさかクラス1人気者のイケメンが、そんなことで泣く姿を見て、僕と迅がドン引きした。

「「……ええ」」

紫音はハンカチを雅也に渡した。

「泣かないで~ 雅也お兄ちゃん??」

その言葉を聞いた瞬間、雅也は鼻血を出してその場に倒れた。

(紫音の笑顔は、この世の法則を変えるくらいには素晴らしいと思ってはいたが、これほどまでの破壊力があるとは……)

迅はティッシュで雅也の鼻を塞ぎ、雅也を担いで部屋を出た。

「か、帰るね~」

「う、うん ありがとう……」

迅は僕と紫音に手を振って、家を出た。

「なんで雅也さんは、鼻血を出したの??」

紫音は疑問そうに質問した。

「いや、紫音…… この世には知らないことの方が幸せな事実もあるんだよ……」

「……?? まあわかった幸せな方が私はいいから聞かない~」

(純粋な妹で、僕は嬉しいよ……)

「あ、そうだ 佳澄さんからお弁当が届いたの!!じゃーん!!」

紫音が蓋を開けると、弁当が2人前入っていた。

「へー 佳澄のやつ優しい一面もあるじゃん~ ……ん」

僕が3段弁当を開けると、2つとも3段目にトマトが敷き詰めてあった。

(あいつ、わかってて入れたな…… まじか、残すのも悪いし……)

「し、紫音ちゃ~ん 世界で1番可愛い紫音ちゃんにトマトをさずk」

紫音は僕の口にトマトを入れた

「栄養なんだからしっかり食べなさい!!」

口の中にトマトの味が広がり、咳き込みそうになった

「げほっ…… 何するんだよ紫音、いや ……食べれる 甘いな、いつもとは違う」

いつもの苦手なあの味とは違い、甘くて食べやすかった。

「佳澄さんが、お兄ちゃんにトマトも美味しいから食べてもらいたくて、朝早くに届けていただいたんだよ~」

(まじか、佳澄あんまり料理とか得意そうじゃないけど、わざわざ作ってくれたのか……)

「学校であったらお礼を言うよ」

「うん!!」
僕たちは2人でお弁当を食べすすめた。











翌日学校に行くと、佳澄がいた。

「昨日はありがと」

「そう、口にあったならよかった」

佳澄にお弁当箱を返すと、後ろから知らない女の子が話しかけてきた。

(見たことないし、年上の先輩とか?)

「うわー この子が私の好きな人に媚びを売っている泥棒はー」

「「ど、どちら様??」」

僕と佳澄は頭を抱えた

「私は2年の和香、私の仲間からの情報で陽翔くんにアピールしてる女がいると聞いてきた」

「え??佳澄そうなの??」

佳澄は腕を振って全力で否定した。

「ぜんっっ全然、違います!!勘違いはやめてください……」

(で、ですよね~)

「まあそれはいいんすけど、先輩になんか言う権利なんてあるんですか??」

「私は1(ファースト)あなたたちは0、力あるものには従うべきでしょう??」

(お前、軍の思想と同じ感じだから 海都にでも見られたら怒られるぞ……)

「なんかうざいし、佳澄 教室行こう~」

「そうだね」

僕たちが去ろうとすると、先輩は佳澄に足をひっかけて転ばせて、ポケットからナイフを取り出した。

「……ちょ、わたしが…… 何をしたって言うんですか……」

「愛しくて、たまらない 陽翔くんは、 ……はぁ、私のものぉぉぉぉ」

佳澄に向かってナイフを落とす直前、僕は地面に魔力を流し 先輩の真下の地面のみ穴を開けた。

2階から1階の廊下に落ち、僕は開いた穴に入った。

「……がっっっ な、何が…… 」

僕は持っていたナイフを捨てた。

「愛しき人を手にするのに、刃物はいらない 必要なのは『思い』と『勇気』それだけだ」

女は立ち上がり、僕に殴りかかった。

「陽翔くんはぁぁぁぁ 私の奴隷になれええええええ」

僕は右手のパンチをかわし、後ろに回り込んで首の後ろを1発叩いた

「ぐっっっ……」

女は気絶し、その場に倒れた。
僕はナイフを拾い、佳澄のところへ行った。

佳澄は泣いていて、体育座りの状態でうずくまっていた

「大丈夫??」

「……っ…… 怖かった、ありがとう……」

佳澄の涙が止まらない、僕はそっと頭を撫でた。

「……やめてよ、 優しくされるの、慣れてないから……」

「そっか、でも無事で本当によかった」

僕は佳澄の手を取り、生徒会室へと向かった。








しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

音のしない部屋〜怪談・不思議系短編集

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:29,088pt お気に入り:9,139

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:30,394pt お気に入り:878

剣神と魔神の息子

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:1,811

消えた公爵令嬢~冷めた目に映る世界

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,124pt お気に入り:48

劣等冒険者の成り上がり無双~現代アイテムで世界を極める~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:211

あなたの愛なんて信じない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:126,781pt お気に入り:3,919

処理中です...